第三頁 物語の火蓋は切られたその3
本日5話更新予定です。これは3話目です。
「取り返すよ!」
そう言うと僕は、右手のひらを前に突き出し、その肘あたりを内から左手で支えるポーズをとった。この右手から何かが出てきそうな構え、俗に言う魔法を撃つ構えだ。
「その構え、魔法でも撃つつもりか? 」
「ああ、盛大にかますつもりさ」
あえて属性は指定しなかった。なぜって? そんなことをすれば、僕が魔法を撃てないことがバレてしまうからだ。
僕が今、ブラフを貼っていることがばれてしまうからだ。
これで向こうが引けば儲けものだが、どうだろうか。
「確かにその制服、第一イルミナ魔法学校の制服だな。……いいね、興味しかない、撃ってこいよ」
ダメだ、ブラフなんて効きそうにない。こうなったら……。
「ところで何の魔法を使うんだ? まず、なんの付与を使うんだ? お前が得意な魔法は、なんだ?」
余裕綽々といった表情、僕の魔法なんて屁でもないといった感じで、煽るようにして僕に質問を投げかけてくる。
「あーそれね、大分迷ったんだけど……お前程度にはそんなの! 必要ない!」
僕はそう言い放つと、右手から何も付与をしていない魔力の塊を赤目に向かって放った。通称魔力弾、これなら魔法が使えない僕でも使える戦闘用の技だ。
僕ら人間を含む生物には皆、共通して必ず体内に魔力が流れている。その量には個人差があるものの、魔力は生きるための活動エネルギーとして欠かせないため、多かれ少なかれ必ずあるものだ。
魔力弾は、その魔力をそのまま、体の内から外へと飛ばすものである。付与や詠唱、魔法陣等の複雑な行程を必要としないため、ただ発射するだけの魔力弾だったらほとんどの人が使える。
僕も、魔法の扱いが下手なだけで魔力は人並みにある方だから魔力弾は撃てるのだ。ただ、速さや大きさ、そしてそれらを掛け合わせて生まれる威力も人並みで、連発できるまでの間も人並みだから、決定打にはならないというのが、この局面でのまずいところである。
「ただの魔力弾か……はは」
放たれた弾は薄く青い輝きを放ちながら、よく言えば螺旋状に、悪く言えば軸がブレブレな状態でガタガタと空中を突き進んでいき、赤目の胸元へと飛んでいく。
コントロールが上手くいっていないが、パラメラにはぶつからないはずだ。それにこいつは、パラメラを食うと言っていた。自ら進んで食料を床に叩きつけるやつがいないように、自ら魔力弾に食料をぶつけにいくやつもいないだろう。
……いける!
「だが!」
瞬間、風向きが変わった。いや、魔力弾の向きが変わったとかではない。戦闘の流れが変わった。それも、嫌な方へと。
赤目は手に持つナイフを腰下から斜め上へと斬り上げ始めた。タイミングから見てその目標地点は、間違いなく魔力弾がぶつかる瞬間、魔力弾そのものだ。
「この程度の魔力弾、どうってことない!」
ナイフは魔力弾の下円部分に衝突した。すると魔力弾は、ナイフの軌道に沿うようにして、ナイフの刃の上をズルズルと、左から右へと流れるようにして斜め上の方向へと弾き飛ばされていく。
「くっ!!」
飛ばされた弾は近くに立っていた木にぶつかり、そのまま破裂して空気の流れへと同化した。
「大口を叩く割にはヘナチョコな魔力弾じゃないか。いいか? 魔力弾っていうのは、こう撃つんだよ!」
赤目はナイフを腰にしまい、僕の方へと向かって右手のひらを突き出すと、暗く豪快な目つきで僕を睨んできた。そしてその周囲には、段々と薄緑色の精霊たち、風の精霊と呼ばれている者たちが集まっていく。
まさかこいつ!
「付与、風!」
赤目が叫ぶと、赤目の右手の前に深緑色をした模様が現れた。円の中に十字の星型が映し出された魔法陣と呼ばれる模様は、次第に腕と重なるようにして二つ三つと増えていく。そして魔法陣はやがて小さくなっていき、腕と重なる瞬間、魔法陣は消え去り、赤目の右腕が一瞬だけ緑色に光り輝いた。
人と魔法を通じた戦闘をしたことない僕でもわかる、この状況は非常にまずい。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
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