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物浮島

物浮島(ものうきじま)


挿絵(By みてみん)

↑同国の国旗



 雲の国で、鬼の中でも「雷さま」と呼ばれる鬼たちが住む国である。 

 「雷さま」と呼ばれる種族は生得的に雲を加工する妖術を持つが、基本的には自身が騎乗し、移動するというように小規模なものである。だが、この国を建国したとする「雷公」さまは大きな雲も自在に操ることができたため、その力を懼れた人間たちによって迫害を受けた。そこで瑞雲を捕まえ、その上に国を作ったのが始まりとされる。


 国土は雲そのものであるため、常に移動しており、意図的な移動も可能であるが、上下の移動はほとんどできない。また、国家の場所が固定されていないため、場合によっては他国の領空を侵犯することになるが、この国に限っては限定的に領空侵犯が認められている。(1)

 国土は和太鼓6000個分(2)に相当し、標高1200m級の山である「來山(らいざん)」がある以外はほぼ平坦な土地となっている。


 現在は「タケミカヅチ」と「ミチザネ」と呼ばれる存在が国を統治しており、前者が外交、後者が内政を主に担当していると思われるが、公的な場に姿を見せたことは無く、国民も姿を見たことがないため、詳細は不明である。

 しかし、近年の研究により、外交記録などには少なくとも、1200年以上前からこの名前が見られることが判明しており、歴史学者の間では「タケミカヅチ」と「ミチザネ」は固有名詞であり、1200年間、同一存在が同国を統治しているとする説と、「タケミカヅチ」と「ミチザネ」は役職名であり、代々、その名前を襲名している別の存在が統治しているとする説があるが、いまだに定説をみない。

 だが、とあるネットユーザーにより、動画共有プラットフォームに合成音声歌唱動画を投稿している人気投稿者「閃光P」(3)と「タケミカヅチ」の声質や口癖、筆跡が酷似していることが明らかにされており、ネット上では同一存在ではないかと噂されている。このことから比較的若年であると考えられ、襲名説が濃厚となった。


挿絵(By みてみん)

↑「閃光P」のユーザーアイコン



 和太鼓を利用し、雨を意図的に降らせることができる技術を持っており、この技術を持つ国は物浮島が唯一である(4)。そのため、農業国や乾燥地帯に位置する国などから国家単位で協力を求められることも多く、輸出品目としては「雨」が最大となっており、次いで酒類となっている。

 また、豊富な水源を利用しての稲作農業が盛んであり、それに伴って造酒業も盛んである。雨水を利用した焼酎「疾風迅雷」は「水のように」飲みやすいと人気である。


 この国に訪れる手段は2通りあり、1つはヘリコプター便を利用する方法である。このヘリコプター便は主要各国から発着している直通便であり、多くは朝夕2回の定期便となっている。しかし、注意すべきは常に国家間の航行距離が変動するため、距離による料金体系となっており、出発地によっては運賃が高額となる点である。ただ、記録上の運賃の最高額は片道32万円(サーチャージ別)であるため、人によっては問題とならないかもしれない。また、出発地によっては20時間以上の移動となることも注意すべきである。

 このヘリコプター便はこの国の航空会社である「鳥船航空」が独占運営(5)しているため、臨時便などによる増発がない限り、定期便の座席が無くなってしまうとヘリコプター便は利用できなくなる。そのため次の定期便を待つか、後述の2つ目の手段をとるしかない。

 2つ目の手段は物浮島が目視できる距離まで接近した際に野外でつげの櫛の歯に火を点けて30秒以上掲げるという方法である。この方法の場合、物浮島が自身の国の付近を通過するまで待機する必要があるほか、帰路については保証されないが、物浮島の検疫官が小さな雲で迎えに来てくれるため、移動が便利であり、運賃は検疫官へのお礼(6)のみと安価である。


 前述のように国家が常に移動し、首長の詳細や国土の正確な広さが不明であったりと他国から見れば開示された情報が少なく、やや排他的、秘密主義的に感じるが、鬼という種族全体から見れば、比較的オープンな姿勢と言える。

 また、物浮島の国民は比較的穏やかであり、「積極的に」武力は用いない。しかし、「積極的に」であり、自身から攻撃を仕掛けないが、まったく無抵抗という訳ではない。特に自身の立場が軽んじられた時と平穏が乱された時には容赦なく攻撃をする傾向にある。




註釈

 (1)依頼された場合を除き、意図的に同一座標上に5日以上留まらないこと。および請求があった場合、保持する武力の開示を行うことが条件。

 (2)現在まで公的な記録がなく、私的にも面積が計測されたことがない。この「和太鼓6000個分」というのは現地の伝承によるもの。

 (3)超有名Pの一人であり、曲の傾向はエレキギターと和太鼓を中心とした激しい和ロックと悲嘆的なバラードが多い。代表曲は『雷の日にサイフ落とした 』(256万再生)、『落雷保険』(ダブルミリオン達成)である。詳細は個別記事(https://ncode.syosetu.com/n0632jg/8)に譲る。

 (4)国家単位で雨を降らせることが出来るのはこの国が唯一。雨のコントロールは自在であるが、雷については制御しない方針である。これは制御した場合、国土および周辺環境に重大な負担がかかるためであり、雷の発生を抑える技術そのものは保有している。

 (5)ヘリコプター便は物浮島の現在位置を正確に感知する必要があるが、国家の正確な位置情報は国家機密情報であるため、他国籍企業の参入が許可されていない。

 (6)いわゆる、賄賂や袖の下と呼ばれるものである。だが、この国では正当な権利として黙認されている。これは物品でも可能であり、酒類などが喜ばれる。お礼は支払わなくともよいが、相手が鬼であるということを考えれば、大人しく支払った方が賢明であろう。

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