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神聖エウロペ王国

神聖エウロペ王国(伊:Regno della Santa Europa)

 芸術家であれば種族・性別を問わず受け入れる国であり、多くの芸術家を輩出する。

 人間が住んでいる国の中では世界でも小さい部類であり、国内を一周するのにかかる時間は14時間である。首都の「リーナ」には王族の邸宅である「クコティコ城」がある。

 言語は「ガリリア語」(1)が公用語であるが、首都周辺では民族的に同一であるサラサル公国とカリス王国の公用語である「ガリボー語」(2)でも意思の疎通は可能である。

 最大輸出品目は芸術品であり、技術や人の輸出も行っている。国全体の文化水準が非常に高く、特に絵画や彫刻といった美術分野に強い。国際的な大会では上位を総なめにするため、近年、神聖エウロペ国民は審査員としての参加、あるいはエキシビション的な参加しか認められなくなった。絵画や彫刻、文芸に対して、やや音楽分野は劣るとされるが、国内基準における相対的評価であり、世界的に見れば最高峰の評価を受けている。

  芸術家が多数を占める土地柄、画材商や調律師、修理業者といった芸術家を支えるものたちも多く、このような層の技術レベルも高い。そのため、他国から美術品の修復のために訪れる者も多い。


 この国は階級制度があり、上から順に次のような構成となっている。


  「レガリア」=王族

  「ノヴィータ」=上級芸術家

  「アルティスタ」」=芸術家

  「クリティコ」=評論家

  「インジェネーレ」=技士や商人

  「サーヴィタ」=芸術(創作)活動をしない者や才能の無い者


 特にサーヴィタは下級階級として蔑視されており、芸術活動とは無関係な肉体労働や行政などをさせている。建前上、これらの階級は生得的に固定されたものではないが、実際は階級間の移動は困難である。

 しかし、近年はサーヴィタ階級においても「趣味」で芸術(創作)活動を行う者が増加しており、クリティコ階級の社会などでは「芸術家とみなす基準」についての議論が活発となっている。


 この国では非常に詳細な点に至るまで知的財産関係法規が整備されており、最高罰として死刑が執行されるなど罰則が厳しいが、成人とされる15歳以下の者が違反をした場合には初回に限り、多少の手心が加えられる。知的財産権違反を侵した犯罪者専用の刑務所などがあり、ここでは刑務作業として顔料や染料の作成、キャンバスの木枠づくりなどを行っている。

 権利を放棄しているものやフリー素材として発表されたものなどを除き、全ての著作物(3)は発表と同時あるいは発表前に複写や作品の特徴的な部分がすべて写っている写真と書類を文化庁に届け出る必要がある。だが、これは検閲などを行うためではなく、著作権の一括管理のためである。

 一方で全く同一と認められる著作物に関しては文化庁から著作者(後から届け出た方)に警告(4)を出している。

 著作物の保護期間は200年であり、延長も可能である。しかし、著作物の保護期間であっても正当な手続きを踏んで著作者に許諾を得れば、利用可能である。エウロペ王国ではこの手続きも簡略化され、利用料もかからない。(特別に契約を結んだ場合を除く。)その代わり、特別税として15歳以上の国民全員から一律で徴収している。反対に自身の作品を第三者に利用されたくない場合は「二次利用拒否届」を出す必要がある。二次利用に関して、公的なガイドラインが整備され、相談窓口が設置されており、原著作物者も二次利用者も安心できるシステムが構築されている。


 この国にある「エウロペ王立美術館」は国内外の美術品を収蔵する世界最大の美術館であり、現在時点で収蔵点数は52万点を誇る。その敷地面積は国土の1/14を占め、そのうちの⅔が建物部分である。3階建ての荘厳で美しい本館と旧貴族の邸宅をそのまま移築し、利用している「マレアッツオ館」がある。

 「美術は全ての生き物に分けあたえられるべき、恵みの雨である。」

との理念から美術館への入館は無料である。ただ、展示されていない収蔵品を閲覧する場合は有料(5)である。

 この美術館は建築に高名な魔法使いが関わっているため、収蔵庫の温度管理は魔法具によって自動で管理できるようになっており、収蔵庫の広さも見かけよりも広い。また、建物そのものにかけられた魔法により、有事の際も収蔵品が損なわれることがない。さらに屋外にある展示物にも保護魔法がかけられており、いつでも美しい姿を保っている。


 美術館に隣接する王立図書館には国王が国外から蒐集した、美術や音楽に関する書籍が所蔵されている。また、国内で出版・発表された本は必ず王立図書館に献上しなければならないため、国内のすべての本が存在するといっていい。この建物にも保護魔法がかけられており、特に強力な防火魔法がかけられている。 


 美術館と図書館の敷地内は飛行魔法と攻撃魔法が制限されている。また、獣人(6)の入館は可能であるが、毛が落ちないように専用の帽子とコートを着る必要がある。


 この国の人々は芸術品を「魔法で生み出すのは面白みがない」としているため、創作活動に魔術や妖術は使用しない。また、「手作業で生み出された創作物は手作業によってのみ修復できる」との理念から修復作業にも魔法などは使用しない。

 その一方で生み出された創作物に対しては惜しみなく魔法を使用している。近年では魔法による偶然を利用した美術技法などが編み出されているが、国内では賛否が分かれている。




註釈

 (1) 「ガリボー語」から派生した言語。名詞に男女の性別があり、格変化する。

 (2)名詞と動詞に男女の性別と獣の区別があり、それによって格変化も起こる。一説には「美しい」という意味の単語が数百種類あるとされる。

 (3) 依頼されて製作された商業用ポスターや個人の肖像画も含む。

 (4) あくまで「警告」であり、注意を促すものである。そのため、警告を無視してもそれ自体に罰則はない。ただ、後で著作物侵害の罪で罰則を受ける可能性が高くなるだけである。

 (5)収蔵品の大きさや古さ、点数などにより値段は変わる。

 (6)兎人、狗人、猫人など(詳細な説明は各項目に譲る)といった、人間(魔法使い)と動物の血を引く人々の総称。動物と人間のハーフを全般的にこのように呼び、「獣人」という種族がいるわけではない。平たく言うと「外国人」的な意味合いである。どのような見た目で誕生するかは完全にランダムであるが、世代を経るごとに人間に近くなる傾向がある。獣人かどうかの判断基準は外見的に獣の要素が見られるかどうかであることが多い。クォーターなど獣の血が薄まり、外見的な獣要素が少なくなると「半獣人」と呼ばれる場合もあるが、はっきりとした基準はない。

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