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サラサル公国

サラサル公国(仏:Principauté de Salazar)



<概要>

 神聖エウロペ王国の隣に位置する公国であり、人間が多く住む永世中立国である。カリス王国の中に存在する国であるため、国土は比較的狭い。

 世界的に有名な美食の国であり、最高峰の技術を有する料理人が多く、世界初の狗人(1)料理人(2)もここから誕生した。また、自国の料理・技術体系である「沙食」は無形文化遺産にも登録されている。

 また、製菓技術も最高水準を誇り、世界有数のパティシエやパティシエールを輩出しており、世界パティシエグランプリでサラサル代表チームは殿堂入りを果たしている。

 公用語はガリボー語だが、この国ではやや古めかしく、硬い表現を多用することが特徴である。

 この国の国民は遺伝子的に味覚と嗅覚が鋭敏であり、こだわりが強く、調和を好み、妥協しない国民性であり、チャレンジ精神と好奇心が旺盛な傾向がある。



<階級制度>

 この国は階級制度があり、次のような構成となっている。


「ファミール・デュカル」公爵家

「クラルジェ」聖職者

「アリストカルテェ」貴族 

   ー「アリストカルテェ・タディショネル」伝統的貴族

   ー「アリストカルテェ・オブレス」新興貴族


「ミリョーネア」長者(富裕層)

「シトゥイアン」市民


 これらの階級は生得的なものではなく、比較的流動性があり、神聖エウロペ王国などと比較して緩やかなものである。そのため、法的に職業選択や結婚は自由である。ただし、公爵家は君主としての責務を負い、国民を統治する義務があるため、職業選択や結婚に関して制限が設けられている。

 人口に於ける階級の比率としては、市民層が大多数を占め、次いで伝統的貴族と長者層が占めている。

 貴族と富裕層の違いは簡単に言うと爵位の有無であり、爵位は国に絶大な利益を残したもの、調理技術や道具に革新を与えたものなどに送られ、叙勲されたものは貴族となる。また、爵位には家(一族)に対して授けられるものもあり、爵位を持った家を貴族家という。

 貴族のうち、伝統貴族(家)は200年以上の歴史をもち、国内における影響力の大きいものを指す。新興貴族は伝統貴族と婚姻関係を持ち、伝統的貴族の財産(爵位も含む)を受け継いだ長者や伝統的貴族の分家を指す。だが、実際にはその差は曖昧であり、明確な基準はない。

 比較的、緩やかな階級制度ではあるが、所属する社会階級に見合った料理スキルや味覚レベル、審美眼が要求され、これらは生まれた時の環境や資金力に左右されるため、生得的な階級社会となっており、職業選択や結婚の際に一定の制限となっている。

 また、サラサルでは「国民すべてが料理人であり、料理人は国民である」という暗黙の前提が存在するため、神聖エウロペ王国のように「芸術家ではない」という基準に基づく階級は存在しない。しかし、逆説的には「料理人ではないものは国民ではない」ということになり、社会的には「料理が出来ない者はヒトではない」(3)と見なされている。

 ヒトではないと見なされた者は「ルアベティス」と呼ばれ、「人肉刑」(後述)となるケースが多く、実質的な国外追放となる。「人肉刑」を免れ、国内に留まった者たちの社会的地位は著しく低く、調理場や食材に関わらない職業に就くことしかできず、一般的なコミュニティからは排除されることが多い。国内には「ルアベティス」が集まる村がいくつか存在するが、そこは実質的に食材・食品廃棄場となっている。(4)

 近世まで、「ルアベティス」たちは貴族家などにおいて、皿洗いなどの下働きをすることが一般的であったが、近代以降、調理人が自ら調理場の衛生管理を行うこと、あるいは自身の調理器具を他人に触らせないことが美徳とされる風潮が広まり、彼らは調理場から完全に追い出された。



<公衆衛生と文化>

 この国では伝統的に、調理をする人物の立ち入るスペースは清潔を維持するべきであり、国民すべてが調理人であるサラサルでは国全体が巨大な調理スペースであるという考え方が存在する。

 この伝統的な考えのもと、サラサルでは非常に厳しい衛生基準法が定められ、これを監視・指導するのが環境省直轄の衛生管理局(旧名称は公立衛生維持部)である。衛生管理局の職員は国内を毎日巡回・偵察監視することで、新生児を外に寝かせても病気にならないとまで言われる、サラサルの清潔を保っている。

 この厳しい衛生基準により、国民全体の衛生観念(衛生基準)が非常に高い水準に達しており、衛生局が行った意識調査では5~12歳のグループにおいても、高い割合で外出後と食事前には必ず手を洗う、公共空間にゴミを残さないといった回答をした。

 このような高い衛生観念により、同国における感染症の発生率は低く抑えられておりパンデミック発生時においても、感染者数は少ない傾向にある。また、病院内での二次感染やバイオハザードの発生はほぼゼロである。(去年の時点)

 一方、国民全体で未知の病原体に対する抵抗力が低く、パンデミック初期の感染者数や死亡者数は高い傾向にあり、集団免疫の獲得も他国に比べて遅い。

 また、近年では「潔癖症」の傾向にある若者が増加しており、衛生管理局や汚物処理施設などへの就職率が激減している。そのため、将来的にこのような衛生設備の維持・運営が困難になると予測されており、人材確保が課題とされている。

 また、これらの施設や制度の維持管理のための財源の大部分が貴族からの寄付に依存しているため、安定的な財源確保も問題となっている。(後述)



<冠婚葬祭>

 近隣諸国は伝統的に土葬による埋葬を行っているが、サラサルでは伝統的に火葬である。

これは土葬された遺体からの感染症や腐敗による害虫の発生などを抑える目的で行われてきた手法であるが、近年では国土が狭く、墓地の確保ができないといった理由からも火葬が行われている。

 結婚に際しては、結婚あるいは結納の前後に両家総出での盛大な食事会が行われることが一般的である。これは階級の差異に関わらない一般的な習慣であり、規模の大小はあれど、どの階級層でもほぼ必ず行われる。

 この食事会は参加者が手料理を持ち寄る形式であることが一般的であり、この会を通して親睦を深めるほか、相手の家(一族)の料理水準を確認するという意味合いもある。



<社会体制>

 この国は公爵家による制限君主制をとり、国家元首は世襲制で務め、「大公」と呼ばれる。

 国家理念として伝統的に「料理はすべての種族を統一する」を掲げており、「幸いなるサラサルよ、汝は料理せよ」との考えから、いかなる武力行使も行わない永世中立国を宣言している。

 現在の王朝はアムル家による王朝であり、当代で23代目である。この家も多くの優秀な料理人とパティシエを輩出しており、20代大公シャリル・ファミル・アムルドゥ・サラサル(アムル20世)は世界的にも有名な料理人であり、その妃である、ガレット王女は世界有数のパティシエールである。

 当代の大公は歴代中で最も崇敬を集めている大公とされ、料理による平等を宣言し、どのような料理にも優劣はなく、良い点は取り入れるべしとの考えを持つ。この考えは国民に広く支持されており、安定した政治基盤のひとつとなっている。


 この国では税金などは周辺国と比較して安いが、その理由は公的機関(公共機関)などの運営に関わる費用の大部分が税金ではなく、貴族層や公爵家による私的な寄付によって賄われているためである。

 伝統的に貴族層や公爵家には美徳、矜持として「持てる者は分け与えよ」という「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)」の考え方が根付いており、その考えに基づいて積極的に公共的な施設への寄付や運営、慈善事業などが多く行われており、衛生設備を含む生活インフラの新設・維持管理なども、この寄付金によって行われている

 この寄付は習慣的なものであり、法的な強制力はないが、事実上、貴族層に課せられる税金となっている。

 しかし、近年では高い衛生基準の遵守や普及率ほぼ100%を誇る上下水道の維持管理などに莫大な資金を必要とすることが問題となっており、寄付に依存しない運営が課題となっている。


 他国人がこの国に居住するためには厳しい審査をクリアする必要があり、一定以上の年収と一定水準以上の料理(製菓)スキルあるいは舌(味覚)を持っていることが条件である。

 管理局が書類審査と実技審査を行い、合格者には居住者相当資格を授与し、居住権が得られるが、これは5年毎に更新が必要である。(簡単な実技審査)

 永住権取得のためには年2回、王立料理アカデミーで開催される審査会で一定以上の評価を得なければならない。

 国土が狭く、他国人に対して割ける土地的リソースが少ないという理由から、他国人に対しては2.3倍の住民税と人頭税を課税している。

また、公衆衛生上の管理コストが高いという理由で獣人に対して、毎年1人あたり一律、23000円(日本円換算)を「特別衛生管理料」として徴収している。(5)



<入国審査>

 サラサルでは入国審査が非常に厳しい事で有名であり、ワクチン接種履歴の提出と入国前の荷物消毒および手指消毒が必須となっている。また、他国と比較し、食材・食品の持ち込み制限品数が多く、事前申告が必要なものも多いため、注意が必要である。さらに、獣人の場合、滞在中のしっぽ・耳カバーの着用が求められ、携帯していない場合は入国を制限されるケースもあるため、注意が必要である。

 一方で料理修行のための入国・滞在者を積極的に受け入れており、食材・食品の持ち込み制限の緩和、調理器具(主に刃物)の持ち込み制限緩和などを行っている。

 また毎年、公的に料理人留学生を受け入れており、奨学金による資金援助や滞在中の免税などを行っている。



<「食に対する冒涜」という罪>

 この国では食材や料理を無駄にする、飲食不可な調理をする、その他著しく食材や料理の美を損なう行為は「食に対する冒涜」罪(通称・食冒罪(しょくぼうざい))にあたり、厳しく罰せられる。つまり、食材や料理を無駄にする行為は罪に問われるのである。

 食冒罪は刑事罰であり、最大で食用人肉として他国に移送される「人肉刑」が適用される。これは他国人にも適用されるが、(人間年齢で)5歳以下には適用されない。

 また、教育機関と研究機関における調理の場合、日本円で50万円の罰金刑が適用されるのみである。ただし、近年では特に研究機関への「食に対する冒涜」罪判決が下された記録はなく、事実上、黙認されている状態である。

 食冒罪において「人肉刑」が適用されることに対し、国際社会から批判が寄せられることもあるが、公室は「食を楽しめない者は家畜と同様であり、家畜を家畜として適切に扱っているまでである。」と回答しており、少なくとも当代大公が統治している間はこの方針を変えないとの姿勢を示している。



註釈

 (1)人間と犬のハーフを指すが、生物学的には狼である。全身が毛皮で覆われており、狼のような耳としっぽを持つことが特徴。人間の3500倍の高い嗅覚力を誇り、嗅覚による識別力はイヌ科と同等である。また、聴覚も発達しており、5キロ先の人間や狗人の声を聞き分けられるほか、生肉を安全に消化する酵素を持つ。種族として忠誠心と社交性が高いが、楽天的な性格が多い傾向にある。

 (2)ここでは調理技術を有する者全般を指す。

 (3)9代目大公にあたる「傲慢公」が言ったとされる言葉。この一節は余りにも有名であるが、全文は「料理が出来ない者はヒトではない。それ即ち、野蛮にして、下品な下等生物である。」なかなかに侮蔑的・差別的発言であるが、現在も公宮には根底にこのような考えが残っており、古い世代にはこの考えを持った人も多い。

 (4)各家庭やレストランなどから出る食材・食品の廃棄物が捨てられる。主に失敗したものや賞味期限切れの料理であるが、国全体の料理水準が高いことから、これら廃棄物であっても、充分に賞味に耐えうるものである。そのため、「ルアベティス」側も自ら調理するより、かえって味の良いものが食べられると肯定的である。ただ、そのような姿勢がより一層、他の一般民との距離を生んでいる原因となっている。

 (5)種族によっては換毛期もあることから、獣人は人間よりも抜け毛が多い。そのため、人間だけが存在する国と比較し、公共空間が汚れやすい。そこで「特別衛生管理料」を徴収し、それを公衆衛生費として、道路掃除の費用などに使用している。

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