表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/26

第九話 村雨パターソン

 あの後、しばしの間ガールズトークを楽しんだのち、お見送りの申し出を丁重にお断りしてから雑居ビルをあとにした。外に出ると太陽が西の空に沈みかけていた。

 昨日の今日でまたオトンに心配をかけたくなかったので気がくが、なにぶん体がついてこない。けたわけでもないのにあがった息にもどかしさを覚える。本調子とはいえない体で無理をして万が一があってはそれこそ事なので、渋々と近くのベンチに腰をおろした。


『力っていうのはね──』


 呼吸を整えていると白上さんの声がよみがえってくる。

 彼女がいうには、まず最初にそれが体の中のどこから湧き上がってくるのかを知る必要がある、とのことだった。で、それを見つけるための一番手っ取りばやい方法が、意識を呼吸のリズムなり心臓の鼓動こどうなりに同調させる、なんだそう。さいわい今ならそのどちらもハッキリとしている。


『集中させると──』


 大きく激しかった拍動はくどうが少しずつゆっくりになっていく。すると──にわかに顔をあげた。

 力を感じたのだ。体の外に!

 驚いてそちらの方を見ると、そこには下卑げびた笑いを浮かべる男が立っていた。そいつはニタニタと乱杭歯らんぐいばをむき出しながらこちらに近づいてきた。ウチはその場を離れようとしたがあっさりと道をふさがれてしまった。男は腕を伸ばしてき──


「ちょっと待ったー!」


 女性の声がそれをさえぎった。見るとそこには、燃えるような真っ赤な長い髪にMA-1を着た面識のない女性が立っていた。その人は切れ長の目をさらに細め男をにらんだ。ふたりの視線がぶつかり、それを合図に互いが一歩を踏み出すと、またあの感覚に襲われる。倉庫で白上さんと修道服の女性が対峙たいじしたときに感じたあれだ。

 それを皮切りに両者が激突する。一瞬にして間合いを詰めた女のくり出した拳が男の体をとらえる。体格差をものともしない強烈な一撃に男が後退あとじさる。だが苦悶くもんに顔をゆがませたのは女の方だった。


『能力者が自身の固有の能力を人目につく場所で使用することは通常ありえ──』


 ──あった。

 男の全身を薄い透明な膜が覆っていた。それに気づいた女がえた。

 それまでだった。

 彼女のはなった火球が男の全身を炎で包み込んだ。男はそれでも倒れなかったが、女はそれを放置したままこちらに駆け寄ってきた。


「こっちへ!」


 あまりの急展開に困惑したが、人の集まる気配を感じたウチは大人しくその言葉に従った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ