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第八話 白上スノウストーム4

 大五郎さんを見送りながら彼の話を反芻はんすうする。


「1万人に1人といわれましても・・・」


 能力者というものが希少かつ秘密裏ひみつりなことはわかった。あとそれが理由で誘拐されたのであろうことも。


『このことをお父さんに話すつもりかい?』


 別れぎわの彼の言葉が脳裏をよぎる。

 そうと聞いてきたということは、つまりはそういうことなのだろう。

 この力は自分のみならず周りをも巻き込みかねない危険な授かり物。うまく付き合うことは考えず、身を遠ざけるが賢明。

 それが彼のいわんとしたことならウチに選択の余地はない。

 その姿が見えなくなってからもまだやきもきとしていると、急に後ろから声がかかった。


「さっきの方はどちらさま?」


 ビックリして振り向くと、そこには黒髪の白上さんが立っていた。



 * * * * *



 あの後、立ち話もなんなのでと連れられたのが雑居ざっきょビルの一室。

 中に入るとセーラーワンピに白のカーディガンを羽織った小柄な女の子が、ソファーに寝そべり足をパタパタとさせながら本を読んでいた。その子はこちらに気がつくと、デッサンの狂ったネコのようなぬいぐるみを抱きかかえたまま部屋のすみへと逃げて行った。

 白上さんいわく、あれは極度の人見知りなだけで悪気はないとのことだったので、なるべく刺激しないよう最大限に距離をとってから腰をおろした。

 なんてことをしていたら奥からもうひとり、スレンダーで小顔の女性がトレイを持ってやってきた。


「ありがとう、ルイ」


 ルイと呼ばれたモデル体型の女性は、3人の前にそれぞれケーキと飲み物を置いていくと、優雅な仕草で部屋を後にした。去り際にこちらに流し目を送りながら。


「綺麗な方ですね」


 ポロリとこぼした感想になぜか白上さんがドヤる。それを真似まねして人見知りの子もドヤりはじめる。

 もっともそれも、ルイさんの消えていった方から盛大に物が割れる音と、情けないカラスのような叫びが聞こえてくるまでだったが。


「え、え~っと・・・」


 そこはかとない気まずさをまぎらわせようと勝手にテレビのチャンネルを回すと、ちょうど昨日の倉庫でのことがニュースで報じられていた。

 それでここにきた目的を思い出す。どうやらそれは白上さんも同じだったらしく、彼女は小さくせき払いをすると、この力とそれを取り巻く状況について語り始めた。



 * * * * *



 いったん白上さんのしてくれた話を整理してみる。

 昨日のような暴走を起こさないように、力の制御の方法だけは覚えたほうがいいこと。

 白上さんや誘拐犯たちはみんなウチと同じ能力者で、互いに異なる派閥に属していること。

 警察内部にも能力者を専門に扱う極秘の部署が存在すること。

 能力者たちは、他の能力者を勧誘や排除していること。

 白上さんたちは、平和的な手段による能力者と非能力者の共生を目指し活動していること。

 これらが大体だった。

 ピンクのYogiboヨギボーに顔を埋めジタバタしている人見知りの子を尻目しりめに、これからの身の振り方を考える。

 ちなみにこの子はVtuberのArchAngel Aquaちゃんなのだそうな。たしかに髪色をピンク地に水色のメッシュにすればまんまだった。


Aあーちゃん」


 名前を呼ぶとおびえた小動物のようにこちらを見上げてくる。ケーキを半分あげたことで少しは距離がちぢまったかと思ったが、どうやらそれは本当に少しだけだったらしい。参考までに彼女がここにいる理由を聞いてみたかったのだが、いかんせん好感度が足らなかったっぽい。あきらめて前に向き直ると、白上さんが苦笑していた。


「その子は、というかここにいる人はみんな訳アリでね」


 こちらの心中を察してかそういってくる。


「だからっていうわけじゃないんだけど、力の扱い方を覚えるまでは白上たちと一緒に・・・ってダメかな?」


 この時の彼女の上目づかいの可愛さといったらまあ。コンチキショーめっ!

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