第六話 白上スノウストーム2
炎に包まれる自分の姿があった。それを遠巻きに見守ることしかできないでいる白い髪の女性。物の焼けるにおい。天井の崩落する音。シャッターの吹き飛ばされた入口。そこに立っていたのは──
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──────最初に気がついたのは後頭部に当たる柔らかい感触。次に不安そうにこちらをのぞき込む知らない顔の女性。
そこでようやく自分がその女性に膝枕されているのだとわかった。あわてて体を起こそうとしたがうまく力が入らなかった。仕方がないので大人しくしていると、それに満足したのか彼女の表情が少しだけやわらいだ。
「力を使ったばっかりだからね。無理しちゃだめだよ」
まるで子どもにいい聞かせるように囁きながら頭をなでてくる。
「・・・力?」
「そう、覚えてない?」
いわれて記憶を掘り起こしてみるが、出てきたのは断片的な倉庫の燃える様子だけだったので小さく首を振った。
「そっか」
それだけいうと、彼女はポケットから10秒でチャージできそうな銀色のパウチを取り出しそれを飲ませてくれた。すると5分もしないうちにひとりで立てるくらいにまで回復した。
と、ここで疑問が浮かんでくる。そもこの黒髪の女性は何者かしらんと。
「ちょいと失礼」
それはすぐに明らかとなった。
そういって彼女はウチのことを軽々と抱きかかえると、ものすごいスピードで夜の街を駆け抜けていった。狐の耳を生やしながら。