第五話 白上スノウストーム1
奥の暗がりからあらわれたのは──白上スノウストームだった。
月の光に輝く長く白い髪に獣を模した耳と尾。まるで画面の中から飛び出してきたみたいなその姿に頭がバグりそうになる。だがそれを気に留める者は自分の他には誰もおらず、シスターは平然と会話をしていた。
「その娘さんを返してもらおうか」
「返せといわれましても」
ほおに指をあてしなを作るシスターの態度に、白髪の闖入者の声音が変わった。
「二度はいわんぞ」
「あら、三度もいってくださらなくっても結構ですのよ」
その一言で空気が変わった。
それは比喩などではなく本当にだった。吐く息の白さがそれを物語っていた。
直後、誰かに腕を引っ張られる。コンテナの陰に回ったところでそれが誘拐犯のひとり、マゼンタの髪をツインテールにした少女だとわかった。
「危ないからここに隠れてて」
なにが、とは聞かなかった。もちろん彼女のいう危ないが具体的になにを指すのかをわかっていたわけではない。でもそれを質問することがひどく間の抜けたものであろうことだけは理解できた。なのでウチは黙って彼女の手を強く握り返した。
するとそこからなにかが奔流となってウチの体の中に流れ込んできて──