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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第二章

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お狐様、東京第8ダンジョンに潜る

 長い、とても長い階段を降りてホテルの1階ロビーに降りると、そこには海の匂いに混ざって濃厚な血の匂いが残されていた。どうやら、この霧を発生させた者は相当人間に敵対的なようだが……問題は、先程の敵が1体であるとは限らないということだ。

 現状でまともに戦えるのがイナリとヒカルだけである以上、この2人で今の状況をどうにかしなければならない。


「イナリ、提案だ」

「奇遇じゃな、儂もじゃ」

「アタシが町中の魚野郎どもを片っ端からぶっ潰す」

「儂はこの原因を叩こう」


 そう、それが無難だ。今はヒカルは防具の力でこの霧の影響を防いでいるが、発生源に近づけばどうなるか分からない。もっと濃い霧、あるいはもっと強力な眠りの力を持っているかもしれないのだから。となれば、最初から効いていなかったし霧をどうにかできる力を持つイナリが発生源を叩くのが一番成功率が高い。だからこそイナリとヒカルは頷きあい、軽く拳をぶつけ合う。


「任せた」

「任された」


 ヒカルは走り出し、その姿はイナリにも見えなくなる。そして任された以上、イナリは今回の件の首魁を見つけなければならないが……実際どうやって探したものか? あてもなく探すことほど愚かな行動も無いだろう。となれば、敵の目的を探らなければならない。

 まずは、何故府中を襲撃したのか? 恐らくは赤羽のときのように川から襲撃できる地点だったというのは理由の1つだろう。

 では次に、府中でなければならなかった理由は何か? 他の場所も同時に襲撃している可能性もあるにはあるが、そんなところまで思考の翼を広げるのではなく「赤羽でも東京港でもなく府中でなければならなかった理由」をイナリは考える。


「……よもや、だんじょんか?」


 イナリが思い出すのは東京第1ダンジョン……【果て無き苦痛と愉悦の担い手】のことだ。

 確かあのときシステムは【ダンジョンを歪めるもの】と呼んでいた。つまり邪悪な目的を持った『神の如きものたち』はダンジョンに対し何らかの影響力を行使できる、あるいは行使することで何らかの目的を達成しようとしている、とも考えられるのではないだろうか?

 そう考えたとき、この府中にある東京第8ダンジョンが目的である可能性がグンと上がってくる。

 だとすると……すでに東京第8ダンジョンは襲撃されており、この霧の発生源もそこである可能性は高い。となれば、話は簡単だ。


「よし、向かうべき場所は決まった。となれば後は……」


 霧の向こうから飛び出てきたディープワンをイナリは一刀の下に斬り捨てる。確かに霧の邪魔はあるしディープワンはマーマンより硬い。しかしそんなもの、狐月の前では些細な差に過ぎない。イナリ自身の腕力など知れたもの。だが、狐月の切れ味はそれを補って余りあるのだから。だから、イナリはこう宣言する。


「全て、切り伏せるのみ。さあ、行くとするかの」


 場所は覚えている。此処に来る途中、ヒカルと確認したのだから。たとえ霧で見えずとも、どう行けばいいかは覚えている。だから、イナリは迷わずに霧の中を走っていく。途中で現れるディープワンを切り伏せ、狐火を放ち爆散させ、攻撃を回避しながら進んでいく。そうして進んだ先に見えてきたのは、東京第8ダンジョンを囲む壁だ。開け放たれたままの門から入っていくと、そこにはダンジョンゲートが存在していた。

 霧の発生源は……どうやら、この中のようだ。恐らくは術者がそのままダンジョンの中に潜っていったのだろう。となれば、ダンジョンの中まで追うしかない。だから、イナリは迷いなくダンジョンゲートへ飛び込んでいく。

 すると、そこはどうやら何処かの古城の中であるかのような光景が広がっていた。まあ、実際に此処が古城であったならば凄まじく巨大な古城ということになってしまうが……そこはあくまでダンジョンなので仕方がない。

 ダンジョンの中は外と同じように霧が出ていたが、外に比べると大分薄い。ところどころ途切れている場所もあるのを見るに、ダンジョンの中ではあまり効果を発揮できないのかもしれない。


「西洋の城を基本としとるんじゃったか。さて……敵の首魁が何処にいるかは分からんが、慎重に進まねばの」


 まるで城を護る騎士であるかのように並んだ飾りの全身鎧たちがその瞬間、ギッと鈍い音を立ててイナリへ振り向く。


「ひょっ? ま、まさか!」


 この東京第8ダンジョンの基本モンスター……リビングメイル。その名の通り動く鎧である彼等は、イナリを見つけると手に持つ武器を構えて動き出す。


「儂の目的はお主等では……と言っても聞かんか」


 そう、聞くはずもない。リビングメイルからしてみれば此処に入ってくる者は等しく侵入者であり、一切の区別なく敵である。卑怯な手段でこの先へと突破していった者も含め、一切の慈悲などあるはずもない。騎士のような全身鎧であっても、リビングメイルの本質は兵士に近い。だからこそ、リビングメイルたちはイナリを排除するべく走り出して。その先頭にいた1体が、イナリの放った狐火で鎧を粉砕されガラガラと広間に崩れ落ちた。

イナリ「早く追わねばならんというのにのう」

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― 新着の感想 ―
イナリちゃんアイデア成功!勝ったな!
[一言] ひょっ!? って聞いたらすぐに「まだ俺のバトルフェイズは終了していないぜ」が再生される病気
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