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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第二章

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お狐様、戦闘開始する

 2度目の赤羽。米の注文を再び終えたイナリがコロッケでも食べようかと歩いていくと、何やら知った顔が向こうから歩いてくるのが見えた。そう、それは『使用人被服工房』のエリだった。コロッケをサクサク食べながら楽しそうに鼻歌を歌うメイドは控えめにいって物凄い目立っている。というか、メイド服である。此処は秋葉原ではないのに何故なのか?


「あれ? こんにちは!」

「うむ、こんにちはじゃ。ところで何故めいどなのか聞いてもええかのう?」

「何故と言われましても。『あのメイド、私服じゃあんな感じなんだな』とか言われたら悔しくないです? メイド的に」

「せばすちゃんはそんな感じではなかったと思うのじゃが」

「あの人はいいんです! 何着ても有能執事感溢れるんですから! ズルくないです⁉」

「知らんよ……めいど感溢れればいいんじゃないかのう……」

「そうですよね! その日まではメイド道を一直線です!」


 何やら自分の道を再確認したらしいエリが滅茶苦茶目立つのとイナリが元々目立つのが合わさって物凄い目立ち方をしているせいで写真を撮り始める者が出始めているが、エリがイナリの肩を抱いて星を指差すようなポーズをしているせいで、なんとも絵的に映えているのは流石に『使用人被服工房』のメイドといったところだろうか?


「まあ、冗談はさておき突然の事態にも対応できるように武装してるんです。ほら、背中に丸盾とソードブレイカーが」

「まあ、物騒な時代じゃしのう。しかしそうなるとせばすちゃんは」

「あの人、ヒーラーだから武装とかあんまり関係ないんですよ……ズルい」

「そう言われてものう……」


 そう、セバスチャンは使用人被服工房でも指折りのヒーラーであり、基本的には攻撃に参加しないので武装は主に防御に重きを置いたものであったりする。さておいて。


「それで、イナリさんは赤羽で何を? ちなみに私はメイドらしく料理の実地研究です!」

「うむ。儂は米を買いに来て……それはもう終わったでの。せばすちゃんの言うとったかふぇにでも行ってみようかと」

「え? あー……あの珈琲店ですか?」

「そうそう、それじゃ」


 頷くイナリにエリは少し考えるような様子を見せると、何かを思いついたようにニコッと微笑む。


「じゃあ、一緒に行きませんか? 私もあの店のケーキセットは食べてみたかったんです」

「うむ、勿論じゃ。儂1人では無事に着くか怪しいしのう」

「決まりですね! 行きましょう!」


 そう言うとエリはイナリの手をとって走り出す。そうして離れた場所まで着くと、エリは「ふう」と息を吐いてイナリの手を離す。


「ごめんなさい、いきなり手を掴んじゃって」

「いや、それは構わんがの。なんぞあったかの?」

「いえ。単純に人が集まり過ぎる前に離脱しただけです」

「あー……そういうことじゃったか」


 確かにスマホで写真を撮る人が増えてきていたが、あれ以上集まれば交通の邪魔になるのは間違いない。その辺の見極めが重要なのだろうが……そもそも人を集めないという選択肢がないのは、ヒカルのようにプロ意識というやつなのだろうとイナリは思う。普段からしたいようにしているイナリとは大分違うが、充分に理解はできる。


「……うむ。エリは流石じゃのう」

「え? きゅ、急に褒めるなんて……でもありがとうございます」

「めいどのことは儂には分からんが、立派なもんじゃよ。儂には真似できん」


 使用人被服工房は、本当に人間的に出来た者が多い。セバスチャンといいエリといい、他の面々もイナリの知っている限りでは好人物が非常に多い。それがプロ意識と「好き」の程よいバランスで構成されているのは明白で、つまるところ仕事を楽しんでいるのがよく分かる姿だった。それはつまるところ、眩いほどに輝く人間とはどういうものかという、その答えであるのだろう。


「凄いのう、エリ。儂はお主のような人間は好きじゃよ」

「え、うわあ……すっごい神々しい笑顔……オーラすごい……」


 イナリの心の底からの笑みにエリが気圧されていたが……その時。ドガンッという何かが破壊されたような音が響く。同時に悲鳴や怒号が聞こえてきて、港の定期船乗り場の方角から人々が逃げてくるのが見える。


「モ、モンスターだあああ!」

「逃げろおおお!」


 慌てたように逃げていく人々はどうやら一般人のようだが、港からは誰かが戦っているような音も聞こえてくる。どうやら警備の覚醒者が戦っているのだろう。イナリとエリは頷きあうと、同時に走り出す。


「来い、狐月」


 イナリの手に刀が現れ、エリは盾を構えソードブレイカーを抜き放つ。そうして辿り着いた定期船乗り場では、すでに戦闘がほぼ終わっていた。それも、覚醒者側の敗北で……だ。マーマンの群れと、一際巨大なマーマン……マーマンチーフ。その手の中に握られているのは、ぐったりしている……警備と思わしき覚醒者の頭だった。


「ギャギャ……ギャギャギャ!」


 イナリたちに気付いたのだろう、マーマンチーフは掴んでいた覚醒者を投げ捨てると、イナリたちを指差す。倒せ、とでも命令したのだろうか。襲ってくるマーマンたちは槍を構え一斉に走り出す。それが……この戦いの、始まりの合図だった。

イナリ「なんという……!」

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― 新着の感想 ―
集まりすぎる前に移動するタイミングを見極めれるの凄い!
[一言] メイドと執事は完璧超人だからね
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