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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第二章

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お狐様、米の残量に気付く

『全滅しました』

「んん?」


 数日後。朝食にごま塩ふりかけを試すために米を炊く準備をしようとしていたイナリは、安野からの電話に首を傾げた。いきなり一言目にそんなことを言われても、何の話かサッパリ分からないのだ。何が全滅したのか。まさか覚醒者協会日本本部が全滅の憂き目にあったわけでもないだろう。


「いきなりそんなこと言われてものう。何が全滅したんじゃ?」

『え、テレビとか見てないんですか?』

「そう言われてものう。だんじょんの予約が取れぬから群馬あたりに行こうかと思っとったところじゃが」

『内陸は今大人気ですよ! 海に接してないですからね!』

「はあ?」


 言われてイナリはテレビをつけてみる。そうすると丁度ニュースで速報をやっていたようで、それを見てイナリは「ああ」と声をあげる。そこに映っていたのは、丁度数日前にヒカルと見に行った公園で見た者たちの写真だったのだ。しかし、これは……全員の顔写真の下に「入院」と書かれているのが分かる。


―このように今回、漁業連盟が旗振りした大規模警備隊の幹部級が全員かなりの怪我をおって入院したとのことですが解説の白滝さん、私たちはこれをどのように受け止めたら良いのでしょうか?―

―そうですね。水棲モンスターに対する認識の甘さもあるとは思いますが、これで解決したとも考えられますね。そもそも……―


 要は強力な個体がマーマンを引き連れてやってきて、対応した幹部級が倒すも、ほぼ全員が重傷で入院……ということらしい。そしてその強力な個体が他のマーマンを指揮しており今回のことが起こった……と考えているらしい。そして倒したからにはもうマーマン絡みの今回の騒動は収まるのではないか、というのが予測であるらしかった。随分と希望的観測が混じっているが、そうなるかどうかは今後嫌でも分かるだろう。イナリとしては、それについては正しいことを言えるわけでもない。

 というか、何故その話を安野が自分に持ち込むのかが分からない。


「儂としては知らんうちに事件が起こって知らんうちに解決したっちゅー話でしかないんじゃが」

『そうかもしれませんね。ですが、この件……何か感じませんか?』

「何か……? いやお主、まさか」

『そのまさかです。東京第1ダンジョンの件。また神の如きものとか、そういうのが関与してる可能性はないかなって思うんです』

「うーむ……」


 可能性はある、かもしれないとイナリは思う。偶然水棲モンスターが暴れ出して偶然強力な個体がやってきて出来たばかりの大規模警備隊を相打ちで潰した。全部偶然である。そんなことが起こる確率がどの程度あるだろうか? それも、今までなかったようなことがだ。

 しかし、もし「神の如きもの」が関連しているのであれば、その目的は何なのだろうか?

 考えながら……イナリはテレビに視線を移す。そこではあの小林とか呼ばれていた男があちこちに包帯を巻きつつもインタビューに答えていた。顔の半分にも包帯を巻いていて、目が隠れている。相当な激戦だったのだろうことが伺える。


―ええ、僕の実力不足です。もっと力があればこんなことには……―


『もしそうだとすると、今後も何か起こるかもしれません。狐神さんも気を付けてください』

「……うむ、そうしよう。連絡ありがとうの」


 安野からの電話を切ると、イナリはテレビの前に座る。小林へのインタビューは続いていて、ずっと申し訳なさそうな態度で小林はインタビューに答えていた。


―海の恐ろしさは分かっていたつもりでした。けれど、僕たちの想像以上に海は恐ろしい場所でした。もっと海というものを分かっていればと思ってしまいます―


「海、のう……」


 イナリは海を知識でしか知らない。まあ、確かに陸で戦うのと比べれば色々と大変なものだとは思うが……それにしてもやけに無力を強調するものだと思う。怪我をして心が折れたのかもしれないが、引っかかる部分がないでもない。まあ、考え過ぎとして流しても構わない程度ではあるのだが。


―次、ですか? そうですね……次があれば負けません。僕は学んだ。ならば次はそれを活かす番なのですから―


「……やはり考えすぎかの?」


 反省して、それをしっかり次に活かす。今回それが出来なかったことを反省しているようにしか聞こえない。ならばまあ、イナリが心配する筋合いでもない。イナリは台所に戻って米びつを見て「むっ」と声をあげる。米が……もうあまり残っていない。これはあまりよろしくない事態だ。今の米にすっかり慣れてしまって、もう適当な米を食う気が起きないのだ。


「これは……また赤羽に行かねばならんな」


 となると、朝食は抜くしかないだろう。ゆっくり米が炊けるまでを堪能しようかと思っていたが、米の残量が少ないのでは安心して楽しめそうにもない。まあ、赤羽についてから何か食べてみるのもいいだろう。前回のコロッケは美味しかったのだから。なんだったら川口まで足をのばして、前回セバスチャンが言っていた店に行ったっていい。


「善は急げじゃ。早速向かうとしようかの」

イナリ「おっと、てれびは消さねばの」

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― 新着の感想 ―
開幕で全滅したwwww 全員が入院?……妙だな
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