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【2/15 書籍3巻発売予定】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第二章

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お狐様、野次馬の一員になる

 そして驚くべきことに、目的地である晴海ふ頭公園への道中では誰もイナリとヒカルに気付かなかった。

 普段と印象が違い過ぎるせいでアクセサリーをつけているファンと思われたか、普通の服を着ていると「狐神イナリ」だと思われないのか。これに関してはヒカルは両方だと思っていた。

 これは実際にあった話ではあるのだが、特徴的なデザインの兜や鎧を纏い、企業のイメージキャラもこなす超有名な覚醒者が普段着で歩いていたら本人と認識されなかったという。

 何故か? それは簡単で、その覚醒者を鎧や兜で判断していたので無くなると本人かどうか分からなくなってしまうのだ。

 別に珍しい話ではなく、髪型が変わっただけで知人を一瞬本人と認識できなくなる……などというのもよくある話だ。

 そして「狐神イナリ」という世間一般的な「キャラクター」は狐耳と尻尾、そして巫女服の「狐巫女」である。そのあまりにも強烈なイメージは巫女服がなくなり別の服に変えるだけである程度抑えられる。あとは目元をサングラスで隠してしまえば、よほどじっくり見られなければ結びつかないものなのだ。

 まあ、そんなわけで2人が来たのは新東京港であった。かつて広大な範囲に及ぶ施設として機能していた東京港は、モンスター災害とそれに伴う海の状況の変化によりその性質を大きく変えざるを得なかった。

 水棲モンスターからの防衛を想定し覚醒者の待機施設などを含む要塞化を実施した新東京港だが、水産物を取り扱う晴海ふ頭に関してだけは様々な事情があり要塞化がほとんどされていない。ただ、それでも今まで大きな問題は起きていなかった。それ故に今回の件はまさに関係各所がバタバタしており、漁業連盟がその中で一番早く動いた……わけだが。


「ま、要は新しい利権だよな。おうおう、色んなクランが集まってやがる」

「ふむう。皆あまり変わらんように見えるのう」

「ハハッ」


 晴海ふ頭公園。集まった覚醒者たちを見に来た野次馬はヒカルとイナリだけではなく他にもいて、テレビ局や記者も何社か来ている。

 そんな中で素直な感想を漏らすイナリにヒカルは思わず笑ってしまう。まあ、実際その通りだろう。ヒカル自身、利権とは言ったがそんなに美味しい話でもない。何しろマーマンの得意なフィールドで不意打ちされる確率も高く、漁業連盟の出す報酬と吊り合うかはまさに実力次第。今回の募集背景からして、役に立たなければすぐに契約を切られそうでもある。

 となれば、そんな不安定な話を大手クランは受けない。此処に集まったのは大抵が中小クランである。そして中小クランに全てをひっくり返すような実力者が所属している……といったような美味しい話があることは、あまりない。この公園に集まった覚醒者たちは、大体そんなものだ。


「ま、そうだろうな。ロクな奴はいないよ。でも数がいればどうにかなる話さ」


 そもそもヒカルの目的はそっちではない。


「お、来たぞ」


 集まった覚醒者たちとは「別格」の扱い。各部署において幹部級の扱いをされる有名覚醒者たちが、漁業連盟の幹部と共に歩いてくるのを見て公園に集まった覚醒者たちがざわめく。

 扱いの差に不満もあるのだろう、しかし記者や野次馬たちが「おお……」と声を上げる程度には有名な覚醒者も混ざっている。


「誰じゃ?」

「ほんっとこういうの興味ねえよなあ。えーと確か……」


 クラン『青龍』の物理ディーラーである『龍刀』小林 誠一。

 クラン『世界樹』の魔法ディーラーにして電撃魔法の名手、『雷樹』中野 麗。

 クラン『鉄腕』のタンク、『剛腕』御園 琢磨。

 3人とも10大クランほどではないが、かなり有名なクランに所属する覚醒者たちだ。特に小林に関しては10大クランから何度も引き抜きの話がきているほどだという。


「ほー、よう知っとるのう」

「まあな。この仕事やってくなら常にアンテナは張らねーと」

「あんてなを……」

「比喩表現な」

「うむうむ、分かっとるよ」

「ほんとかなあ……」


 そんなことをイナリとヒカルが言い合っている間にも、漁業連盟の偉い人の演説が始まっていた。要は「集まってくれてありがとう。どうぞよろしく」みたいなことを長々と言っているわけだが、そうした挨拶が一通り終わると小林がマイクを渡され前に立つ。


「皆さんこんにちは。僕はクラン『青龍』の小林 誠一です。今回、この緊急事態に対応する司令官の役割を担うことになりました。若輩の身ではありますが皆様のご期待に応えられるよう……」


 やはり長々と演説が始まり、イナリは飽きて公園の先に見える海を眺め始める。キラキラして綺麗だが、今では海水浴は危険な遊びのうちの1つだ。しかし眺める分には今も昔も綺麗で。そんなキラキラと輝く海に、イナリは妙なものを見つける。それは……魚の背びれ、いや。あれは。


「ヒイヒヒヒヒヒ!」

「マ、マーマンだ!」

「マーマンの襲撃だ!」


 覚醒者たちが慌てて武器を抜く中で、中野が静かに杖を構える。


「サンダーレイン」


 杖から空へと放たれた電撃が拡散し、地上へ上がってきたマーマンも地上へ上がりかけているマーマンも全て黒焦げにしていく。その中でリーダーなのだろうか、唯一生き残っていたマーマンが何かをしようとしたその刹那。凄まじい勢いで駆け寄っていた小林が青龍刀でその首を一刀両断して刎ねる。


「僕たちがいる限り、この港にモンスターの上陸など許しはしない……」


 そんな決め台詞に集まった野次馬や記者たちの拍手や歓声が響く。


「す、凄い! あんな恐ろしいモンスターを一撃で……!」

「カッコいいいいい!」


 まあ、覚醒者はともかく一般人の反応はそんな感じだろう。覚醒者でも今の襲撃に浮足立ってしまった面々は拍手していたし……自分たちのリーダーが強いということに異論があるはずもない。そうして響く歓声は中々終わらず、誰もが今回の事件はもう解決したようなものだと囁き合う。


「ま、アレなら上手くいくか」

「そうじゃとええのう」


 そうして、翌日の朝刊や朝のニュースは小林たちのことで埋め尽くされる。恐ろしい速報の後の希望溢れるニュースは、まさに誰もが望んだものだったのだ。

イナリ「……ふうむ」

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― 新着の感想 ―
ちょうどいいタイミングで決め台詞が決まったなぁ、フラグになりそうwww マーマンに知能があるなら偵察用の捨て駒だったりするのだろうか?
[一言] キャップ帽を目深に被ってサングラスをかけると、隣の席の誰かが高確率で顔を覗き込んできます 顔を隠してる有名人のアイコンになってる可能性も多少
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