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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第二章

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お狐様、例の子に出会う

 ところで、アツアゲに対する非覚醒者……つまり一般人と覚醒者の認識の差だが、これには明確な理由があったりする。

 それにはまず覚醒者の仕事とは何かという話になるのだが、一般人からしてみれば覚醒者の仕事とは「モンスターを倒すこと」である。

 しかしながら、実際にそれがどういうものかについては驚くほど知っている人はいない。

 まあ、当然だ。ダンジョンは命懸けで挑む場所であり、テレビのスタッフクルーなどを守りながら進めるような場所ではない。仮に出来たとして、そんな泥と血に塗れるようなものを一般人にお見せすれば死ぬほどクレームが来るのは間違いないし、テレビ局の人間だって死にたくはないし覚醒者側だってその責任を取りたくはない。

 まあ、そんなわけでモンスター災害を知らない今時の一般人にとっては覚醒者のお仕事というものはなんだかボンヤリしているものなのだ。

 更に言えばモンスターに関するデータなどというものは一般公開されていないものも多く、一般人からしてみれば積み木ゴーレムはただの可愛い玩具みたいな何かにしか見えないのだ。

 しかし覚醒者からしてみれば積み木ゴーレムは悪名高い埼玉第3ダンジョンのボスである。

 その辺の認識の差が明確に現れるわけだが……まあ、そんなわけでアツアゲがイナリの肩に乗っていても一般人は驚かないし、覚醒者は畏怖や尊敬の目を向けるわけである。

 では、秋葉原ではどうなるか? 答えは簡単で、秋葉原に居るのは覚醒者ばかりなのでアツアゲへの畏怖の目、そして連れているイナリへの尊敬や羨望の視線が向けられることになる。


「見ろよ、アレ……噂の積み木ゴーレムだ」

「すげえなあ。俺にもああいうのがあればなあ」

「埼玉第3ダンジョンだろ? 予約も凄えらしいけど……」


 そう、埼玉第3ダンジョンの予約は今現在凄いことになっているが、それでダンジョンの難易度が変わるわけでもない。他を出し抜きたくてソロや少人数で挑んだ連中の末路がどうなるかはまさに賽子の目次第。あと数週間もすれば予約が沈静化するだろうというのが覚醒者協会の見方であった。

 それはつまり、まだしばらくの間は「外」にいる積み木ゴーレムのパートナーはアツアゲだけだろうということであり、それが秋葉原の面々にアツアゲをより凄いものに見せていた。

 ちなみに当然だがイナリは別にアツアゲを見せびらかしにきたわけではない。赤井に連れてきてほしいと言われてフォックスフォンに向かっている最中であり、目立っているのはあくまで不可抗力なのだ。

 ……というのもアツアゲが神隠しの穴は嫌がるし服の内側に入れても出てきてしまうので、もう好きにさせるしかないというのもある。そうして放っておくとアツアゲはイナリの肩や頭に乗るので、まあ嫌でも目立つわけだ。イナリはもう諦めている。


「狐神さん、ファンです! 握手してください!」

「ほへ? まあそのくらい構わんが……」

「あ、僕もお願いします!」

「私も! 私もお願いします!」

「え!? じゃあ俺も……」

「ぬおおお!? な、なんじゃあ!?」


 しかしながら有名人としての所作のようなものは当然の如くイナリは身についておらず、あっという間に囲まれて即席の握手会が始まってしまう。悪意はともかく好意を向けられてはイナリとしても無下にも出来ないが、どんどんと人が集まってくるのはもうどうしようもない。何処で止めればいいのか分からないのだ。


(おおお……ど、どうすればいいんじゃ……もう駄目じゃとは言えんし……)


 次は自分だ、もうすぐ自分だというキラキラした目を向けられてはイナリとしてはどうすることもできないが……その流れを断ち切るように笛の音が鳴り響く。人々がハッとしたようにその方向に視線を向ければ、そこには1人の少女が立っていた。


「皆、ちゅうもっくー!」


 良く響く声で叫ぶ少女は、すうっと息を吐いて更に大きな声をあげる。


「解散! 通行の邪魔だしイナリちゃんにも迷惑かけちゃってるよ! 集まりすぎぃ!」

「ごめーん!」

「皆、解散しよう解散!」

「狐神さん、ごめんなさい!」


 なんだか熱気を一気に冷まされたかのように人々はぞろぞろと解散していくが……イナリはそこに何らかの力が乗っていたのを感じていた。特に邪悪なものではなく、自分に注目を集めるだけのものであったのは明らかだ。1度そうしてからおどけることで皆を冷静にさせたのだと、イナリはそう推測していた。


「ふーむ。これは中々の技じゃのう」


 そう感心していると、少女はイナリの下へ歩いてくる。なんか何処かで見た顔と格好だなとイナリは思うがイマイチ思い出せない。この特徴的なライオンのような装備を纏っていたのは、確か。


「大丈夫だった? イナリちゃん。アタシは瀬尾ヒカル! 会うのは初めましてだね!」

「む、むむ! そうじゃ、思い出したぞ! 確からいおん通信の!」

「うん! ライオン通信の瀬尾ヒカル! よろしく、だぞ♪」


 ビシッとポーズをキメるヒカルにイナリはメイドたちを幻視したが、微妙に目が死んでいるのは何故なのか。分からないが……挨拶には挨拶で返すのが礼儀。


「ほっくすほんの狐神イナリじゃ。よろしくのう」


 ピシッと綺麗な礼をするイナリにヒカルが「そっちがいいなあ……」と呟いていたが、何のことかは当然のようにイナリには分からなかったのだ。

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― 新着の感想 ―
趣味でやってるメイドたちと仕事でやらされてる人とじゃねwww 微妙に目が死んでるの味わい深いなぁwww
[一言] 自然体そのままで、と言い実際その通りに無理せずやらせるほっくすほんと無理矢理なキャラ作りと語尾を強要されてしまうライオン通信、どちらが優れているかは確定的に明らか!(きつねうどんを食べながら…
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