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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第二章

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お狐様、アツアゲについて語ったりする

「ぱあとなあ」

「……えーと。仲間とか相棒とか、そういうですね」

「おお、うむうむ。分かっとるよ」


 相変わらずだなあ、と思いながらも安野は話を戻す。今日は元々イナリから話を聞きに来たのだ、後で報告書も書かされる以上、せめて少しでもこの安野へのシャドーボクシングを続けている積み木ゴーレム……アツアゲについて聞かなけれならない。

 というか、どうして名前がアツアゲなのだろうか。頭が三角形だから三角に切った厚揚げを連想したのだろうか?


「……こんなにカラフルなのに」

「む?」

「いえ、なんでもないです。で、そろそろアツアゲについて聞かせてほしいんですが」

「そう言われてものう。ここ数日は家におったし」


 結構力持ちであることは知っている。重たいものの移動も楽々だ。結構頭もいい。自分でテレビのリモコンを操作してアニメを見ている。巨大化は……今のところしていない。出来るのかどうかもイナリにはよく分からない。


「まあ、そんな感じじゃな」

「な、るほど……つまり1倍積み木ゴーレム程度の力は健在で知能があり、巨大化については不明である、と……ふむふむ。ビームはどうです?」

「ビー」

「ヒイッ」

「待て、じゃ」


 躊躇なく安野にビームを撃とうとしたアツアゲをイナリは一声で止める。


「撃つならこっちじゃ、こっち」


 イナリが自分の前に結界を展開すると、アツアゲはイヤイヤをするように首を横に振って安野を指差す。


「安野はダメじゃ。結界を張れんからのう」

「結界を張れてもダメです……」


 積み木ゴーレムのビームなんか受けたくない。そんな態度を安野は全身で示すが、積み木ゴーレムは不満そうだ。顔もないのになんか雰囲気で分かる。何もしていないのに嫌われている。それともイナリに友好的なだけで安野は敵のままなのか。

 しかしその割には動画でポーズをキメていたし、安野個人が嫌われている可能性は高い。何故なのか。


「えっと、とにかくビームも撃てる、と……なんか本当に積み木ゴーレムそのままなんですね。これは本当に大騒ぎになりますよ」

「何故じゃ?」

「何故って。ボスモンスターが『パートナー』になる可能性がある。これはとてつもなく大きいですよ。ゴブリンやオークはともかく、グレイウルフにリザードマン族長、リビングナイトリーダー。この辺なら欲しいって人が一杯いると思います」


 そんなボスモンスターが仲間になれば、覚醒者としても格段に楽になる可能性は高い。たとえば遠距離ディーラーやヒーラーが、パートナーを連れてソロで活動することも可能になるだろう。そういうことが出来るだけで、かなり多種多様な覚醒者のやり方が出てくるようになる。それは覚醒者協会日本本部としても、喜ぶべきことだ。喜ぶべきことではある、のだが。


「ただ、これでまたダンジョンの予約が偏りますね……埼玉第3ダンジョンもしばらくは満杯になると思います」

「ああ、儂がアツアゲを連れてきたからじゃな?」

「はい。皆『二匹目のドジョウ』を探しに行くんですよ。実績がありますから」


 出るか出ないか分からないところよりも、出るところに皆行きたい。つまりはそういうことだが……だからといって36倍積み木ゴーレムを倒すのが条件であったりしたら相当無理じゃないかなあ……などとは安野は思っていた。


「あ、そういえば36倍プレゼントボックス。凄い値段上がってますよ」

「欲しい人のところに行くと良いのう」

「まあ、まず間違いなく欲しい人のところに行きますけども……」


 欲望をたぎらせた大人の札束での殴り合いなので、イナリが想像しているような微笑ましい風景ではないだろうなあ、などという言葉を安野は飲み込む。イナリは売る。そして落札した奴はお金を払う。これで全員幸せだ。


「それと、しばらくは外を歩くのにも気を付けてくださいね」

「何故じゃ?」

「狐神さんは今『バズっている』状態ですので。有名になると変なのも色々寄ってきます」

「……現代には勝負を挑んでくる河童か鬼でもおるんかの」

「そういうのならやっつければいいから話は楽なんですが……まあ、誘いに安易に乗らない、というのを徹底して頂ければ大丈夫です」


 何も有名覚醒者と繋がりを持とうというのはクランばかりではない。それはもう、色んなのがやってくる。そのためにイナリとフォックスフォンの間を覚醒者協会日本本部が取り持ったわけだが……それで止まる奴ばかりではない。


「アツアゲを譲ってくれという誘いも1つや2つじゃないはずです。ですが……」

「譲らんよ。というか、そういうのではなかろう。相棒なんじゃろ?」


 その言葉にアツアゲが振り向き、イナリの肩に飛び乗る。本当に言葉が分かっているのは間違いないが……イナリとの絆のようなものが安野には透けて見えていた。そんなに出会ってから時間もたっていないはずなのだが、時間は関係ないということなのだろうか?

 まあ、イナリとアツアゲのおかげで「どういうものか」は安野にも理解できた気がしていた。となると、あとは帰って報告を作るだけだ。安野は立ち上がると「何かあったら連絡してください」と念押しする。


(欲しいなあ。私も欲しいなあ……ああいうの。グレイウルフがいいなあ。有給とってダンジョン行けないかなー)


 そんなことを思いながらも……しばらくそんな時間は取れないだろうことも理解できてしまっていた。恐らく来るだろう他国の覚醒者協会を含む関係各所への対応で日本本部が忙しくなるだろう現在では、安野もイナリ担当としてそれに巻き込まれることは、ほぼ確定なのだから。

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― 新着の感想 ―
ゴーレム可愛い! 36倍を倒すのが条件だったら倒せるのかの前に出るのかがハードルになってくるなぁww
[一言] 見に覚えのない身内がそろそろ出そう。
[良い点] 先駆者が得たものが皆に行き渡るころにはまた別の欲しいものが供給されているのだ
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