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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第二章

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お狐様、コマーシャルを見る

「それにしても米、ですか」

 

 おにぎりを食べ終わり、緑茶……イナリが来た時に出すことを前提にして赤井が厳選した高級品であり、見事イナリの好みにストライクであったがさておいて、緑茶を飲み終わると赤井は「米……」と呟く。何かを計算するようなその表情にイナリは「農業でも始めるつもりかえ?」と聞いてみる。赤井ならやりかねない、と思う程度にはイナリも赤井里奈という女性のことを理解できてきていた。


「それも楽しそうですけど、農業はフォックスフォンとは完全に違う仕事ですからね。勿論狐神さんが望むなら検討するのもやぶさかではありませんが」

「望んどらんよ。米は好きじゃが育てたいと思うたことはないでのう」

「狐神さんの狐イメージにちなんで『きつねび』とか『いなり』とか、結構アリだと思うんですが」

「やめとくれ……」


 此処で下手に頷けば本気でやりかねない。そんな目を赤井はしていた。だからイナリが重ねて「いらんぞ? いらんからな?」と言えば赤井はようやく「えー」と言いながら諦めた顔になる。もうすっごい不満そうで納得していない顔だが、イナリとしてはなんでそんなものを作りたいのかが分からない。


「すんごい不満そうじゃのう……」

「だって売れますよ、きつねび。パッケージに稲を抱えた狐神さんの写真とか印刷したら売り上げも凄そうです」

「名前が決定しとる……! さておき米に火の名前を冠するのはどうかと思うんじゃが」

「ではその辺りを次回までに検討しておきますね」

「流れるように話をそっちに持っていくのう……」

「というか、よく考えれば共同開発とかすればいいんだと気付きまして」


 凄くやりたいらしい。目がキラキラしている赤井を見ると、もうイナリとしても「やるな」とは言えなくなってきてしまう。まあ、イナリとしても強い理由があって反対しているわけではないのだ。米の歴史も鑑みるに、今更米の品種が増えたところでどうということもない……かもしれない。


「ね、ね、狐神さん。やってもいいですか?」

「むう……好きにするとええんじゃないかのう」

「わあ、ありがとうございます! 企画書はすぐに作りますね!」


 まあ、イナリもイメージキャラであるのだから、これもまた仕事である……のかもしれないが。ちなみにフォックスフォンから売り出しているグッズは好調で品切れになることも多いらしい。新グッズの企画も色々と出ているとは聞かされているが、イナリはその辺りは分からないので基本ノータッチである。


「そういえば狐神さん」

「む?」

「覚醒者協会から先日、私たち……というか私にも東京第1ダンジョンの『事故』の詳細な報告書が届きました」


 東京第1ダンジョンの『事故』。それはクラン「越後商会」、そして【果て無き苦痛と愉悦の担い手】と呼ばれる「神」に関わる事件であった。神などというモノの存在の情報の公開による影響の大きさを考え秘匿されたのだが、クラン「フォックスフォン」のマスターとして立場がありイナリの後ろ盾としての役割も果たしている赤井にはある程度の情報が渡されたということであるらしい。


「覚醒者協会では『神』が1人とは考えていないようです」

「そうじゃろうのう。八百万とは言わんが、しすてむもアレ1人とは言うておらんかったからの」

「正直、何か他に隠してる気もするのですが……あまり突っ込むのも恐ろしいですしね」

「うむ。危険を冒す必要もないじゃろ」


 それについてはイナリも可能性を考えてはいた。神。あるいは、神の如き者たち。そんなものがいるのであれば【果て無き苦痛と愉悦の担い手】だけしか居ないと考えるのは悲観的でもあり楽観的でもある。当然、他にもいるはずだし【果て無き苦痛と愉悦の担い手】より穏当な目的を持っている神が他の人間に関わっていても何の不思議もない。

 そしてイナリについても、積極的にそれらを探すつもりも……今のところは、ない。それこそ【果て無き苦痛と愉悦の担い手】のような神がイナリの目の前に出てくるのであれば真正面から斬りにいくこともあるだろうが、そうでなければイナリの手に負える規模の話ではない。


(覚醒者協会はこの件を広めて危機感を煽るつもりはないようじゃ。となれば、そちらにも『何か』が関わっとる可能性はある。藪蛇とはいうが、蛇ではなく神が出てくるようでは手に負えん)


 とはいえ……対抗できる力をつけておく必要は、ある。ダンジョンでレベルを上げて魔石を手に入れる活動は続けてはいるが、結局のところそうやっていくしかない。万能ではない以上、出来ることからやっていくしかないのだから。


(そういえば東京の隣……埼玉、じゃったか。そっちのだんじょんに行ってみるのも手かもしれんが)


 赤羽に行ったときのことを思い出しながらイナリが物思いにふけっていると、社員がバタバタと部屋に駆け込んでくる。


「た、大変です! 代表、テレビを!」

「え? なんですかもう」


 言われて赤井がテレビをつけると、そこでは丁度コマーシャルの最中であったようで。


―やっぱり時代は高性能! 欲しい機能を諦める必要なんて、あるわけない! 欲張りな気持ち、ライオン通信なら全部叶う! 威風堂々、王者の風格! 覚醒フォンならライオン通信! だぞ!―


 画面の中で踊る、外見でいえばイナリよりは年上に見える少女。ライオンをイメージしたのだと思われる装備に身を包む格闘家らしき彼女は……どうやら、ライオン通信のイメージキャラであるようだった。

イナリ「元気じゃのう……」

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― 新着の感想 ―
ライバル会社がイメージキャラクター出してきたなら用意するよねww ふりかけに特化したお米作ったらイナリちゃん御用達とか監修とかつけて売れそうww
[一言] おっ獅子神様の登場かな
[一言] 米の名前はイナリ+豊作の兆し+偉大な有名品種でいなびかりとかどうですかね
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