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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第一章

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お狐様、未踏破ダンジョンに向かう

 そうして迎えに来たヘリには、なんだか久々に会った気のする2人が乗っていた。


「おお、お主等は確か……丸瀬と高野……じゃったかの?」

「丸山と宅井だ」

「俺の名前、『た』しかあってねえ……」


 そう、丸山正と宅井雄一。あの廃村までイナリに会いに来た2人であった。どうやらこの2人が迎えらしいとイナリは悟り、しかし一応確認する。


「で、お主等が迎えということでええんかの?」

「ああ。詳しいことは道中で説明する。乗ってくれ」


 そうしてイナリがヘリに乗れば、そのまま何処かへ向かって飛び始める。そのヘリの中で、丸山が「さて」と早速話を切り出す。


「時間がないから要点をまとめて伝えさせてもらう。今回の仕事は捜索だ。可能ならば救出も視野に入れてほしい」


 東京に幾つかある固定ダンジョンは全て、定期的に「大規模攻略」と呼ばれるものが行われる。これは必ずしもダンジョンの攻略を意味するものではなく、ダンジョンの中のモンスターを間引く意味合いが強い。

 というのも、ダンジョンは一定期間モンスターを倒さない期間が続いたとき、中のモンスターを地上へ溢れ出させる性質を持っているからだ。モンスター災害と呼ばれるそれを繰り返させないための大規模攻略だが、東京第1ダンジョンに関してだけは違う。このダンジョンは攻略されたことがなく、便宜上他の固定ダンジョンと同じ扱いをされているが実際には臨時ダンジョンかもしれないのだ。

 そして、その東京第1ダンジョンの大規模攻略が、どうやら失敗した……というのが今回の話がイナリへと来る理由となった、そもそもの原因だ。


「なるほどのう。ちなみにその話が儂に回ってきた理由は?」

「……10大クランの一角が失敗したからだ」


 日本10大クラン。公式的な記録があるわけではなく、そう呼ばれているというだけではあるが誰もそれに異論を唱えることがない程度には圧倒的な力や規模を持つ10のクランのことだ。

『富士』『天道』『ブレイカーズ』『閃光』『ジェネシス』『武本武士団』『サンライン』『ドラゴンアイ』『魔道連盟』『越後商会』。それぞれ方針もやり方も違えど、10大クランと呼ばれるに相応しい実力を持っている。


「だが今回、『越後商会』による大規模攻略隊が5日たっても連絡がない。通常であれば、どんなに遅くても3日で帰還するはずなのに……だ」

「確か覚醒ほんはダンジョンの中でも通じるんじゃろ?」

「そのはずだ。だが、例外がないなどとは誰にも言えない」

「道理じゃ」


 覚醒フォンだってダンジョンから出たものを利用した技術だ。そのダンジョンの中に、覚醒フォンの仕組みや力を上回る、あるいは封じるものがあったところでイナリは不思議とは思わない。たとえばイナリが結界を張っただけでも覚醒フォンは使用不能になる可能性だってある。


「越後商会は10大クランの中では経済活動に偏っていて実力は一番下だ。だが、それでも10大クランと呼ばれるに相応しい実力はある。なのに今回、連絡を絶った。正直、これだけでも大事件なんだが……今回行方不明になったメンバーに、越後商会のクランマスターが居るのが更に問題なんだ」


 言いながら丸山が出してきた資料には、可愛らしい少女の写真が貼られている。

 おかっぱ頭の黒い髪と眼鏡が印象的なその少女の名前は「越後 八重香」。弱冠20歳にして巨大クラン「越後商会」を動かす、やり手でもある。

 覚醒者の能力を活かした流通業を主力とする越後商会は、ジョブ「商人」を持つ八重香の超人じみた処理能力に支えられている部分が少なからず存在している。

 勿論八重香が留守にしたところで企業としてもクランとしても越後商会は動く。動くが……10大クランでもある越後商会のマスターの座は、日本中の誰もが欲しがるものだ。

 あまり考えたくはないが八重香が死んでしまった場合……かなり大規模な内部争いと、それに伴う流通への大規模な影響も考えられる。それを防ぐためにも、八重香には生きていてもらわなければいけないのだ。


「……と、ここまでが覚醒者協会日本本部からの話なんだが。今の越後マスターが死んで椅子が自分に回ってくることを妄想してる連中なんてのもいる」


 実際、そうした連中の手引きによるものかトップレベルの覚醒者にはすぐには外せない仕事が殺到している。たとえば魔法系ディーラーの中でもとくに有名な「黒の魔女」も今は北海道に行っている。それに、この話をあまり大きく広めたくもない事情もある。


「10大クランの攻略隊が東京第1ダンジョンで全滅した。そんな話が表沙汰になれば、経済への影響がエグいらしい。だから『苦労したがなんとかなった』という話に持っていく必要がある」

「ふむ……」


 そこでイナリに白羽の矢が立ったということのようだ。とはいえイナリだって死人を黄泉から連れ戻すことは流石に出来ない。それに、何よりも。


「人の口に戸は立てられぬぞ? 儂がこの子を救ったところで、必ず何処ぞより話が漏れるじゃろうよ」

「ああ、別にいいらしい。今はとにかく、生きていてほしい……とのことだ」

「ま、確かにのう」


 それに関してはイナリとしても同意だ。生きていればどうにでもなる。後のことは、全部終わった後に頭のいい連中が考えればいい。イナリは、そのくらいシンプルに自分の中で今回の件を整理したのだった。

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― 新着の感想 ―
トップ層のクランの危機に他のクランが助ける義理なんてそうそうないだろうし、戦力的にもイナリちゃんに白羽の矢が立っちゃうのはしゃあなしな状況か 流通に関与している組織が最悪瓦解しかねないのはヤバいなぁ
[一言] Too big to fail なんて、マジモンのロクデナシ政治案件じゃないですかヤダー。
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