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【2/15 書籍3巻発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第十二章

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お狐様、月岡温泉に行く2

 ちなみにイメージというものは本当に大事だ。

 実力があれば、それでいいというのであれば覚醒者事情はもう少し変わっていたかもしれない。

 ほとんど海外にヘルプに行っている『勇者』が世間で人気なのも、本人の性質が極めて善であり、それが広く知られているからだ。

 月子の場合は生活レベル向上に貢献している魔科学の世界的権威であるし、紫苑は海の守護神的扱いだ。

 まあ、そんな風にイメージは大事なわけであるが、月岡温泉は旧時代も今も変わらずイメージ戦略に熱心だ。

 勿論、それにはしっかりとした泉質も前提になってくるわけだが……。


「よし、着いたわよ!」

「ほー、随分と栄えておるのう」


 駐車場に停めた車から降りたイナリの視界に入るのは、楽しそうに歩いている観光客たちの姿だ。

 家族連れというよりは若者の姿が多く、通り沿いの店に入っていく姿が見える……のだが、イナリは「ふむ?」と首を傾げていた。


「うーむ。熱海とはまた違う感じがするのじゃが……」


 客層が若いのは同じのはずだ。しかし、どうにも熱海とは何かが決定的に違う。

 それが何処かを考えて……イナリは「ああ」と納得したように頷く。


「食べ歩きの店が少ないんじゃな」

「そこは仕方ないじゃない。町としての性質が違うわよ」


 海鮮の町としての強みがある熱海とは違うのは仕方がない。食べ歩きというのは、それを受け入れる仕組みと下地とセットであって、突然生やせるものではないのだから。

 勿論食べ歩きがないというわけでもないしオシャレな店も多くある。

 その辺りは更にじっくりと腰を据えた長期計画が今後も必要になってくるだろうが……まあ、さておいて。


「ほら、さっさと入るわよ」

「おお、そうじゃのう」


 ただでさえイナリはその容姿で目立つのだから、どれだけ変装したところで芋づる式にサリナのこともバレかねない。

 だからさっさと旅館に入ろうとサリナはイナリの肩を押して、そのどことなく和風な雰囲気のある旅館へと入っていくが……そこには、ずらりと並ぶ従業員たちの姿。


「お帰りなさいませ、お嬢様!」

「お嬢様がお友達を連れてくるなんて……感激です!」

「ああ、分かる。もう一生マネージャーさん以外は連れてこないものと」

「うっさいわね、なんなのよ! 私の友人関係はどうでもいいでしょうが!」


 いきなり好き放題言う従業員たちにサリナが「散りなさい!」と叫んだ辺りで「まあまあ」と文豪じみた男が進み出る。

 そう、文豪だ……やけにシュッとした細い体にカイゼル髭、少し天然パーマの入った真ん中分けの髪……落ち着いた色合いのスーツも合わせて、なんとも「文豪」という言葉が最初に出てくるような、そんな壮年の男にサリナは「父さんの仕込み?」と嫌そうな表情を向けて。


「そんなことはしないさ、皆自主的にサリナに物申したかったんだよ」

「歓迎したかったじゃなくて⁉」

「だって、サリナってばテレビで結構教育に悪いみたいなこと言われてるしさ……本当はとっても良い子なのに分かってないよねって、皆思ってたんだよ? そこにお友達連れて来たってなればもう、これを機にキャラ転換もいけるよねって思ってたんだけど……」

「けど、何よ」


 サリナの父はサリナ、そしてイナリに視線を向け……またサリナへと戻す。


「娘が異世界転移して元の世界に狐巫女を連れ帰ってきたっていうか……願ってたジャンル変更はそういうのじゃなかったみたいな」

「馬鹿なの?」

「エリがそういうの好きだったのう」

「連れてこなくて良かったってマジで今思ってるわ……」


 そのジャンルでメイドを連れてきたら世界観の補強でしかない。さておいて。


「面白い親御さんで何よりじゃ」

「ちなみにあの髭は天然だから」


 別に油で固めているわけでもないのにカイゼル髭というサリナの父だが……本人もそれを活かして名物主人になっているので、キャラ作りはもはや遺伝なのかもしれない。


「うむ、うむ。儂はサリナの友人の狐神イナリじゃ。よろしくのう」

「ええ、どうも。僕はサリナの父で、この『洞爺』の主人の千堂一護です。ご滞在の間は貸し切りにさせていただいておりますので、気兼ねせず過ごしてくださいね」

「その子の耳とかも天然だから」

「え、そうなの⁉」

「そうじゃよ」

「そっかあ……僕の髭くらいじゃ普通なんだなあ……」


 何やら感動した様子の一護にイナリは首を傾げるが、まあ色々あったのかもしれない。

 まあ一護の事情はさておき案内された五階の部屋は広く、立派で……広いヒノキの浴槽までついている部屋だった。


「おお、これは凄いのう。しかしなんじゃろうな、香りが何やら温泉っぽくないような」

「内風呂は普通のお湯よ?」

「なんと⁉」


 絶望したような表情で振り返るイナリにサリナは肩をすくめて。


「成分的な問題で向いてないらしいのよ。ま、露天風呂は温泉だから」

「よし、では早速行くとするかのう。サリナはどうするんじゃ?」

「当然付き合うわよ。長時間車に乗ってたから疲れたもの」


 ちなみにマネージャーは別室だが……今日はマネージャー業もお休みということで本人希望もあり、そのまま放ってあげるのが優しさである。

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― 新着の感想 ―
カイゼル髭wwwしかも天然ものwwww 理解のある親御さんたちというか、理解があり過ぎるというかww
性格や趣味嗜好は遺伝子関係無さそうで、生活環境が影響して結局遺伝するのである
カイゼル髭!?そんな髭をする人が実在していたのか!!?
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