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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

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お狐様、「次」を考える。

 地球防衛隊日本支部の事件は、それなりに大きなニュースであった。しかしながら1週間、そして2週間もたてば人々の興味もニュース内容も別のものへと変わっていく。平たく言えば「鮮度が落ちた」わけだが……まあ、それが人の営みというものだ。時間は常に進んでいるのだから。


―それでは次のニュースです。横浜で今日、新しいショッピングセンターがオープンするということで……―


 何やら平和なニュースが流れているテレビをアツアゲが頷きながら見ているが、相変わらず分かっているのかどうかは不明だ。

 まあ結果から言うと地球防衛隊日本支部とその協力者は、ほぼ壊滅したといっていい。元から不安要素であっただけに、この最大のチャンスを逃すまいと警察も覚醒者協会もしっかりとした協力体制をとった結果であるだろう。

 彼らとは真逆の方向性を持っている超人連盟については未だ潜伏しているが……まあ、ひとまずの危機は去り平和が戻ったといっていいだろう。

 さて、ちなみにこの家の主人であるイナリが何処にいるかというと……台所にいたりする。

 その手にはフライパンが握られており、目玉焼きが美味しそうな湯気をたてている。


「うむ……こんな感じじゃろうな」


 おおよそ半熟で仕上げた目玉焼きをお皿に乗っけると、今度はベーコンを焼き始める。本来であればベーコンを先に焼き、その油で目玉焼きを……みたいなことをするのかもしれないが、イナリはその辺りを気にしないので問題はない。じゅうじゅうと美味しそうな音と香りのベーコンはなんとも素晴らしく、その間にキャベツを刻んでいく。

 適当極まりない米中心の生活を送っていたイナリにしてみれば凄まじい進歩だが、この辺りは先日の宴会の後引き止められて夕飯もご馳走になる際に、恵瑠から多少教わったのも大きい。覚えてみたならばやってみたくなるのは、人もイナリも同じということだ。ついでにいうと、もう1つ理由はあるのだが。

 ちなみに隣では木綿豆腐の入ったお湯が丁度2人分煮えており、味噌の投入を待っている。

 そして包丁のトントンというリズミカルな音はアツアゲも気になるようだが、結局テレビに集中することにしたらしい……そんなアツアゲをそのままに、イナリは冷蔵庫から味噌を取り出すとフライパンと鍋の火を止め、味噌を混ぜていく。

 簡単な出汁入り味噌なので難しい手間もないが、そうすると味噌汁の出来上がりだ。


「よし、ではまずはべえこんから……」


 キャベツの千切りにベーコン、目玉焼き。これに木綿豆腐の味噌汁とご飯、そしてたくあん。なんともバランスの良い朝食を運べば、パタパタと寝室から紫苑が走ってくる。その頭にはしっかりと寝ぐせがついており、周囲を見回して「あっ」と声をあげる。


「寝坊した……」

「ほっほっほ。おはよう、紫苑。別になあんも問題ないがのう」

「むー……おはよう、イナリ。手伝うべきだった」

「お客さんにそんなもんをやらせはせんよ。ほれ、紫苑の分も台所にあるからのう」

「ん」


 そう、今日は紫苑が遊びに来ていた日の……その、翌日だ。だからこそ朝食に気合が入っているわけだ。紫苑がお盆で自分の分を運んでくるが、心なしかその目はキラキラとしている。


「おいしそう」

「うむ。では、頂くとしようかの」


 いただきます、と。しっかりと手を合わせて食べ始めれば、テレビにイナリの見覚えのある顔が映る。


―蒼空さん、次はいつの帰国になるご予定ですか!?―

―ファンの皆さんに向けたメッセージをお願いします!―


「あ、勇者だ」

「うむ。また海外に行くらしいのう」


 そう、蒼空は今日海外にまた行くということで、テレビが丁度それを生中継しているようだが……そんなテレビのカメラに、蒼空が爽やかな笑顔を向ける。


―俺を求める声が多いので、いつと具体的なことは言えませんが……それでも日本には頼れる覚醒者がたくさんいます。狐神さんとか、そういう凄い人たちもいるんで、あんまり心配してませんけどね―


「ひょっ!?」


 いきなり自分の名前が出てイナリは箸を落としそうになってしまうが、紫苑も驚きで目を見開いていた。まさかあんな突然イナリの名前を出すとは予想もしていなかったから当然だ。


―コガミ……狐神イナリさんですか!?―

―どういう関係ですか!?―

―この前知り合った仲です。それじゃ、そろそろ時間なので!―


 ……まあ、蒼空は悪くない。自分がいなくても安心だよ、と言っただけだし別に嘘は何1つついていない。イナリとしても否定する部分はあまりない。


「てれびで名前を呼ばれるのも慣れてきたが……思わぬところから出るとやはり驚くのう」

「気に入られたっぽいね」

「悪い人間ではないのは分かっとるから別にええんじゃが」


 そう、蒼空は確かにほとんど日本に居ないのかもしれないが、少なくとも悪い人間ではない。恐らくは「勇者」という異名がつくのに相応しいのであろう性格をしていることも理解はできる。まあ、次会うのがいつになるかは分かったものではないけれども。


「ま、男子、三日会わざれば……ともいう。次に会うときは、もう少し落ち着いた男になっとるじゃろうて」

「……それはどうかな……」

「無理かのう」

「無理」


 紫苑の評価では無理らしい。実際どうであるかは……次に会うときの、お楽しみである。

これにて第7章、完!

第8章からはクオリティアップのため、ちょっと更新間隔が伸びます。文字数も伸びると思います。

色々挑戦していきます。


ブックマークや評価は今後の執筆の励みになります。

まだ入れていないという方も、今回のお話を機にぜひ入れていただけましたら、とても嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
勇者wwwwこれで他意はないというのがwww
[良い点] 今のクオリティでも十分だと思いますが、楽しみに待ってます
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