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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

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お狐様、東京第11ダンジョンに挑む2

 そうしてモンスターを倒し続け……イナリはふと、気付く。

 前回モンスターを攻撃したりされたりしていたときに出ていた「数字」が、今回は出ていないのだ。

 それがどういう意味なのか、一体何故なのかは分からない。分からないが……。


(恐らくは、法則自体が変わっておるのじゃろう)


 イナリが足元のカチッという音に気付き飛び退けば、床に開いた穴から電撃が空に向けて発射されていく。明らかな罠だ。普通の人間であれば黒焦げにされそうな、そんな殺意の高いものだ。

 しかし、問題はそこではない。今の派手な電撃に触発されたのか、そこら中に青いノイズのような男女の姿をしたモンスターが現れる。

 いや、人間というよりはマネキンに近い。顔も何もなく、ただ人間の形をしているというだけの代物。そんなモノたちが人間離れした動きでイナリへ殺到してくる。


「コンニチハコンニチハオハヨウゴザイマス!」

「オゲンキデスカサヨナラタノシシシシシシシシ」

「ええい、なんとも呪いじみておるのう!」

「ビーム」


 イナリが刀を振るい、飛び出て来たアツアゲがデフォルトサイズになってビームを放つ。あっという間に砕けて消えていくノイズマネキンたちだが、数任せに一体がイナリに僅かに触れて。


「ぬっ!?」


 頭の中に0と1の羅列を流し込まれ、イナリは「喝!」と叫びそれを吹き飛ばす。今のが具体的に何であるかは分からなかったが、人間のようにイナリに脳と呼ばれるような器官が存在すれば致命的であったかもしれない……そういう類のモノだ。


「なるほどのう、呪か。『呪いじみている』のではなく、それそのものであったか」


 イナリには理解できないものだが、いわゆる脳をハッキングするタイプの電脳的な呪いである。もっともそれが効果を発揮する前に脳が壊れるかもしれないが……人間ではないどころか生命体として根幹から違うイナリには全く意味がない。


「そうであれば、やるべきことは決まった」


 迫るノイズマネキンの群れを前に、イナリは高く跳び刀身に指を這わせ滑らせる。

 そのまま浮遊するイナリにはすでにアツアゲが飛びつき肩に登っているが、ノイズマネキンたちもイナリをどうにかするべく他の個体を足場にして高く、高く上がっていく。

 ……しかし、それが届くより前にイナリの指の動きに合わせ緑の輝きを纏っていく狐月は冷たい輝きを放って。


「蝕む邪を祓え……秘剣・大典太」


 リィン、と。鈴のような音を響かせながらイナリを中心に緑の波紋が広がっていく。それはノイズマネキンたちの身体を崩し、消し去っていく。そうして消え去った後から新しいノイズマネキンたちが出てくることはなく、イナリはその場に降りて「ふむ」と頷き床へと降りる。


「なんとなく話が見えてきたのう。もしや、だんじょんを蝕む力の類かえ?」


 そう、それは「バグ」や「ウイルス」と呼ばれる類のものに似ているだろう。本来あるべきものを書き換えてしまう力。この電脳世界型ではそれが「そういう形」として出てきているのかもしれないが……そうだとして、その先にあるものは何なのか?

 イナリにそれが分かるはずもないが、そうだとすれば「これ」で終わりではない。イナリが走り出しダンジョンの奥へ進んでいけば……やがて、黒い珠を掲げる男らしき後姿が見えてくる。

 その黒い珠からは靄のようなものが放出され、展開前のキューブボスへと吸い込まれている。靄の余波のようなものが周囲に広がっているが、それがこのダンジョンの異変の原因ということだろう。

 となると、あの靄が最も多く吸い込まれているキューブボスにはどのような変化が訪れるというのか? どうであるにせよ、それを大人しく見守るつもりはイナリにはない。


「観念せい! お主の所業もここまでじゃ!」


 狐月を向けるイナリに、男は振り向かないまま……身動きすらもしない。いや、その身体は僅かに震えて。


「……選ばれたと思っていたんだ」

「ぬ?」

「神の声が聞こえて。強い力が流れ込んできて。ああ、支部長の力はこういうことだったんだと。そう分かったんだ」


 男の言葉にイナリは……それを理解する前に、もっと重要なことに気付く。


「お主……! その珠を捨てよ!」

「あの神は俺のことなんて見ていなかった。ただ、此処に辿り着きさえすればよかったんだ。だから……」


 イナリが黒い珠を狐月で弾き飛ばして……割れる黒い珠から残った靄が一気にキューブボスへと流れ込む。


「俺が、馬鹿なだけだったんだ」


 男の身体が砂のように崩れて。周囲が大きく揺れ始める。それはダンジョン自体の振動であることは明らかだが、同時にキューブボスが赤い輝きを放ち始めていた。

 あれが何かをする前に止めなければ。そう感じたイナリが狐月を構え直した瞬間、イナリの眼前にウインドウが現れる。


―警告。WARNING。危険。ダンジョンボスを乗っ取ることで【邪悪なるトリックスター】が現身を創ろうとしています―

―本物ではありませんが少なくない影響力を持っています―


「それがお主の策か。しかしのう」


 イナリの手に握られているのは、弓形態の狐月。そして……限界まで引き絞った弦と、輝ける光の矢。


「させると思うてか、この外道が」


 極太の輝ける光線が放たれて、何かを生み出そうとしていたキューブボスを一瞬で消し去っていく。


―【邪悪なるトリックスター】の力がダンジョン内から消失しました!―

―【ボス】キューブボス討伐完了!―

―ダンジョンクリア完了!―

―報酬ボックスを手に入れました!―

―ダンジョンリセットの為、生存者を全員排出します―

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― 新着の感想 ―
>なるほどのう、呪か 呪(しゅ・じゅ)のルビ付きか呪いか、ちと判断に迷いました
まぁガチるなら相手の変身完了なんて待たないよねwww トリックスターさん出番キャンセルwww
[良い点] 本来なら「危ね~!間一髪…!!」なシーンの筈ですが……瞬殺だから先に笑いが来ちゃいますねww
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