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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

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お狐様、サポート役と話す

 翌日。地球防衛隊日本支部の件はあっさりとニュースになり、常島倉庫への強制捜査もされたという話が全国区で流れていた。未登録覚醒者の件も隠蔽されずにニュースとなり、支部長自身がそうであったという話はまさに衝撃をもって伝えられていた。


―いやあ、驚きですね。まさか覚醒者排除を訴える団体の支部長が覚醒者だったとは!―

―これはいわゆる団体の乗っ取りという形になるんでしょうか?―

―いえ、どうでしょうね。実際、私たちも今この瞬間に覚醒する可能性はあります。むしろ地球防衛隊の主張に無理があったと考えるのが自然でしょう。つまり未登録覚醒者の話と繋がってくるわけですね―


 テレビではそんな話が流れているが、概ね覚醒者協会に好意的な反応を見せている。まあ、事実言っていることとやっていることが全く違う攻撃的な秘密団体の実態が一部とはいえ暴かれたのだ。その辺りの安心感もあるのかもしれない。

 しかし、不安材料もある。常島倉庫に在籍していた社員のうち、4名の行方が分かっていない。恐らくは地球防衛隊日本支部の抱えていた未登録覚醒者であると思われた……のだが。


「しっかり登録されていた、と」

「まさかですよ……いやはや、結構本格的に騒ぎを起こす準備をしていたようで」


 イナリへの事後報告ということで家に来ていた安野だが、如何にも疲れたような表情で目の下にはクマもある。安野は営業部サポート課であるはずだが、手伝いに引っ張り出されているのだろうか?


「とはいえ登録された覚醒者である以上、カードの利用履歴を調べれば足跡は辿れるはずですし、然程難しい話でもありません」

「便利な裏にはそんなものがあるんじゃなあ」

「いえ、流石に今回みたいに看過できない事態になったとき専用の措置ですし、実際にやるには幾つもの認定を受けないといけないんですよ」


 イナリも覚醒者カードは買い物にバスなど様々な場所で使っているが、そういうリスクもあるということなのだろう。とはいえ安野の言葉を信じるならば一職員が勝手に見ることの出来るものでもないのだろうが……。


「まあ、その辺はええ。その4人を捕まえれば今回の騒動も終わりというわけじゃな」

「はい、そうなります。それでですね……念には念を入れてということで『祢々切丸』を使えないか聞いて来いと言われまして……」

「無理じゃよ」

「えっ」


 安野が驚いたように固まるが、イナリとしても断りたくて断っているわけではない。


「アレは儂が見て聞いた……要は知っている事象の大元を探すものじゃ。その4人を儂は知らんし、今何かを起こしとるわけでもない。なれば祢々切丸で探すことは不可能じゃ」

「あー、ですよねえ……」

「うむ。儂は全知全能というわけでもなし。頼られて応えられんのは心苦しいがの」

「はい、仰る通りかと」

(大体のことを解決できる時点で結構全知全能に近い気はするんですけどねえ)


 そんなことを考えながらも安野は頷くが、まあ実際イナリに頼らずとも残る4人の居場所を探すのは難しくないはずだ。その辺りは安野ではなく他部署の連中が頑張るべきことだが……まあ、ひとまずこうしてイナリの家にいる間は余計な仕事もなくホッとできる。お茶を一口飲めば……これが、中々に深みがある。


「あ、これ美味しい……」

「うむ。巣鴨で買ってきた茶での。結構気に入っとる」

「あの辺、そういうお店多いですもんね」

「うむ、良い街じゃよ」

「最近では巣鴨でも狐耳流行り始めてるらしいですよ」


 言われてイナリは「むう」と唸る。確かに流行っている。というかイナリも見た。和装と狐耳が合うということなのかもしれないが、まあさておいて。


「はー……しかしここ最近、事件が立て続けですよね」

「そうじゃのう」

「とはいえ、思うこともあるんですよね」

「ん?」

「実は今までも色々起きていて、単純に気付かなかっただけなんじゃ……って。考えすぎかもですけど」

「ふむ……」


 なるほど、意外と良いところをついているのではないだろうか。イナリは素直にそう思う。今まで起きた事件のほとんどは、ずっと前から種がまかれていたものだった。たまたまそれが連続で萌芽しているに過ぎない。そう考えるのは決して間違いではないだろう。

 とはいえ、そうなると疑問もあるにはある。何故日本で事件が頻発するのか?

 それとも世界中で似たような事件は起きていて、それが表に出ていないだけなのか。

 安野に聞いてみようかとも思い、イナリはそれをやめる。ただでさえ忙しそうなのに、自分が仕事を押し付けるのは間違っている。何より、今知ったところでイナリが蒼空のように世界中を巡れるわけでもない。

 だからイナリは、安野を安心させる方向で言葉を紡ぐことにする。


「まあ、安心せい。儂に出来ることであればどうにかしてやるからの」

「そう言っていただけると助かります……」


 本当に嬉しそうに言う安野の覚醒フォンの呼び出し音がその瞬間に鳴り始める。何事かと安野は電話に出て……その顔色が、青ざめていく。


「ダンジョンに異変発生……? それも2つ同時に!?」

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― 新着の感想 ―
種なんて撒いて直ぐに芽が出るものでもないし、明確な計画性でもない限りは時間をかけた上で事を起こすきっかけ待ちに近い状態になるだろうからなぁ 今回の件で標的になったようにイナリちゃんの存在なり事件の解決…
[一言] 割と最初期から同時多発的に種がまかれていたなら、芽吹き・結実の時は当然近くなるし… 一つ事態が大きく動いたらほかにも伝播することになるし… まぁイナリちゃんは万能ではあるな
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