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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

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お狐様、事件を解決する?

 東京都台東区上野。そこに有限会社常島倉庫はある。倉庫業を中心とした物流業を行っている会社だが、比較的大きな会社であり本社ビルは10階建ての規模のものであった。

 公的な書類でも取引先や近隣住人の評価でも「ごく一般的な会社」であり、税務的な監査の類が入ろうと一点の染みも見つからないような、そんな会社の窓に一本の空飛ぶ日本刀がガラスを割って飛び込んでいった後に、空飛ぶ狐耳尻尾の巫女少女が追うように突っ込んでいく姿は、なんだか人に話すと高熱があるんじゃないかと疑われそうな光景ではあった。

 しかし一番驚いたのは、その場にいた女だろう。黒髪黒目のその女はイナリを見ると、驚愕の表情の後に笑顔を浮かべる。


「貴女は……狐神イナリさんですね? いきなり窓を割って飛び込んでくるなんて、どういうおつもりですか?」

「どういうつもり、か……」


 広い部屋だ。まるで役員室の如くだが、実際そのように使われているのかもしれない。女の姿もパンツスタイルのスーツ姿で、如何にも出来る会社員といった風でもある。

 しかしながら……秘剣・祢々切丸は確かに女を指し示している。ならば、この女こそがこの事件の首魁なのだ。だから、イナリの答えはこうだ。


「それは儂が聞きたいのう。人を惑わし、罪へと導き……何がしたいんじゃ?」

「何のお話かよく分かりません。このまま居座るようでしたら覚醒者協会に連絡致しますが」

「このお主を指しておる刀は『秘剣・祢々切丸』という儂のちょっとした技でのう」


 女の言葉を聞いた上で、イナリはそれを説明する。


「平たく言うと儂が認識し、この目で見た事象の大元を探り当てるんじゃよ。そしてそれは今、お主を指し示しておる。ついでに言うと協会本部は儂のこの技で『とある事件』を解決したこともあってのう?」

「……!」

「こういう場合はなんと言うんじゃったか……そう、確かアツアゲの見とったてれびではこうじゃったな」


 言いながらイナリは人差し指をすっと女へと向ける。そう、それは推理ドラマの探偵や刑事の如く明確な意志を込めたものだ。


「犯人はお主じゃよ」

「……ははっ」


 なんということだろうか。女は心の底からそう思う。当然バレるパターンは考えてあったが、まさかこんな風になるとは思ってもいなかった。

 だって、まさか「大元を見つけるスキル」だなんて。そんなあらゆる捜査や推理を超越したとんでもないスキルがあるなど、誰が想像できるだろうか?

 有り得ない。有り得ない。なんたる理不尽か。全ての知略や策略を陳腐化させる、横紙破りだ。


(……有り得ない。この少女は、私の神を侮辱している)


 悪辣にして神聖なるその知恵の迷路を、狐神イナリはあっさりと飛び越えてしまう。なんという、なんという悪徳。しかし、だからといってなんだというのか。未来を見通す力を持っていても世界樹が燃え落ちたように、自分がそうであるとバレたとして何が変わると言うのか。

 そう、だから計画には何の狂いもない。自分が予想より早く舞台に上がった……ただそれだけのこと。女は、自分をそう納得させていた。

 だから……笑う。


「はははっ……なるほど、面白いスキルをお持ちですね。それで? 私が首魁であればどうなさると?」

「決まっておる。此処には今協会の人間も向かってきておる。神妙にお縄につくがよい」

「いいえ、いいえ! 当然お断りいたしましょう! 此処で貴女を倒し! それを次なる策の起点といたしましょう!」


 何処から取り出したのか、女が手を振ると長い杖がその手の中に現れて。しかしその次の瞬間には、イナリがその目の前まで距離を詰めてきている。


「えっ……」

「させんよ。しばらく大人しくしとれ」


 あっさりと投げられ床へと叩きつけられた女はしかしそれでも素早く立ち上がろうとして……しかし、そこで「カハッ」とせき込む。その表情は、信じられないといったような顔だ。


「力が抜けて……何故……」

―【邪悪なるトリックスター】はお前は此処で終わりだと言っています―

―【邪悪なるトリックスター】との使徒契約が破棄されました―

―杖が貴方を裏切ります―

「何故ですか、神よ……!」


 杖が女を殺すというかのように輝いて……杖をアツアゲが蹴っ飛ばし、イナリが女にタックルするようにして一緒に転がっていく。

 瞬間、杖が爆発して。アツアゲがトドメを刺すかのように杖の残骸へとビームを放つ。


「やれやれ。神のごとき、とは言うが……今のところ、ロクなのに出会ってないのう」

「何故……何故ですか。ああ、神よ。何故……」

「うーむ……」


 壊れたようにそれだけを繰り返す女にイナリは困ったように頬を掻くが、どうにも女が「神のごときもの」に見捨てられたのだけは理解できた。


「大丈夫ですか、狐神さん!」


 強攻課と思わしき者たちを連れて飛び込んできた山口たちは、イナリが首魁と思わしき女を抱えている状況が理解できず疑問符を浮かべていたが……少なくとも常島倉庫にも捜査のメスが入り、この事件は解決……したかのように、思えたのである。

Tips:邪悪なるトリックスター

もてあそぼう、裏切ろう、たぶらかそう。

友人以外の全ては、私にとっては唾棄すべきものだから。

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― 新着の感想 ―
神でトリックスターというと、北欧神話のアイツしか思い浮かばん
速攻使徒契約切られたwww まぁ詰んでる以上、イナリちゃんに切られて一時的に干渉できなくなるのは避けた方が良いやろしなぁwww
[良い点] 使徒を含めて弄ぶ対象なんだろうなぁ。
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