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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

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勇者、オーストラリアにて

 オーストラリア、エアーズロック付近。ゲートから溢れ出てくるリザードマンの群れを、1人の男が斬り進んでいた。とんでもない実力であることは一目で分かる……やけに装飾過多な剣を振るい、黄金の鎧を纏い戦う男は何処のコミックかゲームから出てきたのかという姿ではあるが、その実力もまた現実離れしている。

 剣の一振りでリザードマンたちが真っ二つになり魔石やアイテムやらをドロップしていき、リザードマンたちの攻撃は薄い光の膜に弾かれていた。凄まじいほどの攻撃と防御……何かのスキルなのかもしれないが、それにしても凄まじい。


「あれが……日本の『勇者』か。凄まじいな」

「ああ。大袈裟だと思っていたが、こうして見ると理解できる。あれは別格だ」


 離れた場所から見守っていた覚醒者協会の職員たちがそう呟くが、この調子では待機させていた援護部隊の出番は一切ないだろう。彼1人で全てどうにかなってしまいそうだ。


「君から見てどうだ? オスカー」


 職員が近くに居た待機班の1人……オーストラリアランキング1位のオスカーにそう呼びかける。

 双剣を携えたオスカーはジープに背中を預けながら「勇者」を見ていたが、職員の言葉に「ハッ」と笑う。


「どうもこうも。見ての通りだろ? 勝てるかって話なら勿論、俺が勝つがね」

「そうか」

「俺としては今回バックアップに回されたのが不満だね。まるで俺じゃ出来ねえって言われてるみてえだ」

「……君は我が国のエースだ。万が一があっては困る。他国の覚醒者でどうにか出来るなら、それが一番だろう?」

「政治屋みてえなことを言いやがる。スーツを着ると脳ミソまでホワイトカラーになっちまうのか?」

「好きに言え。君たちが好き勝手やっている分は私たちが諸々をやらなきゃならないんだ。嫌いな政治の真似事だってやるさ」

「それがこの状況だろ? 責任の押し付け合いと情報封鎖でモンスター災害一歩手前だ。俺もたっぷり恥をかかせてもらったよ」

「……今回の事態を引き起こした連中は全員捕えたよ。2度と起こらん」

「だといいがね」


 オスカーは大袈裟に肩をすくめてみせるが、やがて「おっ」と声をあげる。


「見ろよ、そろそろ決着だぜ」


 オスカーの指し示した先ではリザードマンの大軍が全滅し、残すは巨大なボスらしき個体……「マザーリザードマン」だけだった。存在する限りリザードマンを大量に生み出すマザーリザードマンはこのダンジョンの攻略を難しくした存在であり、それゆえにモンスター災害一歩手前の状況になったのだが……まあ、実際には協会内でのパワーゲームで上位ランカーに情報が届かなかったのが最大の原因ではある。

 結果として、別件で呼んでいた日本の「勇者」にこの件を任せたわけだが、マザーリザードマンの召喚するリザードマンの群れをあっさりと切り裂き、勇者はマザーリザードマンへと迫る。


「ギシャアアアアアアアアアアアアアアア!」


 そんな技も持っていたのか、とオスカーは思わず口笛を吹いてしまう。マザーリザードマンの口から放たれた極太のレーザーは勇者のいた場所に着弾し大爆発を起こし粉塵を巻き上げる。


「あちゃー……死んだか?」

「おい。流石に死なれたら困るぞ」

「あ、いや。大丈夫そうだな。見ろ、傷1つねえぞ」


 輝く膜に包まれた勇者が輝く剣を構え、粉塵の中から飛び出しマザーリザードマンへと向かう。


「うおおおおおおおおお! ブレイブッ! ソード! オオオオオオオオオラ!」


 勇者の掲げる剣が輝くオーラを纏い巨大な光の剣と化す。それは、マザーリザードマンよりも巨大で。一目で見て凄まじい力を秘めていると分かるものだ。


「ブレイブ! スマアアアアアアッシュ!」


 ズドン、と。真っ二つに切り裂いた瞬間光がマザーリザードマンを包み周囲へと広がっていく。それは巨大な光の柱と化して、轟音と共に天へと昇っていき……それが消えた後では、勇者が巨大な魔石を抱えていた。マザーリザードマンのものであろうそれを持つ勇者が剣を鞘に納めれば、その場に銀色の報酬箱が現れる。

 完全に倒した。その明確すぎる証拠に見ていたほとんどが歓声をあげる。それほどまでに見事な勝利だったのだ。オスカーも複雑な心境ではあるが、素直に拍手を送っていた。

 やがて戻ってくる勇者に、職員が少なくとも表面上は満面の笑顔を向ける。


「いやあ、凄いですね! 貴方に任せて良かった!」

「そうかい? なら良かった!」


 用意されたパイプ椅子に座り、勇者はふうと息を吐く。まさかモンスター災害一歩手前の状況が発生していると聞いたときには驚いたが、国土が広ければそんなこともあるのだろう程度で納得している。


「それで、この後はどうするのですか? また別の国へ?」

「いや。1度日本に帰るよ。ちょっとばかり確かめたいことがあるからな」

「確かめたいこと? それはもしや……」

「ああ、こっちでもニュースになってるもんな」


 取り出した覚醒フォンのニュース画面を開きながら、勇者は笑う。


「会ってみたいからな。彼女に……さ」


 そこに映っていたのは……何処かで記者に撮られたと思わしき、イナリの写真が表示されていた。

Tips:リザードマン

トカゲ人間。マザーリザードマンが虚空からパカパカとリザードマンを生み出すせいで、今後のモンスター学会は荒れそうです。

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― 新着の感想 ―
日本ではエアーズロックという呼び名が浸透していますが エアーズロックは「ウルル」が正式名称とされており 以前に起こった現地の呼称を尊重する世界的な運動の結果 公式的にはウルルと呼ぶべきとなっているので…
戦闘狂だからどこへでもいくのか。強いからどこへでもいくのか。お人好しだからどこへでもいくのか。バカだからどこへでもいくのか まだ情報が足りないな
人災は本当に面倒だなぁ 現れる場所や距離の制約次第では後ろや頭上の死角から出てくる厄介なモンスターになりそう
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