表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

296/407

お狐様、パーティーをする3

 さておきスイーツは美味しいものである。口の中で溶けていくマカロンに、外側はカリッとしているのに中はもっちりしたマカロン。厳選されたフルーツの甘味と酸味が美味しく焼かれた生地と調和するタルト。可愛らしいショコラも美味しく、口直しのためかカナッペや小さなサンドイッチ、口の中をリセットする紅茶も置かれている。

 そして7人もいれば選ぶものも大分変わってくる。この辺りは千差万別というか好みの差というか、どれが美味しいとかではなく本当に好みの問題だ。

 たとえばイナリは小さなミニおにぎりを……イナリの好みをエリが伝えたのだろう、置かれていたそれを幸せそうに食べつつも、一通りスイーツを食べている。

 エリはマカロンが好みのようだし、紫苑はどれも満遍なく食べていてヒカルはミニタルトを全種類制覇している。月子はショコラを中心に食べているし、恵瑠はクリームを使ったお菓子が好きなようであり……タケルはどちらかというとスイーツよりもカナッペが気に入っているようだった。


「いやあ、此処の料理人は腕が良いんじゃのう」

「パティシエね」

「ぱてしえ」

「パティシエよ」

「ぱちしえ」

「うん、そうね」


 月子が早々にイナリに「パティシエ」を正しく言わせるのを諦めているが、さておき有名であるらしいパティシエの実力は、こうして実際に食べてみれば明らかであった。


「しかし、良い店じゃのう。貸し切りにしとるのが申し訳ないくらいじゃ」

「そこはまあ……仕方ないでしょ。この面子で集まろうと思ったら貸し切りにしないと余計な騒ぎが起こるし」

「それはそうだな。俺も未だに騒がれちゃうしな」


 月子に同調するようにタケルも頷くが、まあこの場に2位と元3位、新3位、10位と……エリもヒカルもまだ下の方だがランキング入りしている。恵瑠はランキング入りしていないが、9大クランのマスターの義理の娘だ。別々ならともかく、これだけ集まれば偶然を装った何者かが接触してきてもおかしくはない。それを警戒しないのは、少しばかり迂闊に過ぎるというものだ。


「らんきんぐ、のう……何故そんなものがあるのやら」


 そんなものが無ければ余計な騒ぎの種も出てこないものを。イナリがそんな想いを込めて呟けば、紫苑が「管理と示威とモチベーションの問題」と呟く。


「ふむ?」

「ランキングは広く公開されてる」

「そうじゃな」

「つまり、この国はこれだけ強いぞっていう証明になる」


 また、自分のところの覚醒者を正当に評価できているんだという全世界への発表でもあるし……評価しますよ、だからしっかり協会に登録しましょうねという管理しやすくするための仕組みでもある。


「そして大体の人は、自分が評価されると嬉しい」

「あー……それはその通りじゃのう……」


 勉強も運動も芸術すらも成果を披露し順位がついたりする。この世で評価と無縁のものは存在せず、覚醒者もつまりはそうであるということなのだろう。実際、そうして評価されることで社会的地位となったり仕事が舞い込んできたりする。

 イナリとて有名になったことでコラボふりかけの話が舞い込んできたのだから、それについては理解できるところだ。


「他にも強い目的があれば上位を目指す。つまりそういうこと」

「紫苑は何かあったのかの?」

「ん、まあね。ダメだったけど」


 紫苑の場合は水中適応の新世代覚醒者としてランキングを駆けあがることで、水中で戦うことも無茶ではないのだと、新世代覚醒者であれば出来るのだと示したかった。

 まあ、結果としては「あいつがいれば充分だ」となってしまったのだが。結果として紫苑は今3位だ。こればかりはもうどうしようもない問題なのかもしれない。


「ま、そんな感じ。あとは上がる気が無くても上がるのもいる」

「俺のことか。まあ、そんな感じだったけどな」


 タケルも言いながら苦笑するが、タケルの場合は皆がタケルに頼るせいで貢献度がガンガン上がってランキングを駆けあがってしまった例だ。勿論その中で強さが知れ渡ったというのもあるのだが。


「ま、ランキングが必要なこともあるってことよね。私の場合も2位になるくらい貢献したからこそ護衛がついてるってのもあるわ」


 実際、月子は世界中がその才能を欲しがるほどに技術の発展に貢献している。他の国であれば1位になってもおかしくないほどだ。それでも、1位になっていない理由は、ただ1つ。


「……でも、そういう貢献だなんだってのを吹っ飛ばすのが今の1位。実際日本のイメージを上げてるから貢献もしてるんだけど……」

「あー、俺も1度会ったことがあるな」

「ボクも」


 月子もタケルも紫苑も、一様に渋い表情だが……そんな3人にイナリは首を傾げてしまう。どうにもランキングで負けたのが悔しいというわけでもなさそうだ。


「何か問題がある人物なのかえ?」

「問題っていうか……」

「まあ、問題か?」

「すごく問題」


 月子たちは顔を見合わせると……やがてタケルが月子と紫苑の圧に負けて「あー……」と声をあげる。


「戦うの大好きなんだよ。だからホイホイ海外にも行くんだけど……だから、狐神さん10位になっただろ? たぶん来ないと思いたいけど……一応気をつけたほうがいいとは、思う」

「いきなり『俺とバトルしようぜ!』とか言ってくるから。断ったけど」

「うーむ……」


 タケルと紫苑の話を聞くに、日本1位の「勇者」は相当変な人間らしい。そんな事実を再確認しながら、イナリはお茶を一口飲むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『お狐様にお願い!』2024年8月10日発売!
『お狐様にお願い!』1巻書影
各種書店様でも 【予約受付中!】
― 新着の感想 ―
よかった。 今まで出てきたトップランカー達、前評判の割りにはまともな人達(ちょっと個性的なくらい)だったからトップもそうかと思ってたら期待できそうなキ◯ガイ臭い(笑)。 やっぱりなろうで勇者と付くなら…
>この国はこれだけ強いぞっていう証明になる とは言っても国内ランク。お山の大将だった可能性もあるから、国際ランクのほうが信頼できる そういやこの世界で国際ランクって聞いたことないかも
勇者はバトルジャンキーかぁ 一試合ぐらいで済むあっさりしたタイプか満足するまでなねっとりしたタイプかで面倒さが変わるなぁww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ