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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

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お狐様、パーティーをする2

 ちなみに普段は普通のこのカフェも、自由に好きなスイーツを取れるように、そして座って歓談できるようにバイキング方式になっているが……実のところスイーツバイキングは最近よく見る手法ではある。並んでいる色とりどりのお菓子はイナリには見たことのないものが多いが……唯一、テーブルの上に置かれたホールケーキだけはイナリにもケーキだと理解できた。


「美しいけえきじゃのう」

「そうね」


 月子は言いながらサクッとケーキにナイフを入れ切り分けると、イナリに渡してくる。


「おお、ありがとうのう。では儂も」

「ちょっと、なんで私より上手いのよ……」


 月子の見様見真似で月子より上手く切り分けてみせるイナリだが、そこはまあ……さておいて。切り分けられたケーキを一口含めば、甘さが少し控えめの軽いクリームが口の中で溶けていく。スポンジとスポンジの間に挟まれたイチゴも上質で、クリームに合う甘酸っぱさの丁度良い……どちらかというと甘みが強めのイチゴだ。あまり酸味が強いとそればかりに意識が行くことを考えると、良いイチゴを仕入れているのが分かる。全てが調和しており、いわゆる「夢見る甘さ」をしっかりと備えたケーキはまさにプロの仕事だ。


「……素晴らしい。けえきとは、こんなに凄いものだったじゃろうか」

「此処が凄いんでしょうね。流石にこんなのはその辺じゃ売ってないわよ」


 月子も驚いたようにそう声をあげるが、実際に美味しいケーキだ……特にクリームが完璧だ。素材だけなら揃えられても、クリームというものはどうしても店の味が出る。あまり甘すぎるものは苦手な月子でも、これならば食べられる。


「あ、それとね」

「うむ」

「ランキング自体がたいしたものじゃないっていう考え自体は本音なんだけどね」


 言いながら、月子は言葉を探すような表情になる。なんと説明すればいいのか……と。そんな感じであった。


「……一応、気をつけたほうがいいと思うわ」

「何がじゃ?」

「ランキングで高い位置にいるってことは、いわばその国の覚醒者の代表になるってことだから。色んな奴に目を付けられるわ。私が護衛居ないと動けなかったり、勇者の奴が世界中飛び回ってるみたいにね」


 まあ、「勇者」の場合は本人が好きでそうしているから別にいいのだが、ランキングが上がるというのは、上がってからしか分からない苦労を味わうということでもある。


「うむ。心に留めておこう」

「そうしなさい。何かあったら協力はするから」

「俺もそのときは協力するよ」


 飲み物を3人分抱えてやってきたタケルが、そう微笑み飲み物を置いていく。月子の前にはリンゴジュース、イナリの前にはアイスグリーンティー、そしてタケルはアイスコーヒーだ。


「イナリはともかく、よく私が好きなの分かったわね」

「さっき話してた間にチラチラ確認してたの見えたから。合っててよかった」

「ふーん」

「タケルは気が利くのう」

「俺なんかまだまだだよ。ほら」


 タケルが指し示す先では、紫苑とヒカルのお皿にエリが映えるくらい綺麗にお菓子を盛っているのが見える。請われたのか自主的にやっているのかは分からないが、紫苑もヒカルも楽しそうだ。


「敷島さん……だっけ? 彼女は凄いよ。2人とも警戒心強そうなのに、あっという間に仲良くなってるからね」


 言われてイナリと月子は顔を見合わせ、やがて「ああ」と頷きあう。


「そうじゃそうじゃ、エリの苗字は敷島じゃったな」

「急に言われると分かんないものね」

「……2人がそれって、距離の詰め方に才能あるのかなあ」


 実際、エリは比較的誰とでも仲良くなる才能があるように思える。草津のときに月子の護衛についていたのもそうだが、とにかく距離を詰めるのが速いのだ。


「まあ、確かに理解できる部分はあるのう。儂ともエリのほうからじゃし……」

「あー、そういえば私もそうね。なんか本部職員と仲良くなってて、そこから……」

「ああいう風に色々出来るし、人付き合いって結構色々な能力要るんだなって思うよ」

「別にあそこまで出来る必要はないと思うが」


 エリの場合は趣味でメイドをやっている結果という気がイナリにはするが、イナリが趣味でメイドを……まあやらないが、やったとしてエリのようになるかといえば相当に疑問がある。そのエリだが、イナリたちの視線に気付いたのだろうか。綺麗に盛ったお皿……ヒカルや紫苑のものとは別の皿を持って机までやってくる。


「すみません。ちょっと調子に乗って盛り過ぎちゃって……良かったら手伝っていただけたらなあって」


 そう言うエリの持っているお皿には、4人で食べても丁度話しながらつまめる程度の、そんなスイーツがほんの少し多め程度に、そして綺麗に盛られている。マカロンや一口タルトなどが盛られた皿は、恐らくはパティシエのオススメであろうものが選ばれ載せられている。種類も数も「盛り過ぎ」というよりは話に夢中になっているイナリたちと食べるために持ってきた……というほうが正しいようにも見える。


「こういうところか」

「こういうところね」

「こういうところじゃな」


 頷く3人にエリが完璧なスマイルを浮かべていたが……まあ、つまりそういうところであるのだろう。

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― 新着の感想 ―
苗字か名前、普段読んでない方が出てくると一瞬あれ?ってなるよねぇww エリちゃん凄いなぁ
[一言] そのうちランカー上位陣によるエリを推すクランが出来上がるのでは…?
[良い点] エリさんみたく人間関係の潤滑油になれるコミュ強者は、どこでも重要性高いんだよなぁ…。
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