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【2/15 書籍3巻発売予定】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第一章

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お狐様、加減して暴れる

 クラン「黒い刃」本部。東京の一等地からは少しズレたところにあるが、それでも今の東京に本部を所有することはかなりのステータスであり、「黒い刃」はその辺りの見栄には敏感だった。

 そういうところから整えることで、立派なクランだと装えることをよく知っていたからだ。

 たくさんの金を投入することで小規模とはいえビルを丸ごと所有する彼等ではあるが、その中は今大騒ぎであった。


「いいから寝てる連中も叩き起こして集めろ! 狐女が……『黒い刃』をナメやがって!」

「そうですよ。やっちまいましょうマスター!」


 一体どのようにイナリのことを伝えたのか……イナリに投げられ先程電話で宣戦布告を受けた男は、クランの主であるクランリーダーの側でペコペコとしていた。だが、それが気に入らなかったのだろうか、クランリーダーは男を裏拳で殴って吹っ飛ばす。


「ぶべっ!?」

「大体テメエがそんなガキにナメられたからこんな調子のらせたんだろうがよ!」

「す、すみません」

「クソがっ! 今から乗り込むだあ!? 此処を何処だと思ってやがる! 痛い目見るくらいじゃすまねえからな……!」


 この覚醒者が幅を利かせている時代、犯罪組織のようになっているクランも多い。「黒い刃」もその例に漏れず、旧時代であれば確実に違法であった利率の金融業を含む商売に手を出しているクランであった。人の世の常識が1度徹底的に壊れた今だからこそ出てきた連中とも言えるが……そうやって伸び伸びと生きてきた彼等であるがゆえに、余計なところで面子がどうのという「どうでもいいこと」にこだわってしまった。

 だからこそ。下の階から響いてくる喧騒の「種類」が変わったことにも気づかなかった。

 そんなことは有り得ないと、そう思っていたから。

 だから、気付かなかったのだ。今まさに、1階の玄関口に覚醒者協会の車に乗ったイナリが乗りつけてきたことに。

 クランリーダーが気付かないままに1階では、その車の到着にザワついていた。

 当然、そこから降りてきたイナリを見てさらに大きくザワつく。まさか先程写真を見せられたばかりの相手が来るとは思わなかったのだ。しかし、そのイナリ本人は薄い笑顔をその顔に浮かべたままだ。


「おお、おお。此処が『黒い刃』とかいう連中の本拠地じゃな?」

「て、てめえ……このクソガキ。協会の車で来やがって、威嚇のつもりか!?」

「いやあ? 彼等は今日これから起こることを何も見ていないことになっとる」


 言いながら、イナリは男にクイッと手招きしてみせる。


「じゃからまあ、怖がらずにかかってくるとええ」

「こ、このクソガキィ!」


 男が振り下ろしたのは、鞘に入ったままの覚醒者用の剣。腕の1本くらい折っても構わないと、そんな態度が透けて見える一撃で。


「……へ?」


 次の瞬間、男は宙を舞っていた。いつ投げられたか、どのように投げられたのかすら分からない。

 合気道。そんな言葉が男の中に浮かんだときには、もう地面に叩きつけられて「けはっ」と肺の空気が全部出る音を響かせていた。


「すきるとは便利じゃのう。使おうと思った瞬間に出よるわ」

「こ、こいつ格闘家だ!」

「囲んで撃て!」


 魔法使いや弓使いといった遠距離ディーラーがイナリに武器を向けて。しかし、イナリがそこに居ないことに気付いて「えっ」と声をあげる。

 そして1人の弓使いは、気付く。自分の目の前で自分を見上げている、狐耳の美少女を。


「ぐがっ!?」

「いかんのう。お主等近距離に弱いんじゃろー? そんな立ち止まっとっては殴ってくれと言うとるようなもんじゃ」


 突きあげるように繰り出された掌で顎を殴られ、弓使いの男が倒れて。その時にはもうイナリは次の遠距離ディーラーを殴り飛ばしている。それだけではない。イナリが普通ではないとようやく悟った近距離ディーラーたちが武器を抜き襲い掛かるが、それも片っ端から投げられ吹っ飛ばされていく。


「何やってんだ! そんなガキにいつまでもげぶえっ!」


 偉そうに指示をしていた男がイナリの足払いを受けて背中から地面に叩きつけられる。


「こ、この……げふっ!」

「おうおう、勇ましいのう。しかし悲しいかな、お主は今、そのガキに足蹴にされておるのう?」


 丁度胸元辺りを踏みつけられた男は、身体を起こそうとしても起こせないことに気付いて焦りを感じ始める。


(か、勝てねえ……なんだこのガキ。素手で俺たちを……!? 有り得ねえだろ!)

「ち、チクショウ! お前1人で全員倒せるとでも思ってんのか!?」

「うむ。容易いのう」

「なっ……!」


 男を踏みつけたまま、イナリは微笑む。目が全く笑っていないままに、冷たい怒りをにじませて。


「儂に狐月を使うまでもないと思わせる時点で、勝負になっとらんのじゃよ」


 そう、今回の件に挑むにあたり「人死にが出ないようにしてほしい」と言われているし、イナリはそれを忠実に守るつもりだった。そうでなければ、この場で目の前のビルに弓形態の狐月でビルが粉々になるまで矢を撃ち込んでいる。


「とはいえ、少々仕置きせねばならんからのう? まずは小娘1人に総がかりで負けた木偶の坊の評価でも贈るとしようかの」

 

イナリ「まあ、約束は約束じゃしのう」

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― 新着の感想 ―
約束してなかったらビル粉々にしてたのかぁ……某作の魔術工房みたいなことになるところだかwww 怒ったイナリちゃんかっこいい!煽り好いぞ!
[良い点] >>「おうおう、勇ましいのう。しかし悲しいかな、お主は今、そのガキに足蹴にされておるのう?」 この……ケモガキッ……!!(感謝のサムズアップ)
[一言] 立ち止まるのは撃つ時だけってイナリの思考は実戦的だねぇ
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