表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

289/407

お狐様、駒込に行く5

「あ、帰ってきましたね。お帰りなさい!」

「お帰りなさい狐神様!」

「ううむ、固定ダンジョンじゃったか。面倒なことになったな」


 イナリがダンジョンの外へ転送されてくると、エリに恵瑠、武本……そして覚醒者協会の職員や武本武士団の面々が転送場所から少し離れた場所で見ていた。そして今回のダンジョンが固定ダンジョンであったことに覚醒者協会から派遣された職員たちがザワめき始める。


「こ、固定ダンジョン……?」

「東京第11ダンジョンってことか⁉」

「大変なことになったぞ。すぐに本部に連絡だ!」


 そう、東京には現在10の固定ダンジョンがある。この駒込のダンジョンが11個目の固定ダンジョンとなるのであれば、間違いなく激震が走る。とはいえ、イナリにとってはその辺はよく分からない話だ。


「ただいまじゃ。待っていてくれたんかの? 休んどればええのに」

「そんなことして狐神様が戻ってきたときにご挨拶できなかったら寂しいじゃないですか」

「そうですよ。そりゃあ、他の人であれば時間かかるから休んでようかって話にもなりますけどね」

「う、うむ」

 

 恵瑠とエリの勢いに押されてイナリはそう頷くが……そんなイナリの目の前にシステムメッセージが現れる。


―称えられるべき業績が達成されました!【業績:新規ダンジョン初クリア】―

―報酬ボックスを回収し再計算中です―

―報酬ボックスを手に入れました!―


 そうしてイナリの手に現れた新しい報酬箱に……イナリが「ひょっ⁉」と驚きの声をあげて。


「わあ……!」

「まあ!」


 エリと恵瑠がそれぞれの嬉しそうな声をあげる。そう、その箱は……ノイズイナリっぽい何かのイラストがプリントされた報酬箱だったのだ。恐らくはキューブボスがイナリっぽい何かであるノイズイナリに変化したからだろう。リセットしたからには再度イナリが潜るなどしなければ出てこない柄の包装紙ではあるだろうか?


「あ、すみません。資料に残しますので写真を撮らせていただけますか?」

「うむ」


 職員に報酬箱を渡すと、職員は慎重に台の上に置いて写真を撮り始めるが……その間にエリと恵瑠がイナリの両端を挟んで嬉しそうに声をあげる。


「ねえねえイナリさん! あれ何ですか⁉ どんなボスが出たんですか⁉」

「狐神様に似ているような気もしますけど違ってますよね!」

「おお、まずは落ち着くのじゃ……えーと、どう説明したものか」


 なんだか数字がポンポン出てくるよく分かんない場所を進んでたらイナリっぽいボスが出てきた。そんな感じのことを一生懸命説明するとエリと恵瑠はイナリを挟んで顔を見合わせる。


「ボスが攻略者に合わせて変化するってことですかね……?」

「だとすると、リセットされた以上はこの包装紙は2度は出ない可能性が高いということに」


 イナリを挟んだままエリと恵瑠は頷きあうと、そのままイナリを真ん中にザッと向き合う。その表情は真剣そのもので、負けたくないという気合が伝わってくる。


「恨みっこなしですよ……!」

「ええ、真剣勝負です!」

「何がじゃ……?」

「「最初はグー!」」

「ジャンケン……!」

「ポン!」


 エリがグー、恵瑠がパー。その場に崩れ落ちるエリと喜びのあまりジャンプする恵瑠にイナリが疑問符を浮かべて。しかし、そこで恵瑠が真剣な表情をイナリに向けてくる。


「狐神様! お願いがあります!」

「う、うむ」

「あの報酬箱の包装紙……私に頂けませんか⁉」

「……中身ではなく、かの?」

「中身は狐神様のものですので」


 何かと思えば包装紙の交渉権を争っていたのかとイナリはようやく理解するが、何故そんなものが欲しいのかはサッパリ分からない。


「まあ、ええがのう。ほれ、職員が戻ってきたし剥がすとええ」

「はい!」


 恵瑠は職員から報酬箱を受け取ると、丁寧に包装紙を剥がし始める。僅かなミスも許されないというかのような、本当に真剣な表情で包装紙を剥がし……僅かなミスもなく剥がし終わった包装紙を見てパッと顔を明るくする。


「ありがとうございます、狐神様!」

「うむ。恵瑠が嬉しいなら何よりじゃ……」


 そうして残った報酬箱がまるで余り物のような気分になるイナリだが、気を取り直して報酬箱を開封すると……それは何やら、小さなバッグのようなものであった。ダンジョンで出てきたカードを丁度入れられそうなそのバッグを見て、エリが「カードホルダーみたいですねえ」と声をあげる。


「かあどほるだあ?」

「ゲームのカードとか入れるやつです。見たことありません?」

「子供たちがカードを箱に仕舞っとるのは見たがのう」

「そういうやつです。これは何かの革製に見えますけど……ほら、裏にベルト通しが」

「ふむ……とすると、このかあどを仕舞うんじゃの」


 言いながらイナリがカードを1枚取り出すと、エリが「おー」と声をあげる。


「こんなものも出るんですね。でも何に使うんでしょう……?」

「げえむじゃないかのう」

「ジョブにカード使いでも出る前兆とかですか? とにかく鑑定してみないと分かりませんけども」

 

 とにかく鑑定してみなければ分からない。鑑定役の職員が走ってくるのを、イナリはいつもの通りに、そしてエリはワクワクした表情で見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『お狐様にお願い!』2024年8月10日発売!
『お狐様にお願い!』1巻書影
各種書店様でも 【予約受付中!】
― 新着の感想 ―
推しのグッズ・一点モノ。再販無し。こりゃあ血を見るでぇ…!
これからも挑戦者に合わせてボスが変わるならコレクターが大変だなぁ 人気の覚醒者を模倣したボスのカードとか高額取引されそうww
[一言] カードキャプターイナリ!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ