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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

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お狐様、駒込に行く2

「ああ、今回はわざわざすまなかったな」

「気にするでない。武本も思うところがあったんじゃろ?」


 イナリがそう言えば、武本はゲートへ視線を向ける。その視線は不安を含むものだが……それは、ゲートそのものに対するものだろう。端的に言えば、このゲートは「大きすぎる」のだ。

 建物の2階どころか3階ほどの高さにはなろうかという巨大なゲートは、如何にも普通ではない。


「熱海のげえとも、これほど大きくはなかったのう」

「あー、石像系モンスターが出たっていうアレですね?」

「うむ」


 よくよく考えてみれば明らかに身体の大きさに合わないゲートから巨大なモンスターがどうやって出てくるのか分からないが……もしかすると、モンスターが出てくる時にはゲートが広がるのかもしれない。さておいて。


「これほどに巨大なゲートは、今までに数例しかない。そしてそれは概ね壊滅的な被害をもたらすものだった」


 そう、かつての時代……覚醒者たちが弾圧から逃げ出した国で巨大ゲートから出てきたモンスターが国土のほぼ全てを蹂躙したことがある。今ではそのモンスターは何処かに消えたというが……退治されたわけではない。未だに世界の何処か……恐らく海中にいるモンスターを生み出したゲートは、未だそこに固定ゲートとして存在している。

 通称「ベヒーモスゲート」。未だ未攻略のゲートの1つであり、巨大ゲートは今のところ100%そういう類のゲートであるとされている。

 

「とはいえ、ボスを倒さなければいけないわけではない。事実、東京第1ゲートも未だ未攻略じゃが有望な資源入手先となっている」

「此処もそうなるかもしれん。しかし何が起こるか分からん未知のゲートにはむやみに突入できん、か」

「ああ。話は聞いているが、突然空中や水中に放り出されてはたまらん」

「確かにのう」


 紫苑のような水中適応の覚醒者や、今は空中適応の覚醒者もいるが……全員がそうというわけではない。そういう意味では、その両方を攻略したイナリを呼ぶのは正しい対応であるとはいえるだろう。


「狐神殿がそういった初見殺しの臨時ゲートをクリアした話は聞いている。ならば今回何があっても対応できるのではないか……と思ったのだ。勿論、危険かもしれないと分かって送り出そうとしているのは謝罪するが……」

「いやあ、適材適所じゃろ。こういうのは元より命を担保に報酬を得るもの……そこに身を置く以上、とやかく言うのも間違っておるしの」

「そう言って頂けると有難い」


 頭を下げる武本に「ええよ」と手を振ると、イナリはエリへと振り返る。


「と、いうわけでの。思ったよりあからさまに危険そうな雰囲気じゃ。エリは待っておってくれるかの?」


 普通のゲートであればエリを連れていくつもりだったが、こんな如何にも「何かあるぞ」という雰囲気のゲートでは、イナリとしても他の誰かを連れて行くのはためらってしまう。そしてその辺りはエリも分かっているのだろう、素直に頷く。


「分かりました。とはいえ、イナリさんもお気をつけて」

「うむ。まあ、2度も空に放り出されることはないと思いたいが……」


 とはいえ、気をつけなければならないだろう。見守る面々の視線を感じながら、イナリはダンジョンゲートに飛び込む。そうすると、そこは真っ黒な……けれど妙に明るく、あちこちにカラフルな光の線が走る不可思議な空間であった。


―コガミイナリさんがログインしました!―


「な、なんじゃあ?」


 空中に現れた変なウインドウがそのまま何処かに飛んでいくが、どうにもシステムによるものではなくダンジョンギミックであるようだ。

 赤や緑、青や黄の光の線も真っ黒な地面や壁、遥か高くにある天井を走っていくが……空中に同じような光の走る黒いキューブが浮いていたり、光の珠が飛んでいたりとおかしな雰囲気だ。

 壁の中に埋め込まれているモニターのようなものには0と1の2つの数字が無数に表示され流れていき、まるでおかしな夢の中に入ってしまったかのようだ。


「ううむ……アツアゲのいたところはまだ理解できたが……これはさっぱり分からん」


 エリがいれば「電脳世界」とでも表現したかもしれない。勿論「そういう風な雰囲気を持つダンジョン」であるのかもしれないが……あるいは電脳世界というものを視覚化すればこうであるのかもしれない。しかしそんなものをイナリが理解できるはずもない。

 これが一体何なのか理解できないままにイナリは歩くが……そこに周囲からノイズが集まるようにして何かが像を結ぶ。

 緑色に光る身体を持ち、角を持つ悪魔のような姿をしたソレは、しかし何処となく非生物的な姿をしている。たとえるなら、昔のゲームの画面から飛び出てきたような……そんな姿だ。


「ピガガガ、キュウッ!」


 イナリが即座に放った狐火を受けると「1284」というポップな数字を身体の上から発生させてノイズとなって消え去っていく。魔石がその場に転がるが……拾い上げて、イナリは大きな疑問符を浮かべる。


「わ、分からん……なんじゃ、これ?」


 全く理解が出来ない。困ったイナリは……今通ってきたばかりのゲートを振り返っていた。

 

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― 新着の感想 ―
ギミックがあるタイプのダンジョンだったらイナリちゃん凄い苦戦しそうwww
[一言] いかん、大多数の年配者が苦手なハイテクだ。
[一言] これがウワサのパルワールドってやつか…?
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