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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

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お狐様、駒込に行く

 そうして駒込のバス停で降りると、そこでは恵瑠が武本武士団のメンバーと思われる男女と一緒に立っていた。着物袴姿の恵瑠とサムライや陰陽師っぽい姿の面々を見るとさながら時代劇の如くだが、その辺りは鎧や剣、槍などを着けた人間が何処にでもいる現代では今更だ。


「狐神さま、お待ちしておりました」

「おお、恵瑠。まさか此処でずっと待っていたのかえ?」

「はい。万が一行き違いがあってはいけませんから」

「なんとまあ、真面目な子じゃのう」


 ニコニコと微笑んでいるイナリに恵瑠も嬉しそうだが、すぐにその表情は引き締められる。此処に恵瑠がいるのは、イナリと親交を深める目的ではない……やるべきことをやらなければならないのだ。


「では、早速ですがご案内致します」

「うむ、よろしく頼む」


 駒込バスターミナルは旧駒込駅の敷地を中心に出来たものだが、大きく整備されて「かつての時代」とは大分異なっているという。まあ、それに関しては何処も同じだが、隣接する巣鴨とは違い普通の都市といった風情であった。東京の中心部ほどビルが密集しているわけではないが、どちらかというとかつての時代の空気を残しているのだろう。住宅の他に雑居ビルもあり、車の交通量も多めだ。


「この辺りはまた巣鴨とは趣が違うのう」

「そうですね。というか巣鴨が特殊といいますか……」

「あー、和風の街なんですよね。私遊びに行ったことあります。和風メイドで」

「めいど要素は無くならんのじゃのう」

「それをとるなんてとんでもない!」

「さよか」


 まあ、それはさておいて駒込には小規模のクランも存在はしているが武本武士団に及ぶはずもない。駒込の住人としても何かあれば武本武士団に相談を持ち込むことも多く、実質武本武士団が担当する地域のようになってしまっている。

 実際、覚醒者協会の駒込出張所から巣鴨出張所に話が持ち込まれることも多い。とはいえ、この辺りにはダンジョンもなく、何も問題はない……はずだったのだ。


「そこに現れたのが今回のダンジョン問題です。臨時ダンジョンであればクリアすれば終わりですが、固定ダンジョンともなれば種類によっては利権を巡る争いも起こるのではと父は懸念しています」

「利権、のう」


 確かに現代ではダンジョンとは鉱山のようなものとして扱われている側面もある。新しいエネルギー源ともなっている魔石。その他ドロップ品として存在するモンスター素材も新素材として……一部危険なものは覚醒者専用ではあるが色々な場所に使われている。

 そうした需要があるということは供給が必要とされるわけであり、ダンジョンの優先攻略権……つまり大規模攻略の担当を狙い人気のアイテムが出るダンジョンは毎年熾烈な入札合戦が行われる。

 これはダンジョンで何かあった場合にすぐ対応できる「地元のクラン」という条件があるため、結果としてダンジョン付近に幾つものクランが移転してくるといったような状況も起こる。

 逆に不人気のダンジョンの場合はクランが離れていく傾向があるわけだが……つまり、そういうことが起こると武本は懸念しているわけだ。


「武本はどう考えとるんじゃ?」

「場合によるそうです。武本武士団に必要な装備が出るようであれば入札に参戦も考えるとか」

「ふむ。まあ、そんなところじゃろうの」


 下手に誤魔化さず言うところは好感が持てるとイナリは思う。まあ、実際どんなものが出るかは入ってみなければ分からないが……そうして歩いていくと、何やら公園らしき場所に人だかりが出来ているのが見える。


「離れてください、危険です!」

「離れてー! 今公園には入れません!」


 それは武本武士団と……どうやら覚醒者協会の職員などによる封鎖であるようだった。

 公園の入り口はフェンスで封鎖され、人が入り込まないようにあちこちに人員を配置している。

 こういったダンジョンゲートが発生した場合の基本的な処置だが、スマホで写真を撮っている者などが多く居る。


「おお、人が集まっておるのう……」

「行きましょう」


 その中を突き抜けるようにイナリたちが歩き出すと、野次馬たちの視線が一気にイナリたちへと向く。


「え、イナリちゃん⁉」

「ほんとだイナリちゃんだ! すげえ!」

「イナリちゃーん!」


 イナリは笑顔で手を振るが、もみくちゃにされては困るので武本武士団のメンバーやエリ、恵瑠までもが壁になってイナリをフェンスの奥へと入れ、一気に駆け込んでいく。


「ふう、やっぱり人が集まってきてしまっていましたね」

「車の方が良かったんじゃないですか?」

「車だと囲まれてしまうとどうしようもならないので……」


 そんなことを言いながら公園の奥に進んでいくと、何事かを話し合っていた武本の背中が見えてくる。どうやら覚醒者協会の職員と話し合い中のようだが、恵瑠が声をかけると笑顔で振り返る。


「お父様!」

「おお、恵瑠! と、狐神殿も! そちらは使用人被服工房の?」

「はい、使用人被服工房のエリです!」

「この前ぶりじゃのう、武本」

 

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― 新着の感想 ―
地方の方にアンデッド系とかの不人気な固定ダンジョンが出来たら凄い大変そうだなぁ
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