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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第七章

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お狐様、物件を見に行く2

 何事だろうかと思いつつも、イナリは電話に出る。この辺りはもう一切の迷いがない動きだ。少なくとも電話機能に関しては覚醒フォンをある程度使えているといっていい。ちなみにアプリの類はあまり使わないのでほとんど分からない。さておいて。


「儂じゃよ」

『おはようございます、狐神さま。突然申し訳ありません』

「ほっほっほ、何を気にしとるんじゃ。儂とお主の仲じゃろう」

『あ、え……えへへ、ありがとうございます』

 

 電話越しでありながらほんわかとした空気が流れる中で、恵瑠の「あっ」と思い出したような声が電話口から聞こえてくる。


『そうだ。実はですね、父から狐神さまに伝えてほしいと言われたことがありまして』

「うむ? 武本からとな?」

『はい。それが……』


 恵瑠との電話を終えるとイナリは「ふむ」と思案気な表情になり、エリが何かあったのかとその顔を覗き込む。


「何か難しい話でしたか?」

「まあ、難しいといえば難しいが、深刻な話ではないのう」


 それは巣鴨の近く……駒込にダンジョンゲートが現れたという話であった。知らせを受けてすぐに武本武士団のメンバーが出撃し一般人が入り込まないように封鎖したが、まだ臨時ダンジョンか固定ダンジョンかは分かっていない。


「ええ? ダンジョンですか? でもそれで、どうしてイナリさんに?」

「うむ……まあ、儂の入った臨時ダンジョンの話を聞いたんじゃろうのう……」


 武本は9大クランの1つ「武本武士団」のクランマスターだ。一般向けには公開されていない重要な情報も手に入れることが出来る。イナリが攻略した水中ダンジョンや空中ダンジョンの話も聞いているのだろう。何があるか分からないと警戒するのは当然であり、だからこそ1つの依頼があったのだ。


「もし余裕があれば攻略に手を貸してほしい、と言われてのう」

「あ、受けるんですね?」

「うむ。すまぬのう、エリ。折角今日は一緒に来てもらったというのに」

「え? 何言ってるんですか」


 申し訳なさそうなイナリにエリはキョトンとした表情を向ける。何を言っているのか分からないとでも言いたげな表情だ。

 

「私も一緒に駒込に行くに決まってるじゃないですか」

「ひょ?」

「お友達が危ない場所に向かうからはいさよならなんて、そんな薄情な真似はメイドにはNGです!」

「えぬじい」

「絶対ダメってことです」

「おお、なるほどのう」


 納得するイナリだが、同時になんとも複雑な気持ちになる。まあ、海でも空でもイナリがどうにか出来る。流石に一瞬で殺すようなものは出てこないと信じたいが、もしそんなものが出てきたら守り切れるかは不明だ。


(とはいえ……あれらは儂でなくとも攻略できるものであったのかもしれん)


 たとえば水中ダンジョンは紫苑であれば比較的楽にクリアできたかもしれない。空中ダンジョンは……イナリには分からなかったが、何らかの攻略手段があったかもしれない。

 ダンジョンとシステムが何らかの密接な関係にあることは疑いようもなく、攻略した人間に報酬を与える性質から考えても「ダンジョンを攻略させよう」という意図があるとしか思えない。その先に何を見据えているかは未だ不明ではあるのだが……。


(うむ。まあ……どうにかなるか)

「よし、分かった。一緒に行くとするかのう」

「はい! ではすぐに行き方を調べますね!」


 やはりタクシーは来ないので近くのバス停まで歩いていくが……その途中、タクシー会社の跡地と思わしきものの横を通り過ぎる。

 電車という交通手段がなくなったこの現代、タクシーが消えるということは相当に不人気ダンジョンの影響が大きいのだろう。同じダンジョンがある場所でも、熱海や草津、あるいは川口などとは随分と差がある。


「世知辛いのう……本当に世知辛いのじゃ」

「そうですね。とはいえ、似たようなことは世界中であるらしいですけど」


 古びたバス停の看板を見つけ、エリが「あっ」と声をあげる。


「もうすぐ来るみたいですよ」


 駒込へ行くバスが、ちょうど5分後に到着予定だ。……そう、電車の代わりに大幅に増えたバスは今や主要交通手段だが、かつての時代と比べても相当に便利になっている。国営や県営、市営、覚醒者協会が運営するバスに加え覚醒企業が運営するものもある。

 だからこそ、人の居ないような場所でもバスが来る。イナリたちが待っていたバスも概ね時間通りに到着し、イナリたち以外には乗り降りする人も居らずそのまま出発する。というか、他の乗客の姿は無かった。


「このバス、たぶん協会のバスですね」

「そうなのかえ?」

「はい。素材が明らかに違いますもの」

「そういえばそうじゃのう」


 イナリも何度も見た「人造アーティファクト」なのだろう。薄くはあるが魔力の気配を感じる……なんらかのモンスター素材を混ぜ込んだ金属で作ってあるのかもしれない。


「協会とか覚醒企業のバスだと、そういう素材使えるから安心だって人気らしいですよ」

「まあ、そうじゃろうのう」

「その分お値段もちょっと高いですから、差別化はできてるらしいんですけど」


 まあたとえば都内を巡るバスであれば安心感を求める必要もないだろう。そんな風に住み分けているのだろうが……それもまた、ある意味で現代らしい光景と言えるのだろう。

遠距離バスの場合は覚醒者協会や覚醒企業のバスである可能性が高いらしいです。

ガラスも超強いから徹甲弾やロケットランチャーくらいじゃ傷1つつかないぞ!

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― 新着の感想 ―
復興されないままとか移動で人が居なくなったりで廃れたところは結構多そうだなぁ
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