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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第六章

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お狐様、草津の危機に挑む

 午前7時。イナリたちを乗せたヘリは朝日の輝く中、草津空港を飛び立った。あとはこのまま東京まで飛んでいくだけだが……月子は寝足りなかったのか、中でぐうぐうと寝息をたてている。


「ぐっすり寝てますねー」

「うむ、幸せそうじゃのう」

「しかし、結構煩いのによく……む、耳栓つけとる」

「月のマークが入ってますよ。発明品でしょうかね?」


 月子の耳に嵌まっている耳栓を見ながらイナリとエリはそんなことを言い合っているが、実際その通りである。とはいえ緊急時にはイヤホンへと役割が変わる耳栓であり、何かあったときに起きない……というわけではないのだが、さておいてよく寝ている月子を起こすほどイナリとエリは無粋ではない。


「草津、これからどうなるんでしょうね。たぶん、これから色々報道されていくんでしょうし」

「さて、のう。どうなるかは分からんが、元の草津に戻れば良いんじゃがの」

「そうですよね。色々と難しいのかもしれませんけど、やっぱりそうなるのが」


 いいですよね、とエリが言いかけたそのとき。ズガン、という爆発音にも似たような音が響いてヘリが大きく揺れる。


「きゃ、きゃああああ!?」

「な、なんじゃあ!?」

「強力な魔力を感知! 魔法化するほどの強力なものが……!」

「発生源の特定……いや、私がやるわ!」


 一瞬で目を覚ました月子がツールのようなものを取り出し操作すると……すぐにその表情を歪ませる。


「草津……!?」

「え……アレって!」


 エリが指し示した先。体勢を立て直すために旋回したヘリの窓から見える光景を指差す。


「なんと……!」

「火の……壁? とんでもない魔力が此処からでも測定できるわよ!?」


 そう、それは恐らくは草津を半球状に包んでいる火の壁だった。明らかに通常の現象ではない……いったい何が起こっているというのか。


「何なの、あれは……普通じゃないわよ。内部への走査が効かない……弾かれてるわ!」

「……結界じゃな」

「結界!? アレが!?」

「うむ。仮に火炎結界と名付けるとして……恐らくは外部と内部を遮断するものであるはずじゃ」


 そういうモノに月子は覚えがあった。つい最近、同じようなモノを調べたばかりだからだ。


「利島の結界……でもアレは明らかに性質が違うわよ!?」

「うむ。近づくなと言わんばかりじゃ。恐らくは中に入ろうとすれば焼かれるじゃろうな」


 そして恐らくは、中から外にも出られないだろう。そうする意味は……恐らくは。


(……そうか、タケル。それがお主の選んだ道、か)


 これがタケルの仕業だと、イナリは半ば確信していた。タケルの態度、言動……あらゆる全てが、それを示している。暴力的な手段に出る可能性を考えて尚、イナリはタケルの善性を信じた。事実、イナリの記憶ではタケルは最後までそれを信じるに値する男であったはずだ。

 つまり……タケルはその善性を保持したまま、この行為に及んだ。そしてこんなことをする力も含め、タケルは……何らかの「神の如きもの」と契約していると言い切れる。


「くっ……アレの影響か本部と通信も繋がらないわ!」

「ど、どうしましょう!?」

「うむ。お主等は此処を離脱するといい」


 イナリは心の整理を終えると、月子たちにそう告げる。しかしそれは月子たちにとっては受け入れがたいものだ。


「え!? 離脱って……まさか!」

「そのまさかじゃよ。アレに入れるのは儂しかおるまい」

「む、無茶ですよ! 中で何かがあるか分かんないんですよ!」

「なあに、中にはタケルもおる。協力すればどうにかなるじゃろ」


 そう微笑むイナリに、月子はハッとしたような表情になるが……やがて拳を握りしめながら「そうね」と頷く。


「じゃあ、任せるわ。私たちも戻りながら本部への通信を続ける。それまでの間、対処をお願い」

「え、月子さん!? ああ、でも。確かにそれ以外無さそうです……!」

「行きなさい、イナリ!」

「うう、頑張ってくださいイナリさん!」

「任された!」


 ヘリのドアを開け、イナリは空中へと躍り出る。そのまま空を飛行するイナリは、迫る炎の壁を手に刀形態の狐月を召喚する。全てを拒絶し燃やす巨大な炎の壁は……しかし、イナリのようなものを防ぐには少しばかり足りない。


「ゆくぞ、狐月!」


 魔力を籠められ輝く狐月を構え、イナリは炎の壁へと突っ込んでいく。ボオン、と音を立てて空いた穴からイナリが突っ込むと同時に炎の壁は周囲から炎を伸ばし閉じるが、その頃にはもうイナリは壁の中だ。

 しかし……壁の中へと突っ込んだイナリは絶句する。そこにあったのは、草津の街ではなかったからだ。


「これは……群馬第1だんじょん……か?」


 燃え盛る大地。そして活火山が存在しマグマの川が流れている。まるで群馬第1ダンジョンの縮小版のようで……しかし、明らかに違う。


「違う。似ているが……違うものじゃ。一体これは……!?」

(タケル。お主は……お主は一体何をした!?)


―警告。世界の上書き行為を確認しました―

―【終わり告げる炎剣】により撃ち込まれた【世界書き換えの礎】を5時間以内に排除できない場合、上書きされた箇所が正常なる世界として記録されます―

―残り時間:4時間59分57秒―

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― 新着の感想 ―
世界の書き換え!?そんなこともでき……使途がダンジョンでやろうとしてたのってこういうことなのかな?
[気になる点] マグマ地帯って現草津民 全員死亡かな?
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