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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第六章

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お狐様、草津を楽しむ

 ところで、これは意外といえばそうであるし、事情を知れば納得してしまう話ではあるのだが。草津の湯畑周辺にはいわゆる「景色の良い露天風呂」というものは非常に限られていて、露天風呂というものは庭などの整備された光景を見るものであったりする。

 これは湯畑周辺には建物なども多く郊外の温泉旅館のような「景色を楽しむ」系の露天風呂は高台に位置している温泉旅館などの特権……「草津温泉を一望する」といったようなやつだ……ともかく、明言されているわけではないが、そういう感じであるから、なのかもしれない。

 あるいは草津はその立地上冬場は雪がかなり積もるため、屋根の設置など管理が大変であるのも関係しているかもしれない。

 まあとにかく草津において露天風呂というものは設置していない旅館も珍しくはなく、イナリたちが泊まっている旅館もそうであった。しかしながら湯畑源泉を引湯しているこの宿の湯は中々気持ちが良く、イナリたちは「ほう」と息を吐いていた。

 石造りの風呂には透明な湯が注がれ、


「あー……ええのう」

「草津を代表するお湯ですものねー……はー、気持ちいいです」

「でも私、説明されるか調べるかしないと分かんないわね……」

「白旗源泉は気温低いと白く濁るらしいですけども」


 イナリは肩までしっかり浸かり、月子はすっかりでろんと溶けたようになってしまっている。普段ストレスや疲れが多いのだろうか……癒されっぷりが凄い。対するエリは普通だ。ちなみにこの旅館、今日は月子の警護の都合も含め日本本部が借り切っており、ならばということでアツアゲが泳いでいる。一番小さいサイズになっているせいか、ちょっとしたプールの気分のようだ。

 そんなアツアゲが目の前を泳いでいくのを見て、エリが「んー」と声をあげながらアツアゲを視線で追う。


「そういえばアツアゲって『ビーム』しか言わないですけど、それでも言えるんなら他にも何か喋れそうですよね」

「道理じゃが、聞いたことはないのう」

「単なるスキル発動エフェクトかもしれないわよ」

「あー、そういう可能性もあるんですね」


 アツアゲ。積み木ゴーレム。パートナーやペットと呼ばれる……公式にはパートナーなのだがペットと呼ぶ人も増えているがそれはさておき、世界初のパートナーであるアツアゲ以外の積み木ゴーレムがそうなったという報告は今のところ出ていない。

 まあ、元々積み木ゴーレムほど面倒な相手も中々いないので壊走して這う這うの体で逃げてくる覚醒者が多いことも一因だが……サイズが通常モードでも可変であり、強力な戦闘モードも所持しているアツアゲはイナリ同様にファンが多いし憧れのパートナーでもあるらしい。


「実を言うと私も積み木ゴーレムを仲間にしたいんですよね。私が守り積み木ゴーレムが巨大化してビームで一掃する……素敵じゃないです?」

「ちょっと分かるわ」


 イナリは分からないので黙ってニコニコ微笑んでいたが、まあアツアゲはそういうカッコいい枠であるらしい。まるでアツアゲがよく見ているロボットアニメや特撮のようである。


「カッコいいっていえば月子さんのG・O・Dも凄いですよね! GODでゴッドオブデストロイでラスト5分の破壊神ですもの! キメッキメじゃないですか!」

「いや、改めて人から言われると黒の魔女かよって気分になってくるわね……」

「大丈夫ですよ、方向性は違いますから!」

「何の慰めにもなってない……!」

「風呂で暴れてはいかんぞー?」


 月子とエリがバシャバシャとやることで出来る波にアツアゲが翻弄されて「ぬあー」とでも言いたげな様子になっているのを救出しながらイナリは軽く注意する。今日は他のお客さんはいないのだから、常識的な範囲で羽目を外したって良いとは思っているので本当に軽めだ。


「それにしてもお主、本当に他には喋れんのかえ?」

「ビッ」

「おお、いけるではないか」

「……それはビームの範囲内だと思うんですけど」

「そうね……」

「そうかのう」

「でもまあ、エフェクトじゃないことは判明したかしら」


 エリと月子も興味を引かれたらしくそんなことを言い合うが、まあイナリとしてはアツアゲが喋らなくても意思疎通が簡単かそうではないか程度の差でしかない。

 そんなこんなで風呂を出て部屋に戻ると浴衣に着替えて……まあ、イナリはいつも通りに服を変形させているし月子は全く分からないのでエリにやってもらっていたが、そうするとエリが「さて!」と声をあげる。


「いつもはこういうとき、イナリさんによるASMR的癒し時間が始まるところですが!」

「えーえすえむあーる……?」

「さっき温泉で溶けてた月子さんを見て私思いました! メイドの出番だと!」

「そうかしら……」

「どうかのう……?」

「メイドの出番です!」


 勢いで押し切ると、エリは月子に視線を向けてポーズをキメる。


「こう見えて私、整骨院を開ける程度の国家資格も持っております!」

「なんで?」

「メイドなので!」


 メイドだかららしい。その辺りはイナリも月子もメイドの専門家ではないのでよく分からないけれども。


「月子さんの疲れをメイドとしても友人としても、しっかり癒させていただきます!」


 まあ、結果から言うと凄い上手かったとは月子の言葉だ。ますます使用人被服工房の謎が深まっていくが……イナリもやってもらってご満悦であった。なお「イナリさんは全く凝ってませんね!」ではあるらしいのだけれども。それも含め、素敵な時間であったのだ。

Tips:覚醒者は色々な資格などにおける前提条件が緩くなる。

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― 新着の感想 ―
メイドですので、執事ですので、はある意味デウスエクスマキナw
お風呂回!温泉気持ちよさそう! 使用人被服工房の総力をあげたら大抵のことはカバーできそうwww
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