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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第六章

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超人連盟の暗躍

 超人連盟。それは覚醒者による世界支配を目的とする集団である。現在の構造を不安定と断じ、覚醒者を「上」と確定させることこそ世界の安定に繋がるというその主張には、超人連盟に属さずとも、あるいは人に言わずとも賛成している覚醒者も存在する。

 それはやはり初期の覚醒者への弾圧を経験した者こそ、そういう傾向が強くなるが……必ずしもそうというわけではない。むしろ「そう見られた」ことで不利益を受けて本当に超人連盟に所属してしまう流れもあり、非常に難しい問題と化している。

 そして……超人連盟の始まりが何処で、本拠地は何処にあるのか。それすら誰にも分からない。

 田中太郎……いや、サイラス・テイラーもまたそのメンバーの1人であり、対象を虚空へと消し去り、その存在を乗っ取り「変身」することの出来るスキル「邪悪なるチェンジリング」の使い手でもあった。

 そしてそのサイラスの姿は……草津の町中にあった。明るい金の髪と青い目。スマートな体格のその姿は……恐らくはサイラス本来の外見なのだろう。


「さて……何やら余計なものも紛れ込んできたが、機は熟した。始めるとしようか」


 悪意あるメタモルフォーゼ。そうサイラスが唱えると、その姿が身長も体格も……全くの別人へと変わっていく。

 切れ長の細い目と、しゅっと綺麗に伸びた鼻筋。薄い唇はつややかであり、サラリとした短く黒い髪は綺麗に真ん中分けで整えられている。身長は190cm前後といったところだろうか、薄いブルーのシャツと黒のジーンズが清潔感を醸し出している。

 そう、それは……土間タケルと呼ばれる覚醒者そっくりの、いや、そのままの姿であった。

 悪意あるメタモルフォーゼ。それは「一定以上の理解度を達成した誰かに変身する魔法」。邪悪なるチェンジリングと違う点は「本物は変わらず別の何処かに存在している」こと、そして……そのリスクを背負っているせいか「多少強い程度の鑑定スキルでは見破れない」こと。

 そう、そんな悪意あるメタモルフォーゼの、使い方は。


「えーと……そうそう、確かこの家だったな」


 見上げていたのは湯畑からは少し離れた、立派なリゾートマンション。様々な場所を足場に目的の最上階まで飛んでいくと、そのまま広いベランダに降り立つ。ガラス扉は閉まっているが……シンプルなデザインの仮面を被った偽タケルは、驚愕の表情で見ている男へ向かってガラス扉をコンコンと叩く。


「こんばんは」

「な、ななな……なんだお前! 誰だ!?」

「さあ、誰だろうな?」


 一撃でガラス扉をフレームごと砕くと、中から悲鳴が上がる。男と……その近くに立っているスーツ姿の女。秘書? 違う。護衛の1人だ。「とあるスキル」を持っていることで、特に重用されているという情報だ。


「お、お前覚醒者だな!? 護衛を置いていないとでも思ってるのか!」

「へえ、呼んでみなよ」

「大丈夫ですか!?」


 そこに飛び込んできたのは、スーツ姿の覚醒者が数人。それを見て偽タケルはハッと笑う。確かにSP業務に就くときにああいう格好に身を包むのはあることだが、それで覚醒者を必要とするような業務に耐えられるはずもない。要は、一般人の感覚を抜け出せていない。まあ、雇用主の問題であるのは間違いないが。


「お前……その人を離せ!」

「いいよ」


 男をぶん投げると覚醒者の1人が壁を壊しながら別の部屋へと吹っ飛び、飛び掛かってきた別の覚醒者を蹴りで天井近くまで吹っ飛ばす。残る1人は……顔面を拳でぶん殴る。


「が、は……」


 倒れる男が偽タケルの仮面を掴み、そのままずるずると崩れ落ちる。


「おっと……」

「そ、その顔! 土間タケル!?」


 偽タケルは仮面を拾って付け直すと、男を助け出していた女の近くに寄って行く。男の方は完全に気絶しているようで、白目をむいている……正直面白くて笑いそうであった。


「今何かを見たとして。それを何処かで吹聴しない方がいい」

「……! なんで突然こんなことを!」

「なんでもなにも。分かるだろ? 此処は汚れすぎた。掃除が必要なんだよ」


 女を蹴り飛ばすと、偽タケルはいとも簡単に男を殺す。ボキリと、覚醒者だからこそ出来る一瞬の殺し方。この男は……確か何処かの会社の会長だったか。タケルに圧力をかけた、そんな命知らずのうちの1人だ。


「じゃあな。賢い選択をすることを願ってる」


 そう言い残して、偽タケルはビルから飛び降りる。簡単だ……そのくらいでは怪我をしない程度の身体能力は持っている。というか、「土間タケル」であればその程度は出来なくてはならない。そのまま闇夜へと消えながら、偽タケルは作戦の成功を確信する。

 何故ならば。人は誰でも「自分が得た」情報を信じ込む傾向がある。それがセンセーショナルな状況で、わざとらしくない……自分たちの力で犠牲を払いながら手にいれたものであればなおさらだ。だから、この作戦は必ず成功する。

 そんな偽タケルの確信を裏付けるように、ベランダから偽タケルを見ていた女は覚醒者協会群馬支部へと緊急連絡していた。


「そうです、犯人は……土間タケルです! 鑑定スキルでも確かに確認しました!」


 

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― 新着の感想 ―
「お、お前覚醒者だな!? 護衛を置いていないとでも思ってるのか!」 ここではまだ捕まってなくて、地の文を挟んで 「お前……その人を離せ!」 と、特に描写もなく捕まっている。近くの鑑定持ちの護衛を意にも…
タケル君を追い込む作戦かな? どんな結末にしろ草津からタケル君が去りそうだなぁ、イナリちゃんに救われるといいけど
[一言] その頃タケルとお狐様が逢ってて、速攻バレると良いな。w
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