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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第六章

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お狐様、思いつく

 電話をしてから町中へ移動するというノアと別れ、イナリはバスに乗ってバスターミナルへと戻っていく。お昼を過ぎて大体の旅館やホテルがチェックイン時間になるせいか、バスターミナルにも人の数が増えてきている。


「あれってイナリちゃんだよね?」

「わあ、可愛い……」

「サインとか貰えないかな……」


 そんな声が聞こえてくるが、赤井からも「ファンサービスは1度やると何処で終わらせても遺恨が残るので1人のときにはやらないほうが無難です」「そもそも人混みを作る原因になってしまうと、それ自体が新しいトラブルにもなります」と言い含められてもいる。なのでイナリは手を軽く振るだけに留めながらさっさとバスターミナルを出る。


「さいん……うむ、知っとるぞ。名前とか書くやつじゃ……」


 いつか米屋に贈ったものは随分と大切に飾られていたが、まあアレを1人1人に書いていては確かに夕方になっても終わらないかもしれない。なのでサクサクと湯畑に向かって歩いていくが、その最中にイナリは周囲の光景に視線を向ける。


(人の入れ替わり、か。それ自体は何処にでもある話じゃ)


 実際、イナリのいた廃村も時代の流れでそうなったのであって、日本全体を見回しても恐らく珍しい事例ではない。受け入れるべき変化だ……しかしタケルの場合もそうであるかといえば、それを本人にしたり顔で言う者がいればイナリは叱りつけているだろう。


(安らぎの場所を失う痛みを他者が理解することなど不可能じゃ。ましてやそれが反転のような状況であれば尚更……)


 タケルの家がダンジョンのすぐ近くにあるのは、恐らくは最短距離でダンジョンへと向かうためだろうと、イナリはそう考えていた。あの草津出張所での話も合わせるに、タケルは草津どころか自宅とダンジョンの往復程度しかしていない可能性もある。

 何しろ今時は通販……それも覚醒者用の高速輸送もかなりお値段は張るが存在している。そうしたものを使えば生活自体は何も問題がない。いや、それだけではない。ダンジョンに潜る頻度も相当であるはずだ、何しろ草津からほとんど出ずに3位を維持しているのだ。自宅にいる比率のほうが低い可能性すらある。


「……さて、どうしたものか。儂の考えを押し付けるだけになってもいかんが……」


 それに、出張所から受けた依頼のこともある。超人連盟がまだ草津にいるのか、それともすでに国外へ出ていったのか。顔を変えてしまえば潜伏も容易になるだけに、あらゆる可能性を排除することはできない。


「ん?」


 そこでイナリはピタリと足を止める。丁度湯畑に辿り着く、その手前ほどだが……湯畑を前に写真を撮っている人々を視界に収めながら、イナリは自分の感じた違和感について思い返す。

 田中太郎を名乗っていた人物、すなわち超人連盟のメンバーが草津に現れたという情報が入った。つまり「草津に田中太郎が居た」こと自体は事実なのだろう。それが何処の誰かまでは分からないが、その情報提供者により「田中太郎」は観測されている。

 しかし、それは何故? 何故観測されたのか? 今まで見つかっていなかった「田中太郎」が草津で観測された理由は何なのか。

 今までは変装していて、たまたま気付かれていなかったのか。そして今は別の変装をしているから見つからないのだろうか?


(違う気がするのう。やはり別の誰かに姿を変える能力があると考えるのが自然じゃが)


 しかしそうだとして「田中太郎」をわざわざ観測させた理由は何だろうか? 見つかれば厳戒態勢になるのは分かっているのだし、鑑定でバレるのであれば「居る」と分からせた時点で変身の利点が消えてしまう。そう、何1つ得をしない。しかし、そうなると……。

 イナリはそこまで考えると、月子へと電話をかけ始める。5コールもしないうちに出た月子は何処となく疲れたような声だ。


『……何よ。アンタからの電話じゃなけりゃキレちらかしてるわよ』

「おお、それはすまんのう」

『いいから本題』

「お主の鑑定すきるじゃがな。何か特別かの?」

『そうよ。普通のより強力。なに? また超人連盟?』

「うむ。では忙しいところすまんかったの」

『アンタなら平気とは思うけど、何かあったら呼びなさいね』


 月子との電話を切ると、イナリは大きく……とても大きく溜息をつき額をコツンと叩く。


「……変身しとるな、これは。そして恐らく普通の鑑定では見破れぬ。そう仮定するのであれば……観測されたのはわざと、か」


 此処で何かをしようとしている。あるいは、そう見せかけている。たとえば、此処に人員を引き付けて別の場所で何かを起こすとか。可能性は無限にある。となれば……多少面倒な話になる。すでに何かを派手に起こしているというのであれば、即座に見つける手段は持っている。しかしまだ何も起こしていないのであれば、どうしようもない。


「となれば……」


 イナリは再び電話をかける。その相手は……覚醒者協会日本本部の、安野だ。


『はい、安野です! どうされました?』

「おお、安野。ちぃと頼みがあるんじゃがの」

『頼みですか? 珍しいですね。なんでも聞いちゃいますよ!』

「おお、何でもとな。実に助かるのじゃ」

『え、あ、いえ。言葉のあやで出来ないこともですね』

「超人連盟の変身を見抜ける強い鑑定持ちの協力が必要なんじゃ。頼まれてくれるかの?」

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― 新着の感想 ―
イナリちゃんじゃなかったらキレてる月子ちゃん好いぞ!てぇてぇ
[良い点] ん?今なんでもって……
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