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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第六章

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お狐様、依頼を受ける

 そして、様々な方向……高額な報酬で雇われている覚醒者からの「意見」という形も含め、覚醒者協会群馬支部に圧力がかかり始めた。内容は当然「土間タケルはもっと草津の安全に積極的に寄与すべき」という、まあ……非覚醒者の護衛依頼を受けるべきみたいなロクでもない内容だ。


「覚醒者協会が表向きには強権を振るうこともなく、非覚醒者社会からは一歩引いた構造を維持しているからこその行動とは言えますね」

「うーむ、正直命知らずとしか言えんが」

「私たちもそう思います。実際そんな試みは上手くいきませんでした。それでも草津の大多数になった『新しい住人層』と土間さんの分断には充分すぎたんです。そして……当出張所の業務にも影響が出るに到り、私の『前』の担当者が土間さん相手にやらかしました」

 

 仁科次郎。地元密着というお題目をモットーにしていたその男はタケル相手に「地元と上手くやる気がない引きこもり」「もっと上手く人付き合いを」「社会と関わることの大切さ」的な「善意の説得」をやらかし、タケルにぶん殴られて入院……そのままクビになり、現在は何処に行ったか不明だ。


「その後は異動してきた私が担当となり関係改善に取り組んでおりますが、正直あまり成果は出ていません」

「そうじゃろうのう」

「当出張所もかなり人員の入れ替えがありましたが、まあ正直『あるだけ』っていう感じではありますね……」


 まあ、それに関してはイナリは楡崎に多少の同情はするが……そのくらいである。正直に言って、やらかしすぎている。一言でいえば覚醒者協会側の完全なる失態だ。尻拭いの形で此処へ派遣された楡崎は不運ではあったかもしれないが、タケルとの関係改善が出来ていない点で「言っていない何か」がありそうだ。

 ……とはいえ、イナリはそこを一々突っ込むようなことはしない。というか、イナリからの好感度もちょっと下がっている。


「うむ、事情は理解した。それで……儂への指名依頼とは何かの?」

「え、あ、はい。実は……指名手配中の人物が草津に現れたという情報が入ったんです」

「……? そういうのは覚醒者の仕事じゃったかの?」

「場合によってはそうなります。たとえば覚醒者絡みの話などですが」


 なるほど、確かに覚醒者相手であれば一般の警察組織どころか軍隊でもどうにか出来るか怪しい実力の者もゴロゴロいるだろう。その辺はイナリも理解はできる。

 そして実際覚醒者絡みの犯罪は覚醒者協会が実働部隊を送り捕縛などを行うのだが……本部はともかく支部の保有戦力では対応しきれない場合もある。そうした場合は信用できる、かつ実力のある覚醒者に委託することがある。


「今回、狐神さんが草津にいらっしゃっていたことは本当に運が良かったです」

「いや、まあ……別に事情は分かったし、受けようとは思うがの?」

「はい」

「そういうときにタケルにこれこれこういう事情だから助けてくれと頭を下げられんのが関係改善出来とらん理由なのではないかの?」

「うっ……」

「儂の知る限り、タケルは理不尽な男ではない。誠心誠意話をすれば分かってもらえると思うがのう」


 そこから関係改善に繋げられるかまではイナリには分からない。分からないが……まあ、たぶん楡崎では無理だろうとイナリは思う。前任者は確かに無能だったのかもしれないが、楡崎からもあまり良いものは感じない。今も何かふてくされたような空気を感じる……イナリの好感度は更に下がっている。


(本部と支部の質の差……儂が思う以上に深刻なのかもしれんが……)


 そこに関してはイナリがこの場でどうこう言っても仕方のないことではある。イナリに出来ることは、あとで安野にでも一報入れておくことだろう。日本3位と協会との関係に関する話であれば、安野なら大慌てで動き出すだろう。


「ご意見に関しては深く受け止めさせていただきます。ですが今回はどうか」

「ええよ。その誰かを捕縛すればええんじゃろ? 何処の誰じゃ?」


 イナリがそう言えば、楡崎はパッと明るい表情で書類を取り出す。なおイナリからの好感度はゼロに近くなっている。


「田中太郎を名乗っていた人物です。クラン『レッドドラゴン』マスター補佐を務めていた人物ですが……最近照合が終わり、偽造された身分であることが判明しました」

「ああ、うむ。聞いたことのあるくらんじゃの」


 越後商会の件はイナリにとっても記憶に新しい。田中とかいう人物については、あの場にはいなかったが……状況から考えるに田中もまた超人連盟の1人であるのは間違いないだろう。そんな人物が草津にいるとなると、草津空港から逃げる準備でもしていたのかもしれない。


「草津空港は探してみたのかの?」

「勿論です。現在も草津空港は厳戒態勢です。指名手配犯が抜けられるわけもありません」

「……ふむ」


 超人連盟に関わっていた「神の如きもの」に関してはその影響力を一時的に排除したはずだ。それはシステムが保証している。とはいえ、また戻ってきている可能性もある……かもしれない。


「分かった。早速始めるとしよう。ついては、必要なものがある」

「はい、なんでしょうか?」

「宿の手配を頼む。泊ってた宿はちぇっくあうとしてしまったからのう」

覚醒者協会日本本部勤め……エリート

地方支部勤め……その他

出張所勤め……閑職


大体このくらいのイメージです。覚醒者に対する公共サービス(国が運営しているわけではないけれども)に近いものがあるので、本部勤めは結構優秀なのが揃う傾向があります。

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― 新着の感想 ―
タケルくんが草津から自由に出ていけたらとうの昔に出て行ってたであろうやらかしだなぁ
[気になる点] もしかして、お狐様が何度かやってる横紙破りとは別の方法でダンジョンを破壊できるんですかね? 破壊したダンジョンからマグマを溢れさせて一切合切を焼き払い、嘗ての草津を取り戻すとか。 [一…
[一言] タケルに誠意ある対応が出来ないから拗れてこういう事態になってて、尻に火が付いてなお関係改善出来ないあたりに能力の低さが伺える。 そしてちょうど運よくイナリが居たからそこに頼もうって態度がもう…
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