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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第六章

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お狐様、どれも要らない

 転送場所に転送されてきたイナリと紫苑を見て職員が「おおっ」と歓声をあげる。今話題のイナリに加え4位の紫苑もいたので速いだろうとは思っていたがやはり……といった感じである。


「お帰りなさい!」

「うむ。早速じゃが……」


 机の上にザラザラと並べられていくアイテムはそれなりの品質のものが相応量揃っている。いるが……職員の目を一番引いたのは輝きを失ったオーブであった。


「おい、これ……」

「まさか……」


 そんなことを言っている職員たちをそのままに、イナリたちは目の前に表示されたメッセージを見ていた。


―称えられるべき業績が達成されました!【業績:炎の罠の完全踏破】―

―報酬ボックスを回収し再計算中です―

―報酬ボックスを手に入れました!―


「炎の罠……?」

「あのマグマとかで怪我しなかったから?」

「ふむ。そういうのもあるんじゃのう」


 高速殲滅者、みたいな業績はイナリも達成したことがあるが……なるほど、ダンジョンはまだまだ奥が深いということなのかもしれない。

 さておきイナリの手にあった銅の報酬ボックスは回収されて、何やらファイア・エレメンタルゴーレムの顔面をデフォルメしたらしいプリントの包み紙の箱がイナリの手に現れる。


「おお、特殊ボックス!?」

「しゃ、写真撮ってもよろしいですか!? それが出るのは初なんです!」

「うむ、ええよ」


 パシャリと箱の写真が撮られたのを確認すると、イナリは紫苑に「開けてみるかの?」と声をかけるが……紫苑はふるふると首を横に振って断る。


「いい。イナリが開けて」

「ふむ? そう遠慮することはないぞ。ほれ、開けるとええ」


 礼儀的な問題で遠慮したのかとイナリが考えもう1度勧めてみると、紫苑は「ん、分かった」と受け取る。紫苑としては本当にイナリが開けて良いと思っていたのだが、2度勧められたのなら断るのもどうかと思ったのだ。通じずとも奇跡的に綺麗な結果に終わった瞬間であるがさておいて。


「じゃあ……開けるね」

「うむ」


 丁寧に包装紙を開けていく紫苑はバリバリ破って開けるイナリとの色んな違いが出ているが……そうして蓋を開ければ、何やら赤いビー玉じみたものが出てくる。つるりとした光沢のある質感をしているが、たぶん何かしらのアイテムなのだろう。しかし何であるかは2人には分からない。


「なんじゃこれ……?」

「なんだろう。宝石かな?」

「宝石にしては臭くないかえ?」

「あ、確かに臭い。なんか葉っぱくさい」

「うむ、臭いのじゃ」


 そんなことを言い合っていると、ドロップ品を乗せたテーブルで「炎のオーブだ!」という声が上がる。どうやら先程のオーブのことらしいが……鑑定役の職員が興奮した様子でイナリたちの下へ走ってくる。


「す、凄いものをお持ち帰りになられましたね! 力を失っているとはいえ炎のオーブの完品とは! あれは何処に売っても高値が期待できますよ!」

「おお、さよか。紫苑は必要かの?」

「いらない」

「ではおーくしょんにでも登録しておいてくれるかの? 売り上げは紫苑にもがっ」

「ボクとイナリで売り上げは半分こ。魔石はイナリにあげてね」

「は、はい」

「これ紫苑! 何故口を塞ぐんじゃ」


 紫苑の手から抜け出したイナリがそう抗議すれば紫苑は「売り上げを全部ボクってのはダメ」と両手でバツを作る。


「しかしのう。儂は魔石を貰うわけじゃし」

「どう考えてもアレの売り上げの方がずっと高い。今回はイナリが凄い頑張ったんだからダメ」

「む、むう」

「不公平はダメ。友達だから、なおさらダメ」

「ううむ。しかし儂の我儘を通す迷惑料もじゃな?」

「ダメ」


 一歩も紫苑が引かないと分かったイナリは諦め「分かったのじゃよ」と頷く。同時に紫苑からの友情というものを強く感じてむず痒い気持ちになってしまうが……決して悪い気分ではない。


「そうじゃな。儂らは友だちじゃからな。となれば魔石も半分こといこうか」

「えっ」

「断るのはダメじゃぞ? 友達じゃろ?」

「……うん。そうだね」


 微笑みあうイナリと紫苑に鑑定役の職員が「おお……」と感極まったような声をあげていたが……その視線は箱の中の謎の玉へと向けられる。


「あの……」

「む? なんじゃ?」

「その丸薬なのですが……」

「丸薬? これかの?」

「はい、そうです。鑑定持ちの勘としてそれだけは分かるのですが……そちらも鑑定してもよろしいですか?」

「ええよ。ほれ」


 イナリに丸薬を向けられ、鑑定役の職員は鑑定スキルを発動させ……ヒエッと声をあげる。


「ひ、ひひひ……火耐性上昇の丸薬!? それも上級!?」

「はあ!?」


 あまりにも大きな鑑定役の職員の声に他の職員たちもワラワラと集まってくる。

 耐性上昇アイテム。それは戦闘を主な仕事とする覚醒者であれば誰もが欲しがる逸品だ。

 僅かな耐性上昇でも……たとえば僅かな火耐性でも、ちょっとした火では火傷しなくなるだろう。それの上級ともなれば、どれほどのものか……マグマでひとっ風呂なんていう冗談も現実になるかもしれない。


「あの、それの扱いはどのように……」

「紫苑は?」

「要らない」

「ではおーくしょんじゃの」


 紫苑とて海底火山という危険はあるかもしれないが、基本的に活動場所は水中だ。火耐性は必要ない。まあ、そんなわけで……2つのアイテムがまたしてもオークションを騒がせることになるのは、もはや必然であった。

ちなみに前章での金の報酬箱は全員で話し合った結果、恵瑠にプレゼント(押し付けた)されました。

中身は「守りの指輪」という防御力がちょっと上昇するアイテムだったようです。

市場に出てたらきっと凄い値がついたでしょうが、気にしない面子ばっかりだった(恵瑠は何度も断った)のでそうなりました。

今現在は恵瑠のお部屋で透明ケースに入れられ飾られています。

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― 新着の感想 ―
二人の友情好いぞ! 基本ソロで完結してる二人だもんなぁww自分に必要なかったらとっとく意味ないよねww 報酬箱は恵瑠ちゃんにか、透明ケースで保管はどういう理由なんだろう?記念品?
[一言] ここメインで活動するタケルにあげればよかったんでは。 オークションに出して必要あるかどうかも分からない奴に買われるくらいなら、確実に使う人にプレゼントした方が良い気がする。
[良い点] タケルは火耐性上昇はいらないのかな。 まあいるならこんなところで番人やってないか。 [一言] お守り系アイテムが高すぎてお守り系アイテムが危険を誘発するとかいうギャグになりそう。
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