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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第六章

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お狐様、群馬第1ダンジョンに挑む2

 群馬第1ダンジョンの構造は単純であり、それ故に面倒でもあった。無数にある火山は全ていつ噴火するかも分からず、何処か遠い場所で噴火したかと思えばイナリたちのすぐ近くにある火山が噴火し火砕流や火山弾が襲い掛かってくる。その中からはフレアボールが襲ってきたり、マグマの川からはマグマスライムを始めとするモンスターたちが溢れ出てくる。


「そりゃ!」

「どーん」

『フライングトーピドー!』


 イナリの放つ矢が全身が燃え盛るマグマで構成されたような人型モンスター「マグマン」を撃ち砕き、紫苑の放った空飛ぶ魚雷のようなものがマグマスライムを爆砕する。倒しても倒してもゾロゾロと出てくるモンスターたちもようやく小休止となったようで、紫苑はふうと息を吐く。


「モンスター、いっぱい」

「どうにも終わりはないように思えるのう。稼ぎとしては良いのかもしれんが……」

「そうでもない」

「むう」


 先程からアツアゲがひょいひょいと戦利品を拾っているが、魔石だけでなく冷えた溶岩石や軽石、火山灰のような比較的どうでもいいアイテムも混ざっている。たとえば今アツアゲが拾い上げて疑問符を浮かべているのは、湯の花の塊だ。魔石以外のドロップアイテムには素材になるものも多いが、溶岩石や湯の花はお土産くらいにしかならないだろう。ちなみにダンジョンから産出する湯の花は効能が高いということで売れるらしいが、さておいて。そうしてアツアゲが厳選してきたアイテムをイナリが神隠しの穴に放り込む。


「む、湯の花も拾ってきたのじゃな」


 結構濃い目の魔力を含んだ湯の花の塊も神隠しの穴に放り込んで、イナリたちは周囲を見回す。この群馬第1ダンジョンのクリア方法は特殊であるとされていて、この場にある無数の火山の中から洞窟のあるものを見つけ出し、その中から「炎のオーブ」と呼ばれている真っ赤なオーブを見つけ出し破壊する必要がある。

 これは群馬第1ダンジョンでとある覚醒者チームが発見したクリア方法であり、恐らくそのオーブがこのダンジョンのボス的役割をしているのだろうと考えられていた。

 当然タケルからも同じ話を聞いているし、タケル自身そうやって攻略しているとも聞いていた。炎のオーブを破壊するとドロップするという「炎のオーブの欠片」は高温を発するアイテムであり、冬場の草津の公共の場での暖房器具に転用されているという。

 だから当然、イナリたちもそれを探して歩き回っているのだが……炎のオーブが見つからないのだ。洞窟は幾つか見つけたが、その奥に炎のオーブが存在しない。この辺りの面倒さ加減は群馬第1ダンジョンが不人気である理由の1つであるのだろうと考えられた。


「むう、見つからんのう」

「うん……」


 すでに幾つの洞窟を探しただろうか? あまり見つからないようなら帰ってしまうことも考えなければいけないかとイナリが考え始めた頃……もう1つの洞窟が見つかる。如何にも天然の洞窟に見えるその入り口を見て、イナリと紫苑は頷きあう。


「では儂が最初に入るからの。その後を……むっ!?」


 洞窟の奥で何か輝きのようなものが見えて。イナリはほぼ一瞬の判断で眼前に結界を展開する。その直後、洞窟の内壁を焼くような凄まじい規模の炎が洞窟から溢れ出し……いや、放出される。それは明らかな攻撃。しかし人間を簡単に焼き尽くすような炎はイナリの結界に阻まれ四方八方へと散っていく。

 そして、その炎が消えた後。洞窟の奥からすうっと飛来してくるのは赤く半透明な……燃えるような色を宿したオーブ。そう、炎のオーブであった。なるほど、どうやら「ボス的役割」ではなくボスそのものであったようだ……!

 しかし今までタケルを含む炎のオーブを壊した覚醒者たちがそれに気付かなかったということは……これ「単体」ではボスではないのだろう。何やらバチバチとスパークする炎のオーブの周囲が熱気で揺らめき、近づくことを拒絶しながら周囲の岩を溶かしている。


「聞いたことないパターン」

「儂、こういう例外みたいな状況に縁があるのう……」


 そんなことを言う2人の前で炎のオーブは周囲の炎やこの超高温で溶けた岩を引き寄せ、ライオンにも似た姿を形成していく。オーブもその中へと覆い隠され、出来上がった炎の獅子は周囲の空気をビリビリと振るわせる咆哮をあげる。それは間違いなく、このダンジョンに存在していた本来のボスが姿を現していた瞬間で。ズドンと、イナリの弓から放たれた極太の光線が炎の獅子を一撃で粉砕する。

 まあ、当然だ。わざわざ完成を待っている理由もない。すでに攻撃されたのだから、とっくに戦いは始まっているのだ。


「ん、哀れ」

「先に仕掛けたのは向こうじゃからの。待っておる理由はないのう」


 それでも一応「完成」出来たのは炎の獅子への最後の慈悲ではあるだろうか?

 そんなわけで不意打ちをしたせいでイナリに哀れにも一撃で粉砕された炎の獅子からドロップしたのは、輝きを失ったオーブが1つ。アツアゲが素早く拾って戻ってきたのと同時に、システムメッセージが流れ始める。


―【ボス】ファイア・エレメンタルゴーレム討伐完了!―

―ダンジョンクリア完了!―

―報酬ボックスを手に入れました!―

―ダンジョンリセットの為、生存者を全員排出します―

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― 新着の感想 ―
これまで何回もあったけど、地の文で説明中に先制攻撃しちゃうイナリさんまじ容赦ねぇw
これもダンジョンの拡張の一環なのかな? まぁ登場演出中に倒せるなら倒しちゃった方が良いよねwww
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