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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第六章

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お狐様、迎えに行く

 ヒカルたちと遊んでから数日後。家に遊びに来るという紫苑をバス停まで迎えに来たイナリは、ふと空を見上げる。そこには空を飛ぶ「新世代覚醒者」たちの姿があり、どうやら空中での連携飛行の練習中のようであった。


「よーし、この調子だ! しまっていこうぜー!」

「おー!」


 気合を入れ直し飛んでいく彼等を見送りながらイナリは「何をしまっていくんじゃろうのう……」と呟く。団体競技のスポーツマンとかがたまに言っているのは知っているが、こうして実体を得るまでは調べることも聞くことも出来なかったのでそのまま流していた……が、まあ気を引き締めていく的な意味なのだろうとは思っているし、どうにも実際そうであるようだ。

 まあ、確かに空を飛んでいる以上はそうした気の引き締めは重要であるのだろう。そんなことを考えて「うむうむ」と頷いていると、イナリは背後から走ってくる足音に気付く。それが何であるかに気付き振り返れば、そこには我先に走ってくる子供たちがいる。もう全力疾走である。


「イナリちゃんだー!」

「おっと」


 一番最初に辿り着いたのは女の子で、背負った鞄がなんとも可愛らしい。飛び込んでくる女の子をイナリが危なげなく受け止めると、嬉しそうにイナリをぎゅっと抱きしめてくる。


「あー、もう早瀬ずっりい!」

「へへーん、競争で勝ったもんねー!」

「いいなあ」

「これこれ、仲良くするんじゃぞ」

「はーい!」


 ちなみにこの子どもたちの学校はランドセルではないらしく、なんとも可愛らしい鞄が背負われている。同じデザインなのを見るとやはり学校指定ではあるのだろうか? まあ、ランドセルよりは大分軽そうだ。


「ねえねえイナリちゃん何してたのー?」

「暇なら遊ぼうぜ!」

「おお、すまなんだのう。儂は友人を待っておるんじゃよ」

「えー!」

「また今度遊ぼうのう」


 言いながら子どもたちの頭を撫でれば、元気に「うん!」と返事が返ってくる。よくヒカルは「最近の子どもは手に負えねえよ……」と言っていたが、何のことはない。素直な子供たちである。


「ところでお主等は今日は学校は早上がりかえ?」

「うん!」

「今日は早く帰ってお手伝いをして『かぞくのきずな』を育てる日なんだって!」

「おお、そうかそうか」


 なるほど素晴らしい取り組みだとイナリは思う。家族の絆。それに関しては少し前に恵瑠を巡る一連の事件でその大切さについて考えるきっかけが丁度あったが……モンスター災害で一度崩壊しかけたこの国では、改めてそういう命や家族の問題に取り組む流れが出来ていたのかもしれなかった。

 それは、イナリからしてもとても素晴らしいことで。


「……む?」


 しかしそこで、1つの疑問に気付く。今日はお手伝いをするために早く帰る日。ということは。


「お主等……斯様な事情であれば、儂と遊んでちゃいかんじゃろ……」

「えー? でもお母さん、『狐神さんとは仲良くしておきなさい』ってよく言うよ?」

「うちもー!」

「あ、僕のところも……」

「うーむ。大人の事情が透けて見えるのう……せちがらいのじゃ」


 有名な覚醒者とは繋ぎを作っておこうという話なのかもしれないが、まあ気持ちは分かるのでイナリとしてはそれに何かを言うこともない。どのみち子どもは大人の目論んだとおりになど動かないものだ。


「まあ、言いたいことは分かったし、それも1つの正解かもしれん。しかしのう、先生の言いたいことはお父さんやお母さんを大切にして『毎日ありがとう』と言ってあげる……そんなことだと思うんじゃよ」


 親の苦労というものは自分がそうなってみて、振り返って初めて理解できるものだ。しかし、そうなってから理解するよりも今理解して感謝できたほうが良いのは間違いない。家事などを手伝うということは、それを子どもでも可能な範囲で学習し理解できる、何よりのチャンスだ。

 お父さん、お母さんありがとう。そんな会話1つで円滑に回るものだって、きっとあるはずだ。

 だからイナリは子どもたちに「お主等なら分かるじゃろ?」と微笑みかける。


「……うん、分かる」

「よし、良い子じゃ。それでは今からどうするのがいいか……分かるかの?」

「はーい! お家に帰ってお手伝いする!」

「お皿洗う!」

「お掃除!」

「洗濯もの!」

「よしよし、皆敏い子たちじゃ。では気をつけて家に帰るんじゃぞ?」


 そうして「またねー!」と言いながら去っていく子供たちを見送りながら、イナリはバスがやってくるのを見つける。どうやら丁度バスが来る時間だったようだが……バス停に停まり降りてくる乗客の中に、イナリはその姿を見つける。


「イナリ、会いたかった」

「うむ。儂もじゃよ」


 駆け寄ってきてぎゅっと抱きしめてくる紫苑だが、本当に嬉しそうなのでこの前会ったばかりなどという無粋なことはイナリは言わない。


「今日のお泊り、楽しみ過ぎてじっくり寝た」

「ん? あ、うむ。寝たのじゃな?」

「寝落ち厳禁。ボクはしっかり体調管理できる」

「おお、それは素晴らしいことじゃのう。楽しみで寝れんとはよく聞く話じゃが、それではじっくり楽しめんからのう」

「うん、その通りだと思う」

「ま、とはいえ今日行くのは儂の家なんじゃが。ま、その前に買い物でも行くとするかのう」

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― 新着の感想 ―
イナリちゃんと子供たちのやり取り好いぞ!
[良い点] 地域の子供を見守る神様感好き [一言] 大人の事情もあるだろうけどこの世界のご時世では信頼できる覚醒者の知り合いはマジで命に直結するから親心ということで・・・
[一言] ここだけ見ると、学校帰りに神社の境内で遊ぶ子供達を見守る神様やな
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