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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第六章

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お狐様、プールに行く2

 そうして波の出るプールもウォータースライダーも……遊べるものを一通り遊ぶと、イナリたちは流れるプールで流されていた。大きな浮き輪にそれぞれ乗って流れていくが、なんとも平和すぎる光景ではあった。

 そろそろお昼が近いせいか、軽食コーナーなどにも行く人が増えてきているが、そのせいか流れるプールは人が少なめで実に快適だ。イナリたちも何の憂いも目的もなく、ただぷかぷかと流されている。


「やー……一通り遊んだけどさ。ちっとも疲れとかはねえな」

「そうじゃのう。ま、それはそれでいいことなんじゃないかの?」

「だな」


 実際、非覚醒者も遊ぶ施設で覚醒者がちょっと遊んだだけで疲れるはずもないのだが。訓練に来たわけではないので別に問題はない。


「それにこうして水で安全に遊ぶというのも、中々良いものじゃ」


 此処が川や海であれば、こんな無防備に遊ぶのはちょっとばかりのリスクを伴う。しかしプールであればそんな危険性は一切ない。ウォーターレジャーに求められているものは何かというのを、イナリはしっかりと理解できた気分であった。


「わかる」

「ん?」

「んん?」


 突然聞こえてきた声に振り向けば、プールサイドにいわゆるフィットネス水着やスポーツ水着などと呼ばれるタイプの水着を着た紫苑の姿があった。蛍光色の青と黄のストライプがキラリと光り、側面に「Water」とラメ入りの文字で書かれている。何処で買ったのか問いただしたくなるレベルの水着であった。

 近くの階段から2人は流れるプールを出てプールサイドに上がると、こっちにスタスタと歩いてくる紫苑に近づいていく。


「おいイナリ。誰だこのお前が選ぶと予想したようなタイプの水着着てる奴は」

「こういうのが流行ったのはもうずいぶん昔じゃないかのー」

「え、こういうの流行った時代とかあんの?」

「探せばあるかもしれん……」


 まあ、確かに「かつての時代」には自己主張の強い水着が流行した時代も確かにあったし、今紫苑が着ているような水着も紫苑が着れば似合って見える。凄い目立つという弱点はあるにはあるが。


「えーとまあ、2人は初対面じゃよな?」

「そう。ボクは紫苑。イナリの友だち。よろしくね」

「紫苑って……まさか『潜水艦』か?」

「そう、今日はオフ」

「あー、なるほどな。アタシは瀬尾ヒカル。同じくイナリの友だちだ。よろしく」


 握手をする2人をイナリはうんうん、と見守るような表情で見ていたが……紫苑はそのままイナリの前まで歩いてきてイナリをじっと見る。


「む? どうかしたかの?」

「こういうのに来るのはボクとが最初だと思ってた」

「そ、それはすまなんだのう」


 まあ、確かに水といえば紫苑ではあるが、別にイナリとてそういうイメージで友人と遊ぶ場所を決めるわけでもない。しかも今回は誘われた身でもあるし。


「別に謝ることでもない。でも次はボクと行こう」

「そうじゃのう」

「抜け毛の問題とかあるかと思って誘えなかった。不覚」

「そういうの、儂はないからのう」


 やっぱりそこを心配されるんだな、と思いながらイナリは……自分をじろじろと見ている紫苑の視線に気付く。


「儂の水着が気になるのかえ?」

「うん、かわいい。似合ってる」

「おお、そうかそうか。ありがとうのう」

「イナリ」

「む?」


 自分の手をがっしと掴んでくるヒカルにイナリが振り向けば。


「アタシも似合ってると思ってるからな?」

「うむうむ。紫苑もヒカルも似合っておるよ」


 妙なことを気にするものだとイナリが笑えば、空いているもう片方のイナリの手を紫苑が掴む。まるで末っ子イナリと仲良し姉妹のような構図になってしまったが、それを見ていた一般客がクスクスと微笑ましそうに笑いながら通り過ぎていく。


「何あれ、かわいいー」

「ていうか真ん中のイナリちゃんじゃない?」

「え? まさかこんなとこに居ないでしょ」

「そうそう、アクセだよアクセ」


 なるほど、「まさかこんなところに本物がいるわけがない」状態になってしまっているようだが……まあ本物だと訂正して騒ぎになってもどうしようもないのでイナリは「うむ……」とだけ呟く。


「やっぱ知名度じゃまだイナリには敵わねえなあ……」

「顔が売れても面倒なだけ」

「アタシは顔売るのも仕事だからなあ」

「さておきこれはどういう状況なのかのう」

「なんだろうな……なんか勢いでやったけど」

「友情の再確認?」

「さよか……」


 紫苑がそう言うならまあ仕方ないと思いつつも、特に繋いでいる意味もないのでイナリは2人に解放して貰える。


「で、これから2人はどうするの?」

「どうしようかのう」

「まあ、もう少し遊んだら飯でも食いに行くか?」

「ならボク、イナリとウォータースライダーやりたい」

「うむ、ええよ。では行こうかのう」


 そうして紫苑も加えて3人でたっぷりと遊ぶと、食事をして家に帰る。特に事件など何も起こりはしないが、それはヒカルにとっても紫苑にとっても楽しい時間で……そんな2人を見ていたイナリも、幸せなのだった。

Tips:イナリの水着の秘密

イナリが着ているような水着が最初に流行したのは平成の初期頃らしいです。

本作品世界でその辺どうかはさておきましょう。


なお今回のイナリの水着選定のために「安易にボーダーに逃げてはいかん!」と必死で資料探したんですが、ボーダーの歴史が意外に凄い。ごめんなさいボーダー。甘く見てました。


※紫苑の水着の話の間違いじゃないかと思う方が結構いらっしゃるっぽいのですが、イナリの水着の話です。調べてみると「ファッションって巡るんだな」とか「今の時代もこういうの結構あるよね」みたいなのが多いです。興味のある方は是非調べてみてくださいね!

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― 新着の感想 ―
紫苑ちゃんに対抗?するヒカルちゃん可愛い!
[気になる点] 後書き イナリの水着 は 紫苑の水着 のことでしょうか [一言] 更新お疲れ様です 執筆頑張ってください
[一言] 咲き誇る大輪の百合の花
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