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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第五章

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お狐様、対峙する

 『ラスト5分の破壊神(G・O・D)』。それはかなり厳しい条件がつけられた月子の必殺技とも呼べるスキルである。

 戦闘状態に入ってから25分後に使用可能になるというスキル使用条件は、余程の規模か強さ、あるいは特殊な状況でなければ使用条件を満たすよりも先に戦闘が終わってしまう。だからこそ、月子のG・O・Dが使用されるような状況は、月子が覚醒者となってから今回を含め2回。前回の「月子暗殺未遂」事件で発動して、それ以来「プロフェッサーの持つ最大火力」という噂だけが独り歩きしたこのスキルは、いわゆる創作などにおいてのみ存在するトンデモ科学をわずかな間ではあるが現実に変えてしまうものだ。

 具体的には特撮やロボットアニメなどにおける「最後に出てくる必殺兵器」の如き何かの持つ、その力そのものを一時的に再現してしまう。

 一見馬鹿馬鹿しくも思えるスキルだが、「最後にやってきて悪を必ず倒す」というこの概念を現実に持ってくると、文字通りの必殺をかなりの確率で実現する。実際に今回のG・O・Dは周囲を完全に爆砕し、月子たちのいる僅かな場所のみが無傷であった。


「凄まじいものじゃのう」

「魔力消費も半端ないのよ。維持だけで魔力をドカ食いするし、必殺兵器使わせたら全部持っていく勢いだもの」


 すでにG・O・Dの効果は終了しているが、月子の魔力はほぼ尽きていた。それだけの価値のあるスキルとはいえ、その消耗の凄まじさは決して無視できるリスクではない。しかし、それでも敵を倒し切った。その事実だけは。


「驚いた」

「!?」


 確かに全員倒した。良一に化けていたロバートも確かに消し飛ばしている。なのに、この声は。


「な、んですかアレは」


 良一の形をした真っ黒な影のようなものがその場に立ち、口を開いていた。それは、間違いなく良一ではない。ロバートでもない。ならば、一体アレは。あの絶望的なまでの力を撒き散らすモノは、一体なんだというのか?


―警告。WARNING。危険。使徒消滅の魔力的間隙を利用し【証明不能なる正体不明】がその権能を行使しました!―

―本物ではありませんが偽物でもありません―


「あ、ああ……」


 その恐ろしさに、恵瑠は膝をつきそうになる。そうならなかったのは、自分を守る力のようなものを感じているからであって。それは、明らかにイナリから放出されていた。


「本当に驚いた。プロフェッサー。私は正直、君の警戒はしていなかったんだ。頭の良い奴ほど扱いが簡単だ。私は君はどうでもできると思っていたんだ。いやはや、本当に面白い。遊ぶのは私の生き甲斐のようなものだが、これは本当に楽しい」

「何なの、貴方……!」

「それを問うかい? ならば答えよう。私は」

「やめよ」


 イナリの刀が、影の口を切り裂く。いや、影は回避した。ほんの僅かな動きでイナリの刀を回避してみせたのだ。それは別に驚くべきことではない……イナリの身体能力自体は覚醒者としては下位なのだから。しっかりとした身体能力を持った者がその気になれば、避けるのは難しくはない。だから、イナリも特に驚かずに影を見据える。


「コガミイナリ。君は厄介だ。何故君のようなものが混ざっているのか。まあ十中八九私のような手合いへの対抗のためだろうが……はてさて、システムの現身というわけでもなさそうだ」

「超人連盟とやらはお主の手先かえ?」

「いや? 私は力を貸すだけさ。その結果どうなろうと、私はその結果を尊重しよう。与えたものをマトモに扱えないのは個人の責任だろう?」

「そうかもしれぬな」

「分かっていただけて幸い……」

「しかしお主は儂を敵に回した」

「おいおい。まさかその子を巻き込んだからと言う気かい? それは」

「そうか、やはりお主か」

「あ、ヤバ」


 たいしてヤバいとも思っていなさそうに影はケラケラと笑う。

 証明不能なる正体不明。それがどのようなものであるかは、イナリにはどうでもいい。しかし、しかしだ。【証明不能なる正体不明】が顕現したその瞬間、その濃厚すぎる魔力と同じようなものが僅かに恵瑠に絡みついていたのをイナリは感じたのだ。

 恵瑠だけが生き残った交通事故。そんな恵瑠を厄介払いする親族たち。何処から何処まで【証明不能なる正体不明】が絡んでいたのかは分からない。

 しかし恐らく恵瑠の「始まりの事件」にも【証明不能なる正体不明】が何らかの形で関わっていた。もしかすると心の隙に入り込んで恵瑠を使徒にするつもりだったのかもしれないが……それはどうでもいい。

 狐月を構え直すと、イナリは刀身に指を這わせ滑らせる。

 イナリの指の動きに合わせ青い輝きを纏っていく狐月は荘厳な輝きを放って。


「また遊ぼう、コガミイナリ。今度はこんな残滓ではなくて」

―【証明不能なる正体不明】が楽しいと拍手しています―

「もう少しマシな私と遊ぼう」

―【証明不能なる正体不明】がそれはいいと賛同しています―

「失せよ、悪鬼外道――秘剣・鬼切」


 その全てを無視して、イナリはウインドウごと影を切り裂く。瞬間、影もウインドウも幻のように消え去っていく。


―【証明不能なる正体不明】の干渉力を一時的に排除しました!―

―【証明不能なる正体不明】の【不明なる何か】を排除しました!―

―想定されない業績が達成されました!―

―称えられるべき業績が達成されました!―

―金の報酬箱を手に入れました!―

―追加ボーナス! 狐神イナリに1回の質問権が与えられました!―

―ダンジョンリセットの為、生存者を全員排出します―

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― 新着の感想 ―
破壊神すげぇ! 何時から干渉していたのかが解らないとか厄介すぎるなぁ 質問権?
[一言] ナイアルラトホテプ「お見事」
[良い点] おはようございます。 >最後に出てくる必殺兵器 東○特撮ロボの中で未だに最強説があり、蜘蛛祭りにゲスト出演した際には敵ボスから「あれは当たったら100%死ぬ概念兵器」と認識されて速攻発動…
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