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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第一章

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すまーとほんを探すのじゃ

 ブラザーマートを出たイナリは、道をてくてくと歩いていた。

 アニキのような頼りがい、困ったときのブラザーマート。

 そんな歌でテレビで宣伝していたというのに、まさかスマートフォンがないとは予想外だった。

 しかしそうなると何処でスマートフォンを手に入れればいいのか?

 安野に聞いてみる手もあるが、いつまでもそうではいけない。イナリも現代社会で生きる以上、1人でやっていく必要があるのだ。


(とはいえ、目的地もなく歩いていてもどうにかなるとも思えんのう……)


 スマートフォンは何処で手に入るのか? イナリの知識を総動員すれば、普通に考えれば町の電気屋だ。しかし……どうにも店が少ないように思えるのは気のせいだろうか?


「むう……びるやまんしょんは多いが、電気屋どころか八百屋も魚屋も肉屋もない。米屋も見当たらんな……一体現代ではどのように買い物を済ませておるのじゃ?」


 商店街どころか昔の山奥の村が健在だった頃の……村の中に点々とお店があるような人の営みしか記憶にないイナリである。スーパーとかデパートとかいう概念があるはずもない。テレビでコマーシャルでもやっていれば気付いたかもしれないが、最近はそういうコマーシャルは珍しいものになりつつある。

 よって、実にイナリの現代社会での……というか人生初のお買い物であるのにスマートフォンを探すのはちょっとハードルが高い。高いが、1度やると決めた以上はイナリはやるつもりだった。


「むうう……儂の知るものと違い過ぎる。過ぎる、が……」


 イナリはあちこちで進んでいる工事を眺める。どうやらマンションを建てるらしいが、まだほとんど出来ても居ないというのに「全区画成約御礼」と書いてある。


「うーむ。そういえば此処は東京じゃったか。花の東京、というわけかのう」


 まあ、勿論そういうわけではない。東京が素敵だからではなく、東京の防衛力が高いから人が集まっているに過ぎない。覚醒者も非覚醒者も自然と集まる都市、それが今の東京なのだ。


「東京、東京か……おお! そういえば東京にはでぱーとがあるではないか! そこならあるに間違いないぞ!」


 なおデパートにスマートフォンが置いてあるかどうかは結構分からない部分もある。しかも何処にデパートがあるかはイナリも分かってはいない。


「えーと、そこの君。お買い物かい?」

「む?」


 デパートを探さねば、と意気込むイナリにかけられた声に振り返れば、そこには3人組の男女が立っていた。その装備はどうやら覚醒者のようだが、胸元に「覚醒者協会東京支部委託」と書いた札が下がっている。


「あ、ごめんね。俺たちは東京支部から委託を受けた巡回チームなんだ。君が何か探しているように見えたから」

「おー、そうじゃったか。気を遣わせてすまなんだのう」


 イナリが思わぬ人の優しさに微笑めば、女の覚醒者が「かわいい……」と呟く。


「いや、いいんだよ。俺たちで役に立てることはあるかい?」

「おお、それは助かる! 実はのう、これからでぱーとに行こうと思ってのう」

「デパート? 君も覚醒者に見えるけど、デパートで何を?」

「うむ。すまーとほんじゃ。でぱーとに行けば大体何でも揃うんじゃろ?」


 言われて巡回チームの3人は顔を見合わせて囁き合う。


「……本気で言ってると思う?」

「いや、俺そもそもデパートでスマホ売ってたか記憶にないしなあ」

「無いことは無いと思うけど……いや、でもなあ」


 そんなことを言いあうと、リーダーらしき男が軽く咳払いをする。


「まず確認したいんだけど、覚醒者……で合ってるかな?」

「うむ。これがかーどじゃな」


 イナリが白いカードを見せれば「初心者かあ」と納得したように頷く。

 それなら何も知らなくても仕方がない、と理解したのだ。


「覚醒者用の装備はデパートでは売ってないんだ。特殊な取り扱い免許が必要だからね」

「おお、それでぶらざーまーとににも無かったのじゃな!」

「えっ、あっ、うん」


 イナリの天真爛漫すぎる笑顔に「コンビニでスマホは売ってねーよ」という言葉をリーダーの男はゴクリと飲み込む。この笑顔を曇らせるのは何か犯罪のような気がしてしまったのだ。


「だから、そうだな……秋葉原に行くといいと思う」

「秋葉原とな」

「うん。昔は電気街って呼ばれていたらしいけど、今は覚醒者街って呼ばれていてね。覚醒者用の物をたくさん売ってるんだ。当然、覚醒者専用のスマホもたくさん売ってるよ」

「おお、斯様な場所があるとは! これは素晴らしいことを聞けた……やはり縁とは素晴らしきものじゃ」

「秋葉原ならバスで行くといいよ。丁度そこのバス停が秋葉原に行くやつだからね」

「うむうむ。重ね重ね感謝する。ありがとうのう」


 イナリが頭を下げて走っていくのを見て、リーダーの男はぽつりとつぶやく。


「……あの耳と尻尾、アーティファクトだよな?」

「たぶんな。実は凄いお嬢様なんじゃないか?」

「信じられないくらい可愛かったしねえ。耳触らせてもらえばよかった……」


 なるほど、見方によってはイナリは世間知らずなお嬢様に見えるらしい。

 巡回チームの面々が声をかけたのも、そういう部分が多大に影響していたが……そのおかげでイナリはどうやら、スマートフォンを買いに行けそうであった。

イナリ「秋葉原に行くのじゃ!」

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― 新着の感想 ―
天真爛漫な素敵な笑顔が前だと指摘出来んよなぁ
迷子になって帰れなくなる予感。
[一言] 電器街だった頃からオタク気質が溢れる場所だからな きっと新種のオタクも受け入れるだろう。 ダンジョンオタク、略してダンヲタ
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