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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第四章

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お狐様のことが思い出されたようです

 『潜水艦』鈴野 紫苑。

 日本におけるトップランカーの第4位である紫苑は、「新世代覚醒者」の1人である。

 水中戦に適応し、それでいて陸上でも相応の戦闘力を持つ物理系ディーラーである紫苑と契約したい覚醒企業は数あれど、紫苑はその全てを断ってフリーだ。それ故に、紫苑の顔はメディアにもほとんど露出せず、一番「知っているのに知らない」覚醒者となっている。

 まあ、その活躍の舞台が主に水中なのもそれに拍車をかけているのだろうが……。


名前:鈴野 紫苑

レベル:58

ジョブ:潜水攻撃艦

能力値:攻撃B 魔力E 物防B 魔防E 敏捷C 幸運E

スキル:水中適正A、幻影艦装(武装)、幻影艦装(倉庫)


 この能力が、それに拍車をかけている。魔法にはとことん弱いが、物理系ディーラーと物理系タンクを1人で兼ね備えた……まさに単独行動に向いた力。『潜水攻撃艦』という特殊なジョブも今のところ紫苑1人しか持っておらず、同じ水中適応の覚醒者と比べても大幅に強いのが紫苑という少女であった。


(この前は楽しかったなあ……)


 そんな紫苑は海中に潜りながら、この前イナリの家に泊ったことをふと思い出していた。普段あまり仕事以外での人付き合いをしないのもあって、とても楽しい時間だった。また遊びに行きたいが、紫苑のスケジュールは今は結構忙しい。しばらくはそんな時間はとれないだろう。

 特に今の利島周辺の海域の調査は念入りにやらなければならない。利島に居たと報告されている無数の「都市伝説」型モンスターたち。そして、イナリが報告したという未確認モンスター「祟り神」。

 それらは恐らく埼玉第4ダンジョンから出てきたものと思われるが、当時は覚醒者協会などなく、日本の覚醒者は政府の圧力から逃れ海外に脱出していたりした時代だ。そのときに海に大量のモンスターが向かったのは有名な話だ。今回の利島の件も「それ」であったとされている。

 いるが……利島は伊豆大島にも近い。未だ人間の勢力圏である伊豆大島付近に似たようなモンスターが潜んでいれば、伊豆大島が利島になりかねない。その危険性を調査するために紫苑は伊豆大島を拠点に付近の海域の調査をしているのだが、今のところ何の問題もない。

 勿論、時折水棲モンスターたちが襲っては来るが、それは今の海では普通のことだ。太平洋の海中ゲートがどうにかならない限りは、もうどうしようもない。

 さておき、一通り確認したがもう何の問題もなさそうだ。紫苑はそのまま海岸まで移動しようとして……そこで、気付く。


「……何あれ」


 それは、遺跡……に見えた。いや、都市だろうか?

 海に沈んだ都市の遺跡。謎の古代文明。そんな感じの噂はいくらでも、どの時代にでもあるものだ。それ自体は何の問題もない。問題なのは……こんな場所に、そんなものはないということだ。

 何より紫苑が此処を調査したばかりなのだ。そして何もないことを確認したばかりだというのに。

 それなのに、その遺跡……のような何かはそこにある。それは明らかな異常だ。異常であるならば調査しなければならない。念のために水中用通信機を操作し、現在の座標と生存確認を兼ねて信号を指定されたリズムで送る。異常確認、調査開始……そんなところだ。


(怪しい。明らかに何かある。近づかず、遠くから写真に収める。その後速やかに離脱……)


 異常発生時のマニュアルを頭の中で再確認しながら、紫苑はカメラを構え「謎の遺跡」の写真を撮る。大丈夫、確かに映っている。それを確認して。


「!?」


 紫苑は自分が遺跡の「上」にいることに気付きギョッとする。近づいてなどいない。ならば遺跡が移動してきた? とにかく、これは拙い。すぐさま離脱しようと浮上する紫苑を追うように、黒い手が伸びてくる。


「撃て」

『フライングトーピドー!』


 紫苑が指を向けたその先へと虚空から現れた魚雷のようなものが1本発射され、黒い手を吹っ飛ばす。だが、間髪入れずに現れるのは無数の黒い手たち。10本、20本、30本……明らかに避けられない速度と数。それでも、紫苑の表情に焦りは見られない。何故ならば。


「ぶっ飛ばせ」

『トーピドーランチャー!』


 紫苑の周囲に現れた無数の魚雷のようなものが一斉に発射され、黒い手全てを爆砕する。恐らくは水上まで響いた激しい爆音。ただこれだけで何かがあったことを知らせるには充分だろうが、ひとまず今のうちに水上へ……と、紫苑はそう考えて。


「なっ……」


 先程よりも更に多い数の黒い手に絡めとられ、遺跡へと引きずられていく。それは、ほぼ一瞬のことで。海底の更に底へ引きずり込まれたような感覚を紫苑が感じた、その直後。紫苑は海底でも地中でもなく、ましてや海底遺跡などでもない場所にいた。


 ミーン。ミンミンミンミンミン……ミーン……。響いているのはセミの声。僅かに汗ばむような、そんな気温。夕方の、夕陽が一番大きく見える時間。目の前に広がる光景は……まるで、何処かの村のようで。


(異界だ。引きずり込まれた……でも、此処は何処?)


 警戒心を最大限まで高める紫苑が生き残りのために全力を尽くす覚悟を決めた、その頃。「外」ではバックアップ役の覚醒者が紫苑のカメラを発見したことで、覚醒者協会に緊急連絡が飛んでいた。それは一連の事件がまだ終わっていないこと。そして、これから何が起きるのか予測できない不気味さを予感させていた。

 けれど同時に、一部の覚醒者協会幹部は1人の少女の名を思い出していた。この事態を解決できそうな、そんな……狐耳の少女の名を。

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― 新着の感想 ―
水中特化の相手を引きずり込むとかヤバいなぁ、これ
[良い点] イナリのレベルが気になります。これだけ戦い続けているなら相当上がったのでは? もちろんステータスも。 [気になる点] 紫苑がピンチですが、きっとイナリが無事に助けてくれると期待しています!…
[一言] ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん
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