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【4/15 書籍2巻、コミック発売】お狐様にお願い!~廃村に残ってた神様がファンタジー化した現代社会に放り込まれたら最強だった~  作者: 天野ハザマ
第四章

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お狐様、利島へ向かう5

 結果から言うと、住宅の中に人の姿はない。片っ端から調べた家の中にはモンスターしかおらず、人もいなければ死体もない。そして……埼玉第4ダンジョンであればあったはずのゲートも、此処にはなかった。


「ふむ……まあ当然じゃが、此処まで似ておれば一縷の望みをかけるのも理解できんではない」


 もしかしたら埼玉第4ダンジョンに転送されたのでは……と、そんな期待を抱くことだってあるかもしれない。しかしどうやら、此処はそうではない。偵察隊が此処を調べたなら、早々にそういう結論に至ったはずだ。ならば、次はどうするのか? イナリは地図を広げ、彼等の行動を推測しようとする。

 地下街は、ないだろう。脱出するためのプランからは程遠い。学校にはすでにバツがついていた。駅と住宅街はすでに確かめた。商店街にも人の姿はなかった。病院……も行く必要は無さそうだ。


(脱出の手段が見当たらぬ。安全な場所も分からぬ。となれば頼るのは……)


 地図の上をイナリの指が滑り、とある一点の前で止まる。

 きらさぎ神社。そう書いてある場所だ。まあ、こんな怪異の腹の中にある神社にご利益の類があるとは考えにくい。考えにくいが、それでも僅かな希望を求めるのであれば行く……かもしれない。神頼みという言葉もある、あながち間違っている考えではないだろうとイナリは思う。


「……神社、のう」


 そもそも何を祀っているやらという感じではあるが、形だけが大事なのであればロクなものではないだろう。しかし、行く価値はある。そう決めるとイナリは地図を畳んで仕舞……おうとするとアツアゲが服の中からヒュッと出てきて地図を掴んで引っ込んでいくが、まあさておこう。

 とにかく神社とやらに行ってみようと考え顔をあげると、道の先に……何かが居る。

 人影だろうか? いや、違う。黒い人型の「何か」はクネクネと不可思議な動きでその場に留まるようにして踊っていて。


「狐月、弓じゃ」


 イナリの手の中の狐月が、弓へと変わる。

 あの変なモノは確か都市伝説の本にも載っていた。確か……「くねくね」だっただろうか?

 見ていると精神に異常をきたすという「祟り」系の都市伝説だ。分類的には埼玉第4ダンジョンやそこかしこの家の中の「砂嵐の映るテレビ」に似た類のものだろう。しかしその類の祟りは、イナリには当然のように効かない。

 放った矢の一撃がくねくねを消し飛ばすと、イナリは弓を一振りして刀に戻す。


「やれやれ。殺意が高い……が、やはり伊東のモノとは違うのう」


 アレは人の領域に混ざるという明確な目的があった。しかし此処は……まるで人の領域を侵し書き換えようとしているかのような、そんな相容れなさを感じるのだ。


(おかしな話じゃ。如何なる怪異であれど、人の中に混ざり人の中にありしもの。されど、都市伝説なる怪異にはその意志を感じぬものが多い。さながら人を祟り人を殺すための怪異……)


 あるいは、人の世が変われば怪異の「寄り添い方」も変わるというだけの話なのかもしれない。先程の「きさらぎ駅」に現れた都市伝説にせよ、「きさらぎ駅」そのものにせよ……祟り引き込む相手が必要で、その入り口は日常だ。となればこれもまた、人の中に混ざり人の中にある……とも言える。そう、祟り方が違うだけ……なの、かもしれない。

 まあ、そこにイナリがどうこう言うべき話ではない。今大切なのは、その都市伝説のようなモンスターたちに襲われた偵察隊の生き残りがいるかどうかという話であって、それ以外の何かではない。だからイナリは神社へ向かって歩き出して。商店街に再び戻ってきて歩いている辺りで、覚醒フォンが着信メロディを奏で始める。


「……む?」


 何やら文字化けしている着信通知だが、明らかにまた何かしらの怪異なのだろう。特に出る理由はないのだが、勝手に覚醒フォンが通話状態になってしまう。


『もしもし、あたしメリーさん。今、商店街の入り口にいるの』

「ほう?」


 電話はそれで切れてしまうが、アツアゲがイナリの服の中から出てきて何処かに走っていく。まあ何処に行ったかは大体想像が出来るが……少しその場でイナリが待っていると、次の着信がくる。やはり勝手に通話状態に移行する……「出ない」という回避方法を許さないということなのだろう。


『もしもし、あたしメリーさん。今お肉屋さんのぼへっ』


 イナリの背後からズドン、という凄まじい打撃音が聞こえてきて「ぎゃあああああ!」という悲鳴も聞こえてくる。連続の打撃音と、何か刃物が地面に落ちる音。そしてまた、何かを吹っ飛ばすような打撃音。


「ビーム」


 そんなアツアゲの声を最後に静かになって。軽快な足音と共に、アツアゲがイナリの前へやってきて「やってやったぜ」とでも言うように片手をあげる。


「うむうむ。よくやったのう」


 よく見れば魔石も持っているが、イナリに渡す気が無いのは見て取れる。そのままイナリに登って服の中に戻っていくアツアゲだが、まさかメリーさんも積み木ゴーレムが襲ってくるとは思ってもいなかっただろう。都市伝説だとメリーさんは可愛らしい女の子人形だというが……玩具としての勝負では積み木ゴーレムたるアツアゲの方が上だった。つまりは、そういうことなのかもしれない。

フォックスフォンに届いた企画案

原寸大DXデラックスアツアゲ人形』

あの可愛らしくもカッコいい積み木ゴーレム『アツアゲ』をついに原寸大で立体化!

貴方のお家にもアツアゲがやってくる!

※ビーム、巨大化機能は搭載されていません

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『お狐様にお願い!』1巻書影
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― 新着の感想 ―
メリーさんwwwアツアゲが仕留めたwww
[気になる点] アツアゲの姿がイマイチ想像出来ないです 絵とかあると嬉しい
[良い点] 黒い影A「背後から不意打ちが得意でも、不意打ちされることには不慣れ……それがメリーの弱点とは」 黒い影A「所詮、メリーなど我ら都市伝説四天王の面汚しよ……」 黒い影A「次は私の出番か……
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