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常世市の見解 【side高橋聡】

 市外の人間からすると、常世(とこよ)市は変わっているらしい。生まれも育ちも常世市民である自分としては言うほど変わっていないと思うのだが。しかし、市外の友人知人は口をそろえて変わっていると言う。隣接する常若町の方がよっぽど変わっているのに。

 

 そもそも、市外の人間に自分が常世市民であることを一回で信じてもらえたためしがない。常世市民だと言うと、まず笑われる。初対面のインパクトとしてはまあまあだ、とか、そう言うの好きなんだな、とか、言われる。本当のことだと言うと、呆れたような、困ったような顔をされるので、最近は信じてもらえなくても言い返さないようにしている。


付き合いを重ねていくとさすがに本当だと分かってもらえるのだが、そうすると距離を取る相手が出てくる。最初はショックだったが、今はもう、仕方がないと諦めた。常世市民だと分かってもなお付き合いが続く相手は良い奴なので、それが慰めだ。


 付き合いを続けている友人から聞いた常世市の変わっていることの一例に、自分の影が取れてしまうと言うのがある。市外では、体から影が取れたりしないらしい。自分からすれば、影が取れてしまうのは誰もが一度は経験するあるあるネタだ。特に子供の頃は、まだ影と体がしっかりくっついていなくて、何かの拍子に離れてしまうんだ。転んだ衝撃で取れてしまった人もいるらしい。


 ほとんどの場合、取れてしまってもすぐに気づいてその場でくっつけられるから問題ないんだけど、時々、影が取れていることに気づかないことがある。そうなると大変だ。体と影は別々に存在し続けることは出来ない。影と本体が離れている時間が長すぎると命に関わるんだ。だから、体から離れてしまった影を見失ったら大騒ぎ。


 明るいうちなら、市役所に連絡を入れる。市内中に防災放送で呼びかけてもらって、みんなに探してもらう。天気が崩れそうだったり、日暮れが近い場合は、緊急度が急激に上がる。本体から離れた影は、日が翳ったりするだけですぐにあいまいな状態になるから。そうなってしまうと、命の危機がもう目の前だ。


 その場合は即、隣の(とこ)(わか)(ちょう)へ救援要請となる。

常若町の人たちは、こういった緊急事態の対処がすごくうまい。自分が知る限り、今までに常若町へ依頼して影が見つからなかったことがない。姉ちゃんも両親も記憶にないと言っていた。


 それほどエキスパートなら、最初から常若町へ依頼すればいいと思うのだけど、それは駄目なんだって。お互いの距離感を保つことが大事なんだとか。


 影のことだけ見てみても、市外は平和なんだなと思う。それだけ命に関わる自体が少ないのだから。


 ただ、市外では猫の集会で猫の踊りが見られないのだと聞いた。


 その点は、常世市のほうが良い場所だと思うな。


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