第五話
昔々、おじいさんとおばあさんと犬のポチが一緒に住んでいました。
おじいさん達がポチを散歩させていると、突然不思議な声で犬が鳴きました。
「ここほれ、ワンワン」
ポチの通りにそこを掘るおじいさんとおばあさん。何と、大判小判がザックザク出てくるではありませんか。
「これは凄い凄い!」
「村の人にもお裾分けしましょう」
おじいさんとおばあさんは手に入ったお金の少しで村の皆さんにご馳走しました。
それに目をつけたあくどいじいさんは影からこっそり呟きました。
「あれで一儲けできねえかなあ」
おじいさんのポチをどうしてでも欲しいと思った。後日あくどいじいさんはおじいさんにポチを貸してくれないかとお願いします。
「うーーん。困るのお」
おじいさんは渋りました。それはそうです。
自分の可愛い可愛い息子のような愛犬です。
易々とわたすのはやぶさかです。
「そこを何とか!」
あくどいじいさんは地に頭を付けてお願いします。それでも躊躇う気持ちは変わりません。
「ワシの孫の為に!」
それでもおじいさんの気持ちは変わりません。
あくどいじいさんは相手に聞こえないように舌打ちします。こうなればこうするしかないと。
近くに置いてあった木箱をスッと出しました。
「これでもダメかのう……」
あくどいじいさんが蓋を開けると、そこには掘り出した小判以上の大判小判が大量にありました。
「頼む、これでポチを貸してくれんか!」
おじいさんはやぶさかではありませんでした。
第五話 「やぶさかではないじいさん」
ー完ー