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一話
昔々、ある所に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、川の上から何かが流れてきました。
桃でした。
その桃は上流からぷかぷかと浮きながら流れてきました。
「あれは何じゃろう」
おばあさんはその流れてきた桃を見つめていました。
流れていきました。
おばあさんは目が悪かったのです。
何かが流れてきた事は分かりましたが、それが桃色の何かぐらいしか分からなかったのです。
おばあさんも年です。わざわざ川に飛び込んで流れた物を取る気力もございません。
大きい桃がどんぶらこ?
私は大きいなんて言ってませんしぷかぷかとと言いましたよね?
人の大きさ程の桃などあるわけないじゃないですか何をおっしゃってるんですか。
あれは何だったのだろうか。
そう考えたおばあさんですが、最後に口にしました。
「きっと、桃だろう」
第一話 「桃だろう」 ー完ー