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ラスボスは女神様!?  作者: カモミール
2章.ひとりぼっちのダンジョンの支配者
11/22

9話.魔法使いレイラ・カルナ①

4話です。

レイラ・カルナ視点





目の前には灼熱の地獄が広がっている。

正直心のどこかで甘く見ていたのかもしれない。


あたしは国でSSSランク冒険者の実力者でこれまで数々の苦難を乗り越えてきた。

準備も常に万端(ばんたん)に考えうる限りの事をこなしてきた。


だから、如何に最難関のダンジョンだろうと最後には乗り越えられるんだろうと。


レイラ・カルナは自分の認識の甘さを反省する。


「はぁ、はぁ」

頬から滴る汗をぬぐう。

灼熱のごとき高温はじわじわとレイラの判断力を奪っていく。

頭がぼーっとしてくるのを感じた。


「レイラッ、危ないっ!」

死角から迫ってきたリザードを勇者のカイがその剣で薙ぎ払う。

今、完全に気づかなかった。


「…っ、ごめんっ」

「次来るよ、構えてっ」

「うんっ」

カイが剣を振るう。

その剣の軌道がそのまま斬撃となり、三匹の赤いリザードマンを襲う。

深々と斬られたリザードマンはたまらず崩れ落ちていく。


羨ましいな。正直そう思ってしまう。

カイの剣技の飛ぶ斬撃、虚空一閃はカイだけの技だ。


この世の中には魔法以外の特殊能力を生まれ持って来る人間がいるという。


あたしが持ってなかった才能という強さ。それをカイは持っている。


昔から落ちこぼれだと、魔法の才能はないとそう周りから言われて来た。


そのせいか考えてはいけないと思っても

嫉妬という醜い(みにくい)感情があたしの心を支配する。


後続のリザードマンが来て、火炎のブレスを吹こうとしている。


でも遅い。私に一秒でも隙を見せたら終わりだ。

得意の早打ちで水の槍の魔法、アクアアローを放つ。


それは瞬く間に赤いリザードマン四体の頭を吹き飛ばす。

少し遅れてズドンッと魔法の発射音が鳴り響いた。そして、リザードマンは倒れた。


恐らく奴らは自分が死んだことに気づく暇もなかっただろう。


赤いリザードマンは正直そんなに強くない。

精々危険ランクBといったところだ。

でも数が多い。無尽蔵かと思えるくらいに湧いてくる。

それに加えてこの熱さが何もしなくてもあたし達の体力を奪っていく。


「カイ、レイラ!! 気を付けい。溶岩の大波じゃ!」


フーゲンさんが言う通り、溶岩の波が此方に迫ってきた。


嘘でしょ?海でもないのに、

このダンジョンの物理法則は一体どうなってるの?



■■■□


はぁ、と大きくため息をつく。

結局溶岩の大波はカイの虚空一閃が切り裂き、フーゲンさんが岩の上位魔法で障壁

を魔法で繰り出してくれた事で乗り切る事ができた。


私は何もしていない。する事ができなかった。

私がいなくてもこの二人でダンジョン攻略には十分なのではないだろうか。


思考がネガティブな方に偏る。

いけない。この考え方では戻ってしまう。

周囲から、親からも落ちこぼれと言われて落ち込んでいた

あたしに


それに納得してしまっていて何もしなかった馬鹿なあたしに


「あたしがここにいる意味ってあるのかな」

つい口に出てしまった。

はっ、しまった。なに言ってるのあたし。

そんな弱気なこと言って。


そんな弱いあたしなんて知られたくないのに。

二人があたしを見てくる。

う~、気まずい。


だが、2人の反応はあたしの予想したものとは違っていた。


「なに言ってんじゃ。あほか」

フーゲンさんがあきれたように言う

「え?」

辛辣っ!いや、え?

確かにそうかもしれないけどそこまで言わなくても。

余りにスパッとした言い方にカイも苦笑している。

「まぁ、うん、レイラは確かにバカだなぁ」

「え、ちょ、ちょっと、カイまでひどくない!?あたし確かに学問の方はいまいちだけどさ」


「いやごめん、ごめん、冗談。でもさ。レイラはそれでいいと思う。いつも人一倍頑張って、俺たちの面倒も見てくれて、明るく振舞ってくれるレイラと一緒なら最難関のダンジョンも攻略できる。そう思ったから、だから、そのままでいいんだ。一緒に来てくれ、レイラ」

「・・・・・」


そんなにはっきり褒められたら、頑張るしかないじゃない。少し顔が赤くなるのを感じる。


ほんとにあたしが落ち込んだ時はいつも助けてくれる。

一緒についていきたいのは行きたいのはあたしの方なのに。

いつもそっちから言ってくるなんてそういうとこがほんとにずるい。


「分かった。あたしが皆を、このダンジョンの攻略まで連れて行ってあげる」

そうあたしは力強く言うのだった。





「そもそも、このダンジョンの補給、遠距離攻撃、モンスターの殲滅の大半はお主の仕事じゃというのに抜けてどうするんじゃ。儂らが過労死してしまうわ」

補給として持ってきた大量の水を入れたボトルを突き出してフーゲンさんがいう。


そんな現実的な。

いい感じカイに鼓舞されたのにわざわざ言わなくても…

まぁいっか。


「ふふ、そうですね」

少し微笑んであたしはそう言った。



■■□□


あれから改めて作戦を立てた。

「こういうエリアごとにその特色が著しく変わるダンジョンには大抵エリアごとのボスがおるもんじゃ。儂はここの攻略中そいつを探しておった。一番奥の壁面の下にでかいマグマの池がある。間違いなくあそこにおるの」

「フライ」

カイが飛行魔法の詠唱をする。するとカイの体はフワッと浮き上がった

私は詠唱せずとも飛べるので黙ってカイの後に続いた。

「…」

なるほどたしかに凶悪な力を感じる。

「そこで提案なんじゃが…」





あたしたちはただ前を見て走る。


「"アイスボール"」

氷の初級魔法だ。

それをあたしはさらに粉雪のように

分解してあたりに拡散させた。


辺りがひんやりする。適用範囲はパーティ全員の周囲だ。

気が遠くなるような熱さでもこの応用で紛らわせそうだ。


フーゲンさんの知恵だ。私ならばそれができるのではと。

彼はすごい。ダンジョンに精通して攻略のためのあらゆる知識を持っている。


当然カイもすごい。

でも…私だって負けない!!


道中に

赤いリザードマンが表れる。視界に入ったと同時に私はアクアアローでそれを撃ち倒す。


何匹か回り込んで来た。

「フッ」


カイが剣を振りそれを撃退。

目の前に溶岩の大波が来た。

「ソイルウォーール」

フーゲンさんがそれを土魔法鵜の障壁で一瞬止めてくれる。

その隙にあたしたちは一気に駆け抜けた。



そう、

決まった作戦はシンプル、あたしを中心に一転突破だ。




私たちは一気に第二層を駆け抜ける。


「虚空一閃・炸裂斬ッ!!」


カイが斬撃で辺りの赤いリザードマンたちが集まってきたところを一気に殲滅した。

道が開ける。


ボスの住む池が見えてきた。

あたしの収納アイテム、ディメンションストレージから魔法の教科書を出す。


「えっと…水の大魔法は…聖なる水よ、其れは世界の、えっと大いなる恩恵なり、天より出でて渦となり破壊を(もたら)せ、アクアシュトローム!!」


恥ずかしい話、あたしは大魔法になればなるほど苦手で古文書とかを見て詠唱しないと

発動できないのだ。笑わないでね。


超巨大な水の渦がドリルのように回転し、マグマの池を襲った。


「グギャアアアアア」


苦しそうな雄たけびを上げて出てきたのは火炎竜ナーガ。

Sランクに認定される凶悪な魔物だった。勝てない相手ではないが強敵だ。


「さぁ、戦闘開始っ、いくわよ。みんな」

あたしは力強く皆に号令をかけるのだった。


■□□□









「あの、このパーティのリーダー俺だよね」とか、

小さな声が聞こえた気がしたけど気のせいかしら。



読んでいただき、ありがとうございます。

次話は今日中に投稿できればと思います。

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