寄る辺なき者より
寄る辺なく
動かされる者よ
泣け 泣け
四畳半一間の
コンクリートを噛んで生きる者よ
北風に揺れる木戸を
カタカタとシュウシュウと
持たざるもの
孤独を抱えて
ただ笑え 笑え
世の友の
鐘のなる
リンゴンリンゴン
家を成し 子をなし
生産するものを仰ぎみて
嘆息する取り残されし者よ
嗚呼
私は駄目な人間です
生まれし機会を反故にし続ける
たわけ者です
ままならずじっと白眼視している
許しを請う罪すらない
もういいのではないでしょうか
頑強なシステムの中で
もう 抗うことも疲れます
みっともないこともできません
もうすでにみっともないのに
腐った畳の上で
かび臭い枕に突っ伏して
女々しく涙するのは
まだ枯れていないからですか
萎れた電柱の下
夜中乳繰り合う恋人達
腐った窓辺からこっそりと
覗き見る
恥ずかしそうにうつむいて
明滅する街灯
いつまでも語りあう
若く満ち足りた人たち
嗚呼
石でもなげてやろうか
くさくさとして
天井を仰ぎ見る
あの柱に縄をかけ
首をくくってしまおうかと
それも面倒くさい
壁がくさってゆく
天井がくずれてゆく
朝もやの中 下の大家宅が騒がしい
警官になにやらガナリたてている
うるさい奴等だ
泥棒が入ったんだそうな
なんて幸福な人たち
泥棒に入られるほど裕福で
更に他人に気の毒がられている
嗚呼
なんて可哀相な泥棒
まるで犯罪者扱いだ
貧乏なのに隠れてくらし
愚痴をいう世間も無い
大家は番犬を飼うことにした
人が通るたびに吠え掛かる
バカな犬
俺よりいい肉を食っている
嗚呼
犬より泥棒にやってくれ
犬にうまれりゃあ良かった
寄る辺なき者たちに
さて いっしょに渡ろうか
禍々しく穏やかな清貧の橋を




