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猫の視点から

作者: 墨狐

今時異世界エレベーターの話なんか古いだろ?

けどなんだかんだ言ってあるんだようちの街。

しかももっと馬鹿らしいのがそこに入ると利き手が変わったり変わらなかったするっていう眉唾まである。

そこは確定で変わんかい。

まぁそんなのがうちの町の都市伝説。

そのエレベーター病院にあるんだけど、病院に入るのは実はそんなに難しくない。

廃病院なんだけど街の奥の方にあるくせにボロボロでなければ門が閉まってるわけでも無い。

ぱっと見ただけなら今日は閉まってるのかなーくらいの見た目だ。

あとはエレベーターに2時ちょうどに乗れば良いだけ

しかもエレベーターまで割と簡単にいける。

ただここから難しくなるのがそのエレベーターが何階にあるかわからない。

廃病院のエレベーターだから動くはず無いんだけど誤作動で今でもたまに動くんだよ。

本当は危ないだけど誰もいないっていう体だから誰も気にとめてないんだってさ。

そのくせ何階にいますってパネルに電気がついてないから一階から七階のどこに止まってるかが分からない。

ボタン押しても降りてきたりしないから階段上り下りして探すわけ、それでいけた!って思ってもエレベーターが動いて乗れなかったってことが結構ある。

何で知ってるのかって?それ説明いる?

まぁこの一通りの流れが異世界にエレベーターで行く方法ってわけ、結構しっかりしてるだろ?


そんなこんなで好奇心旺盛眉目端麗ボーイの俺は異世界に心惹かれ、リュックにカメラ、メモ、ペン、カッターナイフ、サワークリームオニオン味のポテチ、懐中電灯をぶち込んでチャリで走って行った。

さっきも言ったけど別に難しくはないんだよ最後が運ってゆうだけ、だから何回か行けばいつか乗れるって信じてた。

病院もよくあるガラスがぶちまけられてる!とか注射器が落ちてるとか、謎にマットレスが落ちてるみたいな治安の悪さもない。

ヤンキーたちがたまり場にしても良いんでけど、変に不気味な空気があって集まらない。

玄関から入ると毎回思う。

上手く形容は出来ないんだけど空気の流れ方がちがう。

ただそこだけを無視すれば割と綺麗な場所だから普通に進める。

エレベーターの前に立ってみるとどう見てもありきたりなものだ。

だからこそ異様に感じる!なんで口にしてみたところで怖さは感じない。

とりあえず一階にはなかったのでどんどん上の階に進んでいく。

3階でエレベーターを見つけ7階じゃなくて良かったと安堵した。

26になったけど体力はまだまだ部活をやっていた頃から落ちた気はしていない、そうは思っていたけれどなかなか疲れたもんだ。

腕時計に目をやると1時40分。

余裕もあるしのんびりすることにした。

ケータイを触り適当に時間をつぶす。

57分になったころ急にエレベーターが動き出した。

やばい。

これで7階に行かれでもしたら3分で間に合うとは思えない。

運がいいことにエレベーターは下に向かって動いていった。

それならそもそも3階には来てねぇ!!

そう思いながら階段を駆け下りて行った。

そこからは時計なんか見てられない。

2階には止まっておらず、もう一階分階段を駆け下りる。

ダッシュでエレベーターの方へ走って行き、ボタンを連打。

ドアが開いた瞬間に滑り込んだ。

時刻は2時ジャスト。

さぁ異世界かと息も絶え絶えに周りを見ると、二人の女性がもつれ合っていた。

1人は横になりもう1人はその上に馬なりになっている。

こんなところでヤるやついるのか!すぐに目をそらしたその瞬間、

急に電気が落ちた。


いや嘘だろ!こんな状況に閉じ込められるのはマジでやばい。

そんな風に思っていると電気が復旧した。

恐る恐る2人の方に目をやると誰もいなくなっていた。

おかしい。

だがおかしいことが起こると言うことは、もしかして上手くいったのか?

俺の中でふつふつと興奮がこみ上げてきた。

あの瞬間に入り込んだ俺だけ飛ばされてあの二人はきっと現実の世界に置きっ放しになっているんだろう。

向こうからすると「今誰かいなかった?」ってなるやつだ!BTFでみたことがある!

無駄に上がっていくテンションに反してエレベーターの中は静かだった。

正直手順しか知らなかった俺からすると、ここからどうやって異世界に行くのか分からないのだ。

その時、違和感を覚え周りを見渡した。

エレベーターの奥は全面鏡張りになっていて奥行きが倍おるように感じる

いや?いやまて本当に奥行きがあった。

じゃあなぜ鏡があると思い込んだか。

目の前に自分と全く同じ姿の人間がいたからだ。


元々都市伝説やホラーの類いは好きだし、映画もよく見るから真っ先に浮かんだ言葉はドッペルゲンガーだった。

ただ実際にドッペルゲンガーだとするならあまりにも動きに違いがなさ過ぎる。

一挙手一投足同じなのだ。

瞬きも指の動きさえ同じになることがあるのだろうか。

それに向かって近づいていき触れてみる。

手を握れるかと思ったがお互いに譲ることも出来ず、ETの様な触れあいしか出来なかった。

けれどその触れた感触と動きから察するに完全に同じ人物つまり自分だと言うことが分かった。

すでにここが異世界なのかもしれない。

線対称の自分をまじまじと見つめながらそう考えた。

どうにかしてこいつと会話が出来ないだろうか。

ジャンケンはおそらく永遠にあいこになるしそもそも勝負の意味が無い。

コイントスをしようにも、そもそもどちらが表か裏かさえ決めることが出来ない。

待てよ、ならくじ引きを試してみよう

持ってきたメモをちぎり1~10の数字を書く、それをリュックにいれめちゃめちゃに振る。

そして鞄から一枚抜き出しそれを見せ合った。

これでさえ同じ数字になるならもう諦めるしか無い。

緊張しながらゆっくりとお互いの髪を確認すると、

俺が9引き、向こうは5を引いたのだ。

「やったーー!」

「やったぁぁ!」

この瞬間に、いや正確にはそれを引いた瞬間に俺たちの思考は分かれてしまった。

それまでは思考が全く一緒で会話が要らなかった俺たちにも、会話が出来るだけの差違が生まれた。

数が多かったので俺のことを「表」

相手のことを「裏」そう呼ぶことにした。

俺たちは会話を楽しんだ今までの人生を振り返り笑ったりバカにし合ったり腕も相撲をしたりして遊んだ。

だがそれも1時間もしないうちに飽きてしまった。

それはそうだ全て自分が経験したことなんて話したところで全て知っているのだから意味が無い。

できの悪いイマジナリーフレンドみたいなものだ。

徐々に会話は減り、これといってやることも尽きてきたころ、ある考えが浮かびだした。

帰り方が分からないのだ。

それに気づいた瞬間全身から変な汗が流れ出した。


とりあえず普通に出ようとエレベーターに着いているボタンを押してみる。

開くを押そうが閉るを押そうがなにもかわらず、階数のボタンを押しても一定時間立つと消えるだけで上下に動いている感じは無い。

腕時計を見ると時間は進んでいるがエレベータの中にいると正直外の状況なんて一切見えない。

お互いのエレベーターのボタンに向き合っているため背中合わせだが、それでも向こうのエレベーターが同じなのは空気からわかっていた。そして最悪な考えがちらつく。

そう、一番最初の考え方だ。

ドッペルゲンガーに出会ったのなら、片方は死ななければならない。

そう思うと振り返るのが怖くなってきた。お互いの鞄の中身は共有している。

二本のカッターだ。あれがどう頑張っても頭の中で大きくなっていく。

ゆっくり振り返ってみると裏はすでにカッターを手にしていた。

やられた。

「うわぁぁあああ」と叫びながらこっちに向かってくる。

俺はどうしていいかわからず向かってくる裏に対して思いっきりタックルしていった。

逃げるよりも詰めた方が狙いにくいと思ったからだ。

どうやら上手くいった。

裏は吹き飛ばされ向こうでしりもちを着いていた。

手を見るとカッターを握っていなかったので周りを必死に探した。

近くに落ちていると思ったが足下にはなかった。

裏が何か言いたげに俺の右腕を見ている。

その視線を追っていくとそこにはカッターがあった。

「え?」

刺されている、いや正直そんなことはどうでも良い。

痛みが全くないんだ。

カッターを引き抜いてみるとそこから血が流れることも無い。

それどころか傷がついていない。

「どういうこと?」

俺たち二人はどういうことかは分からなかったが、少し試してみることにした。

表の俺はさっき刺されたカッターで自分の手を切ってみた。

するとそれも全く何も感じずたた刃が通り過ぎていくだけだった。

訳が分からなかったが脱出のことなど頭から無くなった。

俺たち二人はお互いにカッターで切りつけ合った。

ゲームの中で戦っているような感覚で特に目を刃が通り過ぎる感覚は先端恐怖症の人の気持ちを噛みしめることが出来た。

昼ドラごっこやメンヘラごっこ、通り魔ごっこなど倫理的にだいぶアウトなことをしたがそれでも傷がつかない感覚を俺たちは楽しんだ。

そんな遊びの中次は人質ごっこだと言って裏を人質に見立て首元にカッターを突きつける。

適当に反抗したりして無駄に首を切ったりしていた。

そんな時、両方のエレベーターが突然開いた。

その瞬間裏の全身からは血が流れ俺の腕に血や肉片が着くのが分かった。

訳が分からないと思っていると電気が消えた。

持っているカッターから裏の呼吸なのか痙攣なのか分からない揺れが伝ってきた。


次に電気がつくと裏はどこにもおらず血や肉片も無くなっていた。

エレベーターも奥行きが無くなりただの鏡になっていた。

半分放心状態になりながら食べかけのポテチやメモ帳を拾い伸びきったカッターの刃をしまいきった。

外へ出ると真っ暗で腕時計を見てみると同じ日の2時47分だった。

俺はさっきまでの出来事が夢だったような気がしていたが、手の中に残る振動が現実でだったことを強く主張してきた。


え?

異世界の話はどこに行ったのかって?あと語り口調がキツい??

この話聞いてよくそんなことゆえるなもうちょっとこわーーとかそういう反応待ってたんだけど。

オチが弱い??そんなこと良くゆえるなお前。

まぁ確かに町外れの病院も別に廃病院じゃないし俺も生まれつき右利きなの変わってないしな

え?左利きじゃなかったかって?

俺から見たら変わってないんだけどね。


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