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第8話 同級生に鉄拳制裁を受けました

 そんなことがあった後、僕の所属する日本海兵隊は、ヴェルダン要塞攻防戦が事実上の終結を迎えたことから後方に下がって、更にイタリア戦線の増援部隊として、転進することになった。

 なお、これは文字通りの転進だ。

 ヴェルダン要塞攻防戦は、我々、日本軍の所属する連合軍の勝利に終わったからだ。


 とはいえ、三単位海兵師団四個しか、日本海兵隊は参加していないのに、延べにして約8万人もの戦死傷者(戦病者を含む)を出したのだ。

 日本海兵隊は、ボロボロといってよい惨状で、日本本土からの増援を受け取らないと、どうにもならない有様だった。

 更にこの一戦、ヴェルダン要塞攻防戦だけで、僕の海兵同期生117名の内10名が戦死した。

 他に海や空で戦死した者もいるので、それを入れれば、戦死者は同期生の1割を超えてしまう。

 僕は、この世界大戦から生きて祖国に帰れる筈(そういう異世界に来ているのだ)だが、同期生の何人が戦死してしまうのか、気が重くなって仕方なかった。


(というか、心が弱い、と言われても仕方ないけど、約8万人だろうと軽く言われそうだけど、海兵師団4個の総兵力は後方部隊まで入れても8万人に満たないのだ。

 つまり、日本本土からの補充兵も到着していたし、数度も負傷した将兵もいたから、単純に言えないとはいえ、ほぼ全員が死傷したという惨状を呈した、ということであり、幾ら軍人、しかも士官だろう、と言われても、僕の気が重くなるのも半ば当然ではなうか)


 そして、イタリア戦線に僕達、日本海兵隊が移動を完了した頃に大きな動きがあった。

 海兵隊が大量の戦死傷者を出したことから、陸軍が士官、下士官を、この世界大戦が終わるまでの間、海兵隊に出向、派遣してくれることになったのだ。

 そのために、僕は思わぬ人と再会できた。

 その人は、というと。


「この馬鹿野郎、篠田りつを泣かせるとは、小学校時代の同級生の風上にもおけん」

 僕はその人から、再会早々に鉄拳制裁を受ける羽目になった。

 何事か、と周囲が注目する。

 流石にまずい、とお互いに考え、少し人目につかない所に僕たちは移動したが、その人の興奮は中々、収まらない。

 無理はない、篠田りつ、この人、僕は小学校の同級生でお互いに良く知った者同士なのだ。

 そして、正義感に駆られたこの人は、僕の顔を見た瞬間、篠田りつへの僕の仕打ちのことで、頭に血が上り、鉄拳を振るったという次第だ。

 その人、陸軍から出向してきた簗瀬真琴中尉に、僕は頭を下げながら、弁解を始めることになった。


 僕の弁解を聞く内に、簗瀬の頭も徐々に冷えてきたようだ。

「確かに篠田家のことについては、自分も聞いている。何しろ、篠田家は、兄の正も彼女も小学校しか行かせられなかった程だからな。更に株屋に正が就職したが、手張りで失敗したらしい、というのも小耳に挟んではいた。それもあって、彼女が金策も兼ねて、色々と働いていたと言うのもな。しかし、彼女と下手に別れ話をしたら、そうなるのも分かりそうなものだが」

 簗瀬は、僕の弁解を聞き終えた後、何とかそこまでは言ってくれた。


 簗瀬も、りつの小学校の同級生で、りつの性格を熟知しているのだ。

 本来的には、りつはいい性格なのだが、苛烈な性格を陰に秘めてもいる。

 だから、りつのことを簗瀬は敬遠し、彼女とは単なる友人関係に止めたのだ。


 そして、頭の冷えた簗瀬は、りつの出産騒動について、僕に説明してくれた。

「ともかく、りつが出産したことから、大騒動になった。自分も参加したが、野村家は何を考えていると村八分だ。そこにお前から依頼を受けた岸提督からの手紙が届いて、篠田家の面倒を岸家が見る、野村家も支援するということで、一旦は落ち着いた」

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