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第43話 気が付けば、ファネットらも10代半ばを過ぎていました。

 そんな風に、ファネット以外の子ども達が、第2次世界大戦終結後も、戦場に赴き、また、そのことで心を痛めねばならないのは、僕にとっては辛い話だった。

 とはいえ、僕に大した力は無い。

 だから、子ども達の無事をひたすら僕は祈るしかなかった、といっても過言では無かった。


 その一方で、フランスにいる僕の周囲は、表面上は平和な時が流れた。

 僕はアランの協力を得て、パリ近郊に完全分離型の2世帯住宅を建築して、カテリーナやピエールとも半同居生活を送るようになった。

 良く事情を知らない人からは、僕はジャンヌという正妻とカテリーナという愛人と同居している、トンデモナイ男だ、と誤解されることが多発したが、事情を知った人からすれば、外国に息子が出征していて、息子夫婦と同居しているだけなのですね、とすぐに納得してくれることになった。


 更に、初孫のアラナからも、僕宛への手紙が届くようになった。

 本来からすれば、アラナからアランに手紙が届くのが本来だったが、アランは外国に出征していることが多く、フランスの自宅にいることが稀という有様だった。

 それに、どうのこうの言っても、カサンドラとアラナは、カテリーナに対する引け目が何となくある。

 だから、カテリーナは別にいいのに、と(表向きは)言っていたが、アラナは僕を介して、実父のアランとの手紙のやり取りをし、更に他に僕の身内、親戚との手紙のやり取りをするようになったのだ。


(なお、カテリーナが寛大な態度を執れたのは、これまでの行きがかりから、アラナに対する養育費をアランが全額支払い済みで、経済的な負担がカテリーナに掛かって来なかったのもあるようだった。

 ジャンヌに言わせれば、毎月、アランがアラナへの養育費を支払っていたら、カテリーナもあんな態度は執れなかったでしょうね、とのことだった。

 ジャンヌの言葉を聞き、あらためて、これまでに僕がしてきた千恵子を始めとする養育費の支払いから、忠子が苛立ったのを想い起こして、僕は忠子への自省の念を深めることにもなった)


 それはともかくとして、僕が気が付けば、いつの間にか時が流れて、アランとカテリーナとの間に第二次世界大戦終結直後に産まれたサラでさえも10歳以上になり、ほぼ同年代のピエール、アラナ、ファネットは大学や士官学校等への進学を目の前にするようになっていた。

 

 そして、ピエールはフランス陸軍士官学校への進学を目指し、アラナはスペイン空軍士官学校への進学を目指そう、としているのが、僕には分かってきた。

 微妙なのが、ファネットだった。

 ファネットは、進路に悩んでいた。


 ファネットとしては、多くの身内同様に軍人、士官を目指すべきか、それ以外の進路を目指すべきか、真剣に悩んでいた。

 軍人以外の進路を目指すとして、ファネットが目指したいと思ったのが、医師の路だった。

 ある意味、医師の道を歩んだ異母姉の千恵子に、ファネットは憧れたともいえる。

 そして、大学か、士官学校か、の進学を前にするファネットの意を察したのか。


 折よく、千恵子は、パリでの戦闘神経症についての医学の学会に出席するために、フランスに赴く、と僕に連絡してきた。

 それを聞いたファネットは、目を輝かせることになった。

 憧れのお姉さま、といえる千恵子が、日本から遥々フランスに来て、直接に自分と話し合えるのだ。

 千恵子と話し合って、自分の最終的な進路を決めよう、とファネットは決断した。


 千恵子は、学会出席を前に、僕たち家族の家に立ち寄ったが。

 僕の見る限り、微妙に千恵子の顔色は良くなかった。

 だが、僕以外の家族は、すぐには気が付かなかった。、

 千恵子は、ファネットの話し合いたいとの希望に応じてくれた。

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